私の彗星観測法  < 2005年9月現在 >

ここでは2005年9月現在に行っている彗星の光度観測の方法を紹介します。


観測する彗星を選ぶ

 現在の機材では18等程度の彗星まで観測できるが、暗い彗星は数が多いので全部やると体がもたないので16等程度の彗星までを対象としている。また周期彗星を主に観測する。番号登録された周期彗星は全部撮りたいからである。

 先月までに観測した彗星の明るさの動向, 新彗星の情報, COメーリングリストに報告された彗星観測 などを参考にターゲットを決め、毎月の観測予定彗星を赤経順にリストしておく。

 新彗星の情報入手  IAUの軌道要素のサイト ..... 新彗星を含めた彗星の軌道要素が入手できる。

               吉田誠一さんのサイト ..... 彗星の光度変化の動向 その彗星が見える位置などを調べられる。

              ICQの彗星の光度観測値のサイト .... 実際に観測して報告された数値が見える。

 使用する星図は、「Guide ver8」。 IAUの軌道要素のサイトから入手した軌道要素から、観測する彗星の要素だけを選び「comets.dat」ファイルを作ってGuideのフォルダーに保存しておく。

 

観測

 観測は、主に自宅でCCDで彗星と比較星を撮影し、後にステライメージver4にて測定などの処理をする。

 観測日数は年間80夜程度。 自宅では光害のために天の川が年間数日ほど夏の天の川がかすかに見える程度であるが、車で出かける必要がないので、観測日数が増える。継続的に彗星を観測するには自宅で観測した方がよいと思う。光害がある場所で観測するには16ビットの階調がある冷却CCDが必要である。

 

左 自宅ドームの中の35cmカセグレン望遠鏡。

右 移動では主に25cm反射を使う。

 

 望遠鏡 35cmF14,f=5000mmカセグレン→口径3cmアクロマートレンズをCCDカメラの直前に取り付けて補正レンズとして使い、F10,f=3500mmに。赤道儀は宇治天体精機のスカイマックスV型赤道儀をイギリス式に改造したもの。スカイセンサー2000PCで半自動導入。ガイド鏡を使わず、追尾は赤道儀の精度まかせ。1フレーム60秒〜120秒露光で撮るとガイドブレがほとんどない。

 冷却CCDカメラ SBIG社のST2000XM(ABG付)を使用。このCCDカメラは、アンチブルーミングゲート付きであるので、彗星や比較星が飽和しないように、40000カウント以下になるように使っている。彗星は、1フレーム60〜180秒露光で、AutoGrab機能で10フレーム以上撮影する。比較星は8〜10等星を3秒露光する。フィルターは使ってない。また、望遠鏡の焦点距離が長いので2x2ビニングして使っている。

 比較星 比較星は、彗星から2度以内にあるヒッパルコス星表のスペクトルF5〜G5の8〜10等星を使う。ヒッパルコス星表は、信頼性が高く比較的簡単に入手できる。スペクトルF5〜G5の恒星を使うのは、太陽と似たスペクトルであるから。また8〜10等の恒星を使うのは、なるべく彗星の光度に近い恒星を使うのが最もよいのだが、ヒッパルコス星表ではこの明るさが最も暗い星である。また、彗星に近い星を選ぶのは、大気の影響を避けるためである。

 観測手順 仕事から帰ると、晴れていればCCDの電源を入れて冷却を始め、ドームスリットをあけて望遠鏡も冷やす。1時間ほどしてCCDが冷えた頃から観測を始める。観測は次のような手順でおこなう。

 1等星などで赤道儀のスカイセンサー2000のアライメントを行う。このとき、CCDで撮ってみるが、副鏡のスパイダーや微光星の写り方でピントもチェックし、ずれていたらあわせなおす。 観測対象彗星のリストから彗星を選び、Guide星図でその彗星を表示させ、彗星の近くで比較星に使えるヒッパルコス星を探す。赤経赤緯をスカイセンサーに入力して比較星に望遠鏡を向け、3秒露光でとる。比較星は2フレームとる。ここで、比較星の位置を使ってもう一度スカイセンサーのアライメントをとる。次に彗星の赤経赤緯を入力して彗星に望遠鏡を向け、3秒露光して視野を確認する。このとき彗星が10等程度であれば3秒露光でも見えているが、普通はもっと暗いので写らない。CCDで撮った視野の恒星とGuideで表示された恒星を比べて彗星が視野の中央付近にあることが確認できたら、AutoGrabで60〜120秒露光の撮影を設定する。撮影時に雲がかかってないことをファインダーなどで確認する。雲がかかっていると正しく測光できない。 AutoGrabは、自動的に撮影と保存を繰り返すが、50フレームまで設定いしてある。しかし、通常は10フレームぐらい撮ったらおわり、フラットを撮る。フラットは筒先1m程度の所に白い発泡スチロール板を置き、4Wの蛍光灯で照明して、AutoGrabで5秒露光で10枚以上撮影する。ここまで撮影できたら次の彗星にうつる。1彗星に30分ほどかかるが、淡い尾をしっかり出したい場合などは、彗星を20フレーム以上撮影するので1時間程度かかる。

