〜〜contents〜〜 |
こんにちは!「peppermint patty?」です。 二十代を中心とした会社員、学生の女の子五人で「日常の楽しさ」をテーマに仙台発・フリーペーパーを作って三年半になります。 偶然出会った仲間ですが、音楽、食べ物、雑貨などの好みがぴったり。毎回、特集のテーマを決めて、好きなアーティストにインタビューしたり、自分たちの好きなことについておしゃべりしたり内容を会話形式にまとめて掲載したりしています。写真撮影からレイアウトデザイン、編集まで、みんなで分担し合ってます。 ささやかなフリーペーパーでも楽しみにしてくださる方々が増えていくことがうれしくて、全国のカフェ・雑貨店・レコード店で配布しています。 昨年開設したホームページには、今までに発行したフリーペーパーのダイジェスト版やメンバーの日記、コラムなどを掲載。日々の交流から生まれる出来事たちをホームページに集まってくださる方々と一緒に楽しめたら、と思っています。 私たちは“編集会議”と称して集まって食べてばっかり。 新商品を見つけるとウズウズしちゃう食いしん坊。 これから、このコーナーでも“思わずニッコリしちゃう食べる幸せ”を五人五様につづります。 イラストはasami satoが担当します。ゆったりと読んでいただけたらうれしいです。 どうぞよろしくお願いします。 (peppermint patty? ) 2004年1月13日河北新報より |
「土曜日のバナナケーキ」 晴れた休日にぼんやりしていると、ふと、思い出すおやつがある。 それは、凝ったデコレーションが施されているでもなく、何か特別な作り方をしているわけでもない。 切ったバナナを生地の中に練り込んで、四角い型に流し込み、オーブンで焼いただけの、いたって普通のバナナケーキ。 わたしが小学生のころは土曜日もきっちり午前授業があり、授業が終わると、いつも空っぽのおなかで走って帰っていた。 頭の中はお昼ご飯のことでいっぱいだった。 家へ着くなりテーブルに座っても、すぐにお昼を食べることはできない。 きょうだいが全員そろうまで待たなければならなかった。 ハラペコ状態になっているわたしには、その時間がいつも長く感じられた。 そしてやっと全員がそろうと、その日あった出来事や午後の予定なんかを勝手にしゃべり合いながら、空っぽのおなかを満たしていった。 普段働いていた母と家でお昼を食べるのは、私にとって少し特別な事だった。 お昼を食べ終えるころに、母が焼き上げたケーキが登場する。 「ケーキ」と言えばショートケーキしか頭になかったわたしは、デザートにバナナケーキが出るたびに「え〜、またぁ?」とぼやいていた。 子供心に「生クリームたっぷりのショートケーキを食べたい」と思っていたのだ。 きっと今、そのバナナケーキを食べれば間違いなく「おいしい!」と言って喜ぶだろう。 私たちの帰りをケーキを作って待っていてくれた母のことを思うと、少し心が痛む。 けれども、そんな風に生活を楽しんでいた母を、少しうらやましくも思う。 そんなことを考えていたら、あのバナナケーキの味が恋しくなってきた。 次の晴れた土曜日、久しぶりに焼いてもらおうかな。 (peppermint patty? nozomi kimura) 2004年3月9日河北新報より |
「カフェオレボウル」 一人暮らしをきっかけに、あれこれ食器を買いそろえるのが楽しみになった。 一番好きなのは「カフェオレボウル」。 お気に入りを見つけるとペアで購入。 「何、夢みてるのよ〜」とお友達がニヤニヤしながら突っついてきたんだけど、そんなんじゃないよぅ…。 恋愛は置いといても、日々、少しずつ、お気に入りの食器たちで棚がいっぱいになっていくことが、 にやけちゃうほどうれしいのです。 でも、大好きなカフェオレボウルで「カフェオレ」を飲んだことがないのです。 コーヒーはちょっと…。ミルクはニガテなので…。カフェオレは当然避けちゃう。 食わず、いや、飲まず嫌い。 私のボウルはおわんの役目になっちゃって、シチューが入ったり、牛丼の器にも変身する大活躍ぶり! ある日、いろいろけなげに働いてくれるカフェオレボウルをかわいそうに思った。 カフェオレ専用の器はきっと、薄茶色のカフェオレがベストカップルなんだ。 私の食わず二人(二つ?!)の仲を引き裂いてるのね…くっすん。 この二つを両思いにできるのは私次第。 飲まず嫌い克服へチャレンジ精神がわいてきた。 まずはカフェで様子をうかがう。 カフェオレ以外のコーヒードリンクはみんなカップで運ばれ、カフェオレだけが特別な感じ。 