17P outburst
ホームズ彗星(17P/Holmes)は、2007年10月24日にアウトバースを起こしました。それから2008年3月7日までのことをまとめておきます。
また、これまでの変化をもとに将来の見え方を予測しておきます。
(1)バースト初期 肉眼では2〜3等星の恒星のように,双眼鏡や望遠鏡では小さく丸い惑星状星雲のように見えた。
10月24日の夜にCometObserveMLでバーストを知った。肉眼光度という文字にCCDを冷やすが、残念ながら曇っていて観測できなかった。
25日は帰宅してまだ薄明が残っているときから北東の空をさぐる。山の上にδPer.と並んで見えてきた恒星状の彗星に驚く。35cmで見ると明るい惑星状星雲
だった。18:35に撮影してすぐにHPに掲載。その後23:12に撮影すると大きくなっていた。
(2)11月2日までは35cmで観測 直径はますます大きくなる。冷却CCDでとらえた画像では彗星の内部に噴水のような構造が見えた。
自宅の35cmカセグレン+CCDでは視野が0.27x0.4度。しだいに大きくなる彗星は2日に視野いっぱいになった。
10月27日に撮影すると視直径4.5'になっていて、ローテーショナル・グラディエント(RG)処理すると鋭い中央集光の他に放射状の筋の構造が見えてきた。
露光を重ねると彗星の周囲の淡いコマがもっと大きいことがわかった。28日に露光を増やして撮影した画像で等高線をとってみると、等しい明るさの丸
い構造がそれぞれ中心がずれていた。撮影する前に125倍の接眼レンズで見たが、彗星の中に明るい集光部と同心円状ではない明るい部分が見えていたが、
RG処理の画像で見えるような筋はわからなかった。
29日、31日も撮影。広がりつつあるコマは十分に明るいので35cmの長焦点でも割合簡単に撮影できて、RG処理に続いてLRGB合成も慣れてきた。星ナビの
投稿ページにも多くの画像が掲載されているが、RG処理を行った画像が無かった。コマ中に見られる筋は何であるのか当初はわからなかったが、31日の画
像を処理しているときに打ち上げ花火が広がって落ち始めるところにそっくりであることに気づいた。RG処理で恒星の黒い模様が出るのを防ぐために回転
角の違う画像を2枚、比較明合成すればよいことにも気づいた。11月2日には明るい円板は35cmの視野いっぱいになり、迫力のある画像が撮れた。彗星中
心部の構造の写真としてはこれ以上のものは撮れないと思い、35cmの撮影はこれで打ち切った。

(3)イオンテイル 星ナビ投稿ページを見ていると35cmでとらえていた明るい円板の周囲に3倍にもおよぶ青緑の淡いコマがあるのがわかったが、まだ尾
を写した写真は発表されてなかった。これだけガスが出ていると尾になっているはずだと思い、ディープな撮影を行わねばと護摩へ行った。F2.8の明るさ,
冷却CCDの感度と低ノイズ,護摩壇山の暗さと透明度。トータル80分の露光と4時間にも及ぶ画像処理で見えたのはタコだった。不格好な彗星だ。イオンの尾
はあったがタコの干物の足の如し。この足を強調しようと画像処理に時間がかかってしまったのだ。眼視では、漆黒の護摩の空に高く上がったペルセウス座の
一角にとても明るく見えていて、7x50ファインダーで南向きに淡い尾が見えたし、25cmにエルフレ32mm接眼レンズで2本は見えていた。

(4)イオンの尾が消えた 11月7日にも透明度の良い晴天が巡ってきた。護摩で同じように撮影するとイオンテイルは明るい部分が1本しかない。3日の
画像に比べて貧弱になっていた。11月11日は透明度が良かったので自宅で100SDUFを使って撮影したが、イオンの尾がない。少し離れた所にちぎれた塊が見え
ているだけだった。投稿画像などを見ても青い光がちぎれて流されていくのがはっきりわかった。彗星にくっついて青い尾はもう出ないと考えた。それを確か
めるために16日にディープに撮影したが、塊はさらに離れているだけでイオンテイルは完全に見えなくなっていた。

(5)コマも消えた 10月28日ごろから11月10日ごろにかけて彗星の周囲にあったエメラルドグリーンのコマが消えたのだ。16日の画像処理で発見したのはこ
れだった。その少し前、ダスト円板と青緑コマの大きさをいろんな画像から測り、今後の予想を立ててHPに載せていた。ダストは等速度で広がっているがコマ
の大きさはそうではなかったのだ。今後はコマはしだいにダストに追いつかれると予想したのだが見事に違ってしまった。追いつかれる前に消えてしまったの
だ。それまで撮った画像を見返すと11日に撮影した画像には淡いコマは写っていたが、そのあとに消えていったのだろう。
(6)ダスト円板の変化 広がりつつあるダストによる明るい円板は10月中は円形だった。11月になると北北東のエッジがはっきりして、反対の南南西の方が
淡くなってきた。ダストが後方に流されているようにイメージできるようになってきた。11月3日はまだ円形と言える形だが、7日から楕円になってきて、19日
には楕円から放物線型に近づいてきた。ダストの拡散が初めは等方的であったものが太陽風の影響で流され始めたのと地球と彗星の位置関係によってこのように
変化してきたのだろう。視直径はどこをはかってよいものか迷うほど丸くないのだが、ダストが流れている向きの垂直方向で、彗星の中央集光を通るところを直
径として測定してみると、11月10日ごろまでは等速度でひろがってきたダストの拡散が頭打ちになってきた。そしてRG処理しても目立った構造は少なくなってきた。

