2007-2008のご挨拶
なぜなら、自然派のワインは天然酵母を使用しますので、真実の意味でテロ
ワール(とても小さな畑の環境)を反映するからです。
ブドウの木の周りの土壌には30〜40種類くらいの天然酵母が生存しており
ます。
この天然酵母たちが入れ替わり立ち替わり働いて、ブドウジュース(マスト)
をワインに変えてくれるのです。
天然酵母は、私たちのおなかに悪さをする大腸菌のO157などと同じように
細菌です。そして大腸菌の大本の種というのがあるのかかわかりませんが、その
大本に対して、O157は一つの亜種です。こうした微生物は、ちょっとした環
境の変化ですぐに変異して、亜種が生まれるのです。
天然酵母も同じで、畑の向こうとこちらで土壌の組成が違ったり、日の当たり
方、風の抜け方が変わるだけで、40種類の天然酵母がすべて同じであるという
ことはあり得ません。
(私たち人間も、人間というくくりでは一つでも、すべての人がすべての人に
対して異なっているのと同じだなと考えると、とてもロマンチックでうれしくな
ります)
ワインの香りの95%は酵母由来だという研究(ボルドー大学の富永教授ら)
があります。もしこの説が本当だとすれば、上述の酵母の違いが直接ワインの香
りの違いとして、私たちに語りかけるのです。
やっぱりロマンチックですよね。
一方で、化学的な処置を執る農法では、主に除草剤のおかげで、はたけの天然
酵母はほとんど死滅してしまいます。
人工的に純粋培養された酵母を使用して、ブドウジュースを醸すのです。
現在の技術水準ですと、このワインの原料ブドウはヴィオニエだから、バナナ
のニュアンス+メロンやマンゴー、それだけだと安っぽくなるから柑橘の香りを
出す酵母も入れなきゃ。
といったことがすべて設計通りにできてしまうようです。
私たち人間が、労働者や会社員やテクノクラート、女性・男性・何々民族、何
々国民というふうに抽象化され物象化され、そしてそうした意識を内面化されて
しまっているように、ワインも本来の個性であるミクロな土壌や気候の反映を損
なわれてしまっているのです。
世界のあらゆる異なる人をその人となりでアイデンティファイできるように、
すべてのワインをその個性で評価できるだけの力を身につけたいと思います。
そのためには、工業生産的でない本物のワインを飲んで、彼らの個性を知るこ
とだと思います。
その個性の中には、還元臭のようにネガティブな要素もあるかもしれません。
還元臭は慣れないと、「何このワイン腐ってるんじゃない」なんて反応を引き
起こすこともあります。
でもそんなときは、その還元臭に隠されてあるもの、奥に潜んでいるすばらし
いポテンシャルを意識的に利いてみてほしいと思います。
人間だって第一印象のいい人ばかりじゃないですし、むしろ第一印象の悪い人
ほど、後から味が出てくる人もいますからね。
ちょっと大仰になりますが、本物のワインを見分ける力は、ひょっとすると本
物の人間を見分ける力になるかもしれません。
一番のポイントは「個」性だと思います。
こんなことで2008年も皆様と「ワインを巡る冒険」をご一緒させていただ
こうと考えております。
どうぞよろしくお願いします。
いつものごとく冗長な文章、最後までお読みいただきましてありがとうござい
ました。
岩本商店・須田