うー、だんだん王冠にも見えてきたよ。 オーダーの主は、体を丸め、カフェオレを両手で包み込んで、大切そうに飲んでいた。 湯気がこちょこちょ、ほおをなでている。 その柔らかいしぐさは辺り一面にも温かく映る。 その主人公が自分じゃないと思うと、胸がギュッとした。 平気で飲めちゃう人がうらやましいよぅ。 そうだ!私のそばにカフェオレが大好きな人がいてくれて「一緒に飲もうよ」なぁんてリードしてくれたら…。 きっと、何もなかった顔をして、ペロッと飲んじゃうと思う。 (peppermint patty? miki takahashi) 2004年2月24日河北新報より |
「ドーナツ!」 ドーナツは丸いもの。丸くて真ん中に穴が開いていて、「一つ食べればおなかいっぱい!」 だと思っていた十代後半。気まぐれでお菓子作りをするまでは。 本を見て、一番作りやすそうなドーナツからチャレンジ。 どこにでもある材料で“ままごとの延長”を楽しんでいた。 小麦粉やベーキングパウダーをレシピ通りに混ぜたまではよかった。 ドーナツの抜き型を買うほど本格的ではなかったから「コップで抜いて、なんとなくそれっぽい形になればいいや!」。 きっと簡単にできるだろうと思っていた。 しかし、いざ生地を台に広げて、めん棒でのばす段になると…。 打ち粉をしてもめん棒にひっつき、とても均等にのばせはしない。 悪戦苦闘を強いられること数分。 見るも無残な生地ができるだけで、揚げる前から意気消沈。 食べたい、でもこのままではキレイに揚がらないのは目に見えている。 もう一度生地をまとめ、今度はラップに挟んでのばし、型抜きはあきらめた。 「ドーナツは丸くなくてもドーナツでしょ、生地が同じなんだから!」と開き直り、生地を包丁で細長くカット。 それだけでは長すぎるので、一口サイズになるようにまたカット。細長いひし形。つまんで、揚げた。 なかなか、いいかもしれないこのフォルム…。 それから、私の作るドーナツは細長くなった。 家族みんなでひょいっとつまんで、いくらでも食べられるドーナツはなかなかの評判、だったように思う。 最後に作ったのは何年前だろう? 「おいしい」と言われて満足して以来、レシピ本のあのページをめくることもなくなった。 たかがドーナツ、されどドーナツ。 よくある失敗を繰り返し、それでも物ともせず、その後もいろんなお菓子作りにチャレンジできたのは、あの時の細長いドーナツがあったから、だなぁ。 (peppermint patty? akiko goto) 2004年2月10日河北新報より |
「ビバ!横浜中華街」 私がこよなく愛するグルメ・スポット、それは横浜中華街。 閑静なオフィス街を歩いていくと唐突に現れる極彩色の大きな門。 その瞬間、頭の中には女子十二楽坊みたいな音楽が流れ、エビチリ、カニ玉、杏仁豆腐、さまざまな料理がフラッシュバック! 妙に元気がわいてきて、歩みは一気に二倍速。 徐々に開けていく別世界、赤を基調とした華やかな街並みに心は躍り、一瞬、異国にいるような錯覚さえ味わうことができます。 大通りからちょっと小路に入った所にある、海鮮ネタがおいしいと評判の店に入り、コースを注文。 ジャスミンティーの香りが「中華街にいるんだ!」という気分を高めてくれます。 まもなく、プリプリのエビを使ったエビチリ、せいろにのったアツアツのエビギョーザ、次々と料理が運ばれてきてテーブルの上は至福のにぎわい。 友も私も、とろけそうな笑顔で一品一品と堪能。 そして、なんといっても楽しみなのが中華デザート! コースには大抵、杏仁豆腐が付いてきますが、これだけではわざわざ中華街に来たかいがないというもの。 タピオカココナツミルク、マンゴープリン、中華風プリンタルト。どれか一つは追加注文しなくちゃ。 もしもここで、さまざまな味がいっぺんに楽しめる「中華パフェ」がメニューにあれば迷わずGO! と言いたいところですが、ココナツミルクベースのパフェ、マンゴープリンの載ったパフェなど数種類あろうものなら、ここでまたしばらく悩んでしまうのです。 おなかいっぱいになった後は、杏仁豆腐味のソフトクリームを食べながら山下公園を散歩。 カモメ舞う海を見ながら「今度来たら、今回食べられなかった方のパフェを注文しよう!」と固く心に誓うのでした。 (peppermint patty? reiko misihima) 2004年1月27日河北新報より |