 快晴が続くと、1夜に10個ほどの彗星を撮影できる。次の日に仕事がある場合の徹夜は辛いので、夜半になるとAutoGrabで彗星の露光を始めたらタイマーを40分〜1時間程度仕掛けて仮眠する。ドームのスリットは幅1.2m開くように作ってあるので、仮眠中にスリットにかかることは少ない。1夜に何回も寝ることになるが、次の日の体はずっと起きているより楽である。

 暗い所へ出かけたときは眼視観測も行う。10cm双眼鏡や25cm反射など使用。

 

画像処理と光度測定 ステライメージver4またはver5使用

 10枚程度撮影した彗星のフレームは、画像処理ソフト・ステライメージで、ダーク,フラット処理を施してから彗星の画像を作る作業と、光度測定を行う。彗星の画像は、複数画像をコンポジットして、できるだけSNを高めてコマの広がりや尾などの彗星の形状を記録するためのものである。高度測定は、彗星と比較星のカウントを測定して、彗星の光度を計算する作業である。

フラットフレーム 当日撮影したフレーム10枚程度を加算平均してftsで保存する。

ダークフレーム 0℃,-10℃,-20℃でライブラリーを作ってある。たとえばー10℃で120秒露光であれば、50枚のダークをAutoGrabで撮影し、それをステライメージで加算平均した画像をライブラリーとして保存しておく。

 

彗星画像作成  彗星を撮影した多数のフレームをそれぞれダーク・フラット処理してから加算する。このとき、1フレームで彗星が確認できれば、ステライメージの基準点指定ツールで彗星に基準点を付ける。そして、バッチメニューからコンポジットを選び、指定した基準点で位置あわせを設定して加算する。 加算した画像はレベル調整してftsで保存する。さらにレベル調整とデジタル現像でコマや尾の淡い部分から中央集光の明るい部分まで見えるように処理してjpgで保存する。このjpg画像は、彗星の形状を一覧するときなどに使う。

左は生画像。右はダーク、フラット補正した画像。ノイズはかなり減っているが、ホットピクセルが目立っている。

ホットピクセルはバッチメニューのホットクールピクセル除去で一括して除去する。

JPG画像には彗星名,年月日,フレームNo.スケール,矢印を入れる。この画像からコマの視直径,尾の長さや方位角をはかる。

 

光度測定  1フレームではっきり写っている明るい彗星は1フレームで測定, 彗星が暗い場合は加算した画像を測定する。

彗星のカウントは、彗星の画像から背景(バックグラウンド)のカウントを引き算することで得られる。ステライメージのピクセル情報ツールで、まず彗星の周囲を測って背景のカウント値をメモする。背景は、彗星の上下左右を測り、平均する。

 ピクセル情報ツールで囲った範囲の情報が表示される。

 ここで、「1229.6」がこの範囲の平均値。

この場合、彗星の周囲を測定した平均値1224を背景として記録しておく。

次に彗星のカウントは

 上で作った彗星画像で得られたコマの範囲を囲むように測定する。

 上のように囲ったデータから彗星のカウントは次のように計算できる。

総計3427689 − 範囲2570 x 背景1224 = 61689

上の彗星は分裂していたので、分裂核Bは同様に 6885カウントと計算した。

 

比較星HIP895は、2回撮っていて、同様に 222327カウント, 222824カウントと計算した。

平均222575.5をこのときの比較星のカウントとする。

比較星は3秒露光,彗星は120秒露光であるので、

222575.5 x (120/3)=8903020 が、比較星を120秒露光したときのカウントに相当する。

次に比較星の光度は、Guide星図で表示されるJohnsonV等級を使う。

この比較星は8.55等であるので、このときの彗星の明るさは次のように計算できる。

m1 = 8.55 + 2.5 x log ( 61689/8903020 ) = 13.95

これは関数電卓で手計算する。

彗星の高度が20度以下だったり、比較星が離れていたりすると、大気吸収補正するためにGuide星図で彗星と比較星の撮影時の高度を調べる。そして高度差に応じて大気吸収補正をおこなう。だが、この場合はその必要がないので、四捨五入してm1=14.0等とした。

 

発表

 彗星の光度観測は、ICQフォーマットでCometObserveメーリングリストへ報告する。ICQフォーマットには彗星の光度だけでなく、視直径やDC,尾のデータなども必要だが、上で作成した画像から測定する。また、比較星のデータや測定時のアパチャーサイズなども記入しなければならない。

 このメーリングリストへ報告された観測は、中村彰正氏がとりまとめてICQへ報告してくれる。ICQは世界の彗星の光度観測をまとめている組織で、1年間に4回観測値をまとめた冊子を発行している。今のところ、目標は年間100報告以上

 画像は、上のICQフォーマットとともにこのホームページに掲載。やがて観測期間を終えた彗星はパソコンのArchivesフォルダへ彗星ごとに分類して整理。