(7)拡散続くダスト
その後、12月15日、30日、2008年1月4日、1月28日と撮影しましたが、丸いダストはゆっくり大きくなりました。
1月4日には双眼鏡を向けると簡単に見えていましたが、3月になるとさらに淡くなって光害がある場所では観察困難になりました。

上のグラフはそれまでのダストの広がりの大きさを計ったもので、楕円に見えていたときは右のように短軸を計りました。
(8)カリフォルニア星雲に接近 3月7日ごろにカリフォルニア星雲のすぐ北側を通過しました。

(9)ホームズ彗星の将来の予想
これまでのホームズ彗星の主な画像からダストの直径を計ってみました。
| dia. | Δ | r | D | day | s | |
| 20071024 | ||||||
| 1031 | 10' | 1.62 | 2.46 | 71 | 7 | 10.1 |
| 1107 | 22' | 1.62 | 2.49 | 156 | 14 | 11.1 |
| 1125 | 43' | 1.66 | 2.56 | 310 | 32 | 9.7 |
| 1215 | 60' | 1.80 | 2.65 | 470 | 52 | 9.0 |
| 20080104 | 69' | 2.02 | 2.73 | 610 | 74 | 8.2 |
| 305 | 83' | 3.00 | 3.00 | 1090 | 133 | 8.2 |
| 20081001 | 2.5deg | 4.24 | 3.85 | 2740 | 343 | |
| 20090201 | 4.3deg | 3.29 | 4.26 | 3730 | 466 |
表で、dia.は撮影した画像から測定した視直径。Δは彗星と地球の距離、rは彗星と太陽の距離、Dは視直径から求めた実際の直系で(単位は万km)、dayはバーストからの経過日数、sは拡散速度(s=D/day)で、単位は万km/day。
表から、ダストの拡散は2008年3月でも続いていることがわかります。拡散速度は若干鈍っているように思えます。2008年3月までのダストの広がりの形をみると、おおまかにはバーストしたときに噴出したダストの粒子は彗星核からほぼ等方的に広がり、彗星本体からあまり離れてないように思えます。当初は2008年1月ごろになるとダストが彗星からかなり流されて細長いダストの尾のようになっていくと思っていたのですが、2008年1月4日に撮影した画像などでもあまり長くなっていませんでした。また、彗星の明るさは2008年になってからも急激に暗くならないので、おそらく大粒のダストが徐々に拡散しながら彗星と同じ軌道運動をしているのではないかと思います。太陽の光を反射するダストは消えずに存在していて、彗星がゆっくり暗くなっているのは彗星の距離が太陽や地球からゆっくりと離れているためだと考えます。
このあと4月にも観測できますが、明け方にまわって観測できるようになる2008年秋の予測です。
2008年10月1日夜明け前に撮影に十分な高度になってますが、彗星はかに座北東部(8h55.1m,+27.0度)にあります。今後の拡散速度を8.0と仮定すると、表のように視直径2.5度となります。
明るさは、Δもrも大きくなっているので2008年3月より2〜3等ぐらいは暗くなっているはずです。視直径は2倍になっていますから、表面輝度はとても淡くて・・・でもカリフォルニア星雲に比べると極端に淡いものではないはずですから、透明度の良い場所で7x50双眼鏡で見えるかもしれませんし、写真には写るはずです。どのような形になっているか楽しみです。
2009年2月1日にはさらに大きく淡くなっていて、プレセペ星団の北に位置します。下の写真の黄色の円はそのときに予測される視直径4.3度の円です。プレセペ星団とのツーショットを撮るにはAPSサイズのデジタル一眼レフでは90mm程度のレンズがよいでしょうね。

もっと将来
ホームズ彗星は周期6.88年で太陽のまわりを回っています。2007年10月24日にアウトバーストがおこったとき、黄道上の太陽からの離角longitudeは、52.4度でした。
彗星から放出されたダストはおのおのの粒子がケプラー運動しているので、軌道面に対して垂直の向きに放出された粒子も軌道の反対側では再び軌道面に集まります。
それは、太陽からの離角52.4+180=232.4度になる2012年12月はじめごろですが、そのときr=3.65AU、Δ=4.5AUで、おおかみ座にあって、日本から観測困難です。
再びL=52.4度となるのは 2014年9月15日ごろで、ぎょしゃ座にあってNGC1664付近に彗星は位置しています。
これは次の回帰のときですが、そのときに2007年に放出されたダストがどのような形で見えるか楽しみにとっておきましょう。
きっとダストの粒の大きさに応じて彗星本体の軌道からのずれがちがうので、細長く並んでいるかもしれません。そしてやがてはダストトレイルになって流星群のもとに
なるのだろうと勝手に想像していますが、地球の軌道のずっと外側にあるので地球からは流星群は見えませんね。