「冬のココア」 ココアには冬が似合う。そう思う、というよりココアは冬の飲み物だと私は勝手に決めている。(とはいいつつも、大のココア好きの私は、春も夏も秋も一年中ココアを飲んでいるのだけれど) 外から帰ってきて、凍えた体を温めるため、ストーブをつけ、こたつをつける。そしてココアを作る。ここまでが、冷えきった体をポカポカにする一セット。 やっぱり冬に飲むココアは格別だ。あの甘くてとろりとしたチョコレート色の液体が、いつのまにか私の体に染み込み、たったの一口で心の底から幸福な気持ちになってしまう。 こんなにもココアを好きになったのは一体いつだっただろう。初めて口にした時のことを思い出そうとしてみても、さっぱり思い出せない。きっと初めからあまりにも当たり前のように、すんなりと私の中に溶け込んでしまったからだろう。 ココアは私の期待を裏切らない。カフェで飲んだクリームたっぷりのココアも、外の寒さに耐えきれず買った自販機の缶入りココアも、家で自分で作ったココアも、ココア味というのは変わらなくて、飲んだ瞬間にたちまちホッとして安心する。これも私がココアを愛する理由の一つだと思う。 最近ずっと欲しかったマグカップを買った。一目見た瞬間、そのマグカップでおいしそうにココアを飲む私が頭に浮かんだ。そういえばそうだ。家にあるマグカップは、どれもココアが似合うものばかり。いつのまにかマグカップを選ぶ基準にまでなっていた。 ちなみに私のお気に入りの飲み方は、生クリームを載せて、マシュマロをひたひたつけてかじりながら飲む!です。幸せ。 大好きなココア。これからももちろん一年中飲むけれど、やっぱり冬に飲むココアが待ち遠しい。 (peppermint patty? asami sato) 2004年11月9日河北新報より |
「中華まんの季節」 外へ出かけようと、コートをはおり、毛糸の帽子を耳が隠れるくらいまで深くかぶる。マフラーをぐるぐると巻き、手袋をはめる。そんな季節になると店頭に張り出される「中華まん始めました」の文字が、気になりだす。ちょっとした空き時間、暖かそうな店内を見てしまうと、つい誘い込まれ、気が付くと中華まんの並んでいるショーケースの前に立って、どれにしようか迷っている自分がいる。 まだ、お菓子類が大好きだった子どものころ、肉まんとあんまんどちらが好き?と聞かれたら、私はいつもあんまんと答えていた。その中でも、黒ゴマ風味のあんまんが、渋いと言われつつも特に好きだった。けれども年齢を重ねるごとに、肉まんを選んで食べる回数が増えてきた。 店によって味が違うからだろうか。どの店の味が自分好みか、毎年シーズンが来るたびに「食べ比べ」をすることが、私の恒例行事になっている。 そんな私がショックを受けた肉まんがある。以前、香港へ行って食べた中華まんがそれ。普段食べているようなフワフワ感はまるでなく、もちもちとしてごっくんと飲み込む感じ。本場の中華まんの具は割りとあっさりしていて、生地は密度が濃く、味もほのかに甘かった。 私がいつも食べている日本のとはだいぶ違う印象だったのに、ペロリと食べてしまえたのは、旅の魔法のせいだけだとは思えない。それくらいおいしかった。日本と香港の中華まん、食いしん坊な私にはどちらもすてがたい!両方おいしくて大好きなので引き分け! 中華まんも種類が年々増えてきた。どれにするかじっくり考えるよりも、目の前にしたときの直感で選んでいる。今シーズンはどの中華まんにはまるのか、いろいろな種類を吟味中だ。 (peppermint patty? nozomi kimura) 2004年12月7日河北新報より |
「そうだ!焼き肉にいこう!」 友人が悩んでいる声が電話越しに伝わる。私も同調して、最近うまくゆかない出来事をうち明ける。二十代半ばすぎから特に、自分がかなえたい将来と、そこに絡み合う人間関係について考え込むようになった。 「うまくゆかないもんだなぁ」。健康な体とは裏腹に、自覚のないうちに気を張ったり悩んだりしているのか、じわじわと元気が減ってゆく。受話器の向こうの友人もそうかと思うと、なかなか会話を終えることができず、何か気持ちの晴れる話題を切り出そうと考える。そうだ!「焼き肉でも食べいこっか」。友達も二つ返事で賛成し、早速明日の仕事帰りにねと、約束して電話を切った。 次の日。起き抜けから夕飯時が楽しみでそわそわした。おいしい焼き肉で心も体もスタミナをつけようと、評判のお店を選んだ。そして、パッと顔が浮かんだ友達に急いで声をかけてみた。突然の誘いにみんな、集まってくれるだろうか? 心配は無用だった。「わぁ、焼き肉!たまらないね」なんて、息を弾ませてきてくれた。 赤々として炭火をぐるっと囲んで、じゃんじゃんお肉を焼いてゆく。食べ始めると、個々のペースでお肉に飛びつくわけではなく、自然とお互いの食べっぷりや好物に配慮しあい、和気あいあいとした雰囲気が生まれている。何か深い話をしなくても、気持ちの風通しのいいこの場所にいると、ホッとできる。胃袋がみたされるにつれ、みんな上機嫌になり、その中に悩んでいた友人の笑顔を見つけ、うれしくなった。 帰り道。焼き肉を囲むチームワークの良さから、物事がうまく運んだときのすがすがしい達成感や結束力をも思い起こし、未来に希望を持とうという前向きな気持ちになっていた。今日も明日もずっと、元気で暮らしなさいと底力が湧いてくるようだった。 (peppermint patty? miki takahashi) 2004年11月23日河北新報より |
「湯気の向こうに幸せ」 ふたが重いから、少し気合を入れて持ち上げる。中からふわっと白い湯気が上がり、一瞬で眼鏡が曇る。野菜の煮え具合を確認し、ふたを閉める。 毎日の食卓に登場するこのほうろうのお鍋は、料理本やテレビでもよく見かけるフランス製のル・クルーゼ。白、青、グリーン、チェリー、オレンジ、イエロー。鍋なのに鮮やかなカラーがそろっていて、「さすがはフランス、鍋一つにもこだわりがあるね」と感心してしまう。 周りの料理上手な先輩や友人も所有していることを知り、数年前の私にはあこがれの存在だった。なぜこのあこがれの鍋が今、家にあるかというと…。 三年前の夏。友達二人から贈られた私のためだけの手作りのウェディング・ギフト・カタログ。中にはIHプレート、曲げわっぱ小判弁当、イッタラのフラワーベース、柳宗理のキッチングッズ。自分では買えないようなハイセンスで魅力的なグッズが満載で目移りした。中でも欲しいと思ったのはル・クルーゼ、黄色いだ円のほうろうのお鍋だった。 届くまで本当に楽しみだった。早速カレーを作った。野菜なんか煮溶けちゃうし、お肉の柔らかさにびっくり!料理が上手になった気がして、それからは食事作りに大活躍。 去年は親友のリクエストに応え、ハート形の鍋を結婚祝いとして贈った。鍋つかみもハート形。「かわいいもの好き」の彼女にはぴったりだった。この夏は会社の先輩にもル・クルーゼの鍋を贈った。 男性陣はどうして鍋を贈るの?と疑問のようだけれど…。新しい生活を始める二人の間に美味しい食事があれば、幸せな時間が過ごせると思うから。贈られる立場から贈る立場へ。今度いつ、誰にこの鍋をプレゼントする日が来るのか、私が一番楽しみにしている。 (peppermint patty? akiko goto) 2004年12月21日河北新報より |
「心のごちそう」 美術大学に通う学生たちの青春群像を描いたマンガ「ハチミツとクローバー」(羽海野チカ著)に夢中です。この作品は、若さゆえの苦悩や恋愛、友情を丁寧に描いている一方、笑いのツボをくすぐるギャグも満載で、シリアスと笑いのバランスが絶妙。何度読み返しても新鮮で、飽きることがありません。 登場人物たちは季節の行事にとても敏感。夏祭りだ花見だと理由をつけては、ワイワイ楽しそうに食べ会で年中盛り上がっています。おいしい食べ物、仲間とのたわいのないおしゃべり、みんなの笑顔。悩み多き登場人物たちは、この食べ会でパワーを充電して明日への活力につなげているように感じられます。そんな描写は私たちpeppermint patty?の仲間の日々と重なる部分もあり、余計作品の世界に感情移入してしまいます。 peppermint patty?メンバーも、みんなで集まって食べることが大好きで、ことあるごとに食べ会を開いています。つい先日も、東京でレコードレーベルを主宰し、すてきな音楽を世に送り出している友人が仙台に遊びに来たのを歓迎して、みんなで牛タン会!友人といっても、ネット上でのお付き合いで、全員初対面です。 最初はやはり照れてしまい、ぎこちなさ満点だったのですが、分厚いアツアツの牛タンが運ばれてくると「うわっ、おいしそう!」「これ、塩味かなあ?」と、牛タンをほおばりながら、みんな笑顔、笑顔。お皿が空っぽになるころには、すっかり打ち解け合い、自然に会話がはずむようになっていました。 この日のみんなの笑顔を心の栄養にして、「ハチミツとクローバー」のように、登場人物が読み手のすぐそばにいるかのような親しみを感じる温かいフリーペーパーを作っていきたいな。そんなことを考えた夜でした。 (peppermint patty? reiko misihima) 2004年8月24日河北新報より |