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平成16年(2004年) 年金改正について                                                                        


   所轄官庁からのデータの出し惜しみ、通常では考えられない考え方による社会保険庁での納めた年金の使用、
   70%が国庫負担の議員年金など今後どうするのかなどは選挙前に比べて、もはやあまり話題にも上がらなく
   なってきたように思えます。十分な審議もなく成立してしまったと思う年金改正。負担増と給付減は事務的に粛々と
   進められてゆきます。
今までに作製したキャッシュフロー表の見直しも必要に思われますのでどの点が改正に
   なったのか簡単に説明させていただきますので、参考にしていただければ幸いです。

   1.保険料水準固定方式への変更

       年金積立金はH14.3月末現在、厚生年金保険で134.6兆円、国家公務員共済組合8.7兆円、
       地方公務員共済組合36.9兆円、国民年金の第1号被保険者分9.7兆円となっています。
       今まではこれらの積立金は取り崩さない給付水準維持方式といわれるもので運営されてきましたが、
       このままでいくと現行の給付水準を維持した場合、将来厚生年金保険料は26.0%(国庫負担を1/2にした場合は
       22.8%)に、国民年金は28,900円(国庫負担を1/2にした場合は20,000円)になるとの試算結果になる
       そうです。そこで今後は将来の100年程度の均衡を図って、年金資産を取り崩しながら均衡を保っていくと
       いう有限均衡方式で最終的に保険料水準を固定していくという保険料水準固定方式に切り替えられます。

       また基礎年金国庫負担割合を引き上げ平成21年度(2009年度)までに1/2への引き上げを完了することも
       決まりました。しかし財源はまだ決まっておらず結局は国民の税金によるものと思われますので、ここでの
       負担増も十分にありえると思います。

       上記の改正により保険料が
厚生年金は平成16年10月分から、国民年金は平成17年4月からUPしていきます。
       
ただしこの保険料率、保険料は平成16年(2004年)度価格(平成16年度の賃金水準を基準として価格表示
       したもの)で、実際に賦課される保険料額は平成16年度価格の額に賦課される時点までの賃金上昇率を
       乗じて定められるとされているので、将来上昇する可能性は十分あると思いますので注意が必要です


   2.マクロ経済スライド制度による年金給付の自動調整

      
上記では負担増、こんどは給付減の改正です。
       今後労働力人口が減少していくと予想される中で年金の収入の範囲内で給付水準を自動的に調整する仕組み。
       従来の物価スライドと違い、年金をすでに受給している人たち(既裁定者)は物価の伸びで年金額を改定して
       いきますが、今後年金を初めて支給されていく人たち(新規裁定者)は賃金の伸びで改定していきます。
       いずれの場合でも、自動物価スライド制や自動賃金スライド制とは異なり、スライド調整率を控除して調整して
       いく方法です。
          ・ 既裁定者については 物価の伸び率からスライド調整率を控除します。
          ・ 新規裁定者については 1人あたりの賃金の伸び率からスライド調整率を控除します。

      スライド調整率
       公的年金全体の被保険者数の減少率と平均余命の伸び率を勘案した一定率0.3%を配慮して控除しますが
       2023年度(平成35年度)までの20年間は、平均年0.9%程度としています。
       


    これらの改正をもとに標準サラリーマン世帯の厚生年金のモデル年金を現在の所得代替率59.3%から
    平成35年(2023年)度以降
 所得代替率を50.2%するというものですが、すでにその代替率は年金の
    支給スタート時のみに可能な数値であり翌年からは減少してゆく、また何人の方がこのモデルケースに
    あてはまるのかも疑問に思われています。 世帯(夫婦)の合計所得が増加すると、所得代替率は低下するが、
    年金額は増加する。 またマクロ経済スライドによる給付水準調整を行えば、所得代替率は低下するが、
    名目年金額は減少しない調整方法をとることとしており、一定の経済成長(実質1%、名目2%程度)があれば、
    物価で現在の価値に割り戻した年金額についても増加することになるそうですが、今後発表される数値が少しでも
    違えば50.2%はもちろん年金額の維持もわかりません。 内容は下記の図を参考にしてください。


   平成16年財政再計算における世代ごとの保険料負担額と年金給付額は下記の様になります。

    設定: 夫は20歳から60歳まで厚生年金に加入(平均標準報酬月額36.0万円)、妻はその間専業主婦
         (昭和61年3月以前は国民年金に任意加入暦なし)という加入暦をもつ同年齢夫婦について
         それぞれ60歳時点の平均余命まで生存したとして、夫婦の基礎年金、夫の死後妻が受給する
         遺族年金も含めて年金受給額を計算。(保険料負担額や年金給付額を手取り賃金上昇率を用いて
         65歳時点の価格に換算して比較) なお1935年生まれの者については、その90%の期間のみの加入。

         ・ 賃金上昇率 2.1%(2009年度以降)による計算結果
         ・ 65歳以降の年金受給額で比較
         ・ 事業主負担分を含めずに比較 (含めれば保険料負担額は倍になる)
         ・ ( )内は物価上昇率で現在価値(平成16年度時点)に割り引いた金額

平成17年(2005年)
における年齢
(生年)
厚生年金
(基礎年金含む)
国民年金
保険料負担額
(個人分)
@
万円
年金給付額

A
万円
倍率

A/@
65歳以降給付分
(再掲)
保険料負担額

@
万円
年金給付額

A
万円
倍率

A/@
年金給付額
A’
万円
倍率
A’/@
70歳 (1935年生まれ)
(2000年度時点で換算
680
(670)
5,600
(5,500)
8.3 4,400
(4,300)
6.4 230
(230)
1,300
(1,300)
5.8
60歳 (1945年生まれ)
(2010年度時点で換算
1,200
(1,100)
5,400
(5,100)
4.6 4,500
(4,200)
3.8 410
(390)
1,400
(1,300)
3.4
50歳 (1955年生まれ)
(2020年度時点で換算
1,900
(1,600)
6,000
(5,100)
3.2 5,600
(4,800)
3.0 700
(600)
1,600
(1,400)
2.3
40歳 (1965年生まれ)
(2030年度時点で換算
2,800
(2,200)
7,600
(5,900)
2.7 7,600
(5,900)
2.7 1,100
(830)
2,100
(1,600)
1.9
30歳 (1975年生まれ)
(2040年度時点で換算
3,900
(2,800)
9,600
(6,700)
2.4 9,600
(6,700)
2.4 1,500
(1,000)
2,600
(1,800)
1.8
20歳 (1985年生まれ)
(2050年度時点で換算
5,100
(3,300)
12,000
(7,600)
2.3 12,000
(7,600)
2.3 1,900
(1,200)
3,300
(2,100)
1.7
10歳 (1995年生まれ)
(2060年度時点で換算
6,500
(3,700)
14,900
(8,500)
2.3 14,900
(8,500)
2.3 2,400
(1,400)
4,100
(2,300)
1.7
 0歳 (2005年生まれ)
(2070年度時点で換算
8,000
(4,100)
18,300
(9,500)
2.3 18,300
(9,500)
2.3 3,000
(1,600)
5,000
(2,600)
1.7


   3.在職老齢年金制度の見直し

       1. 60歳から64歳までの60歳代前半の在職老齢年金
            ・ 
平成17年(2005年)4月から在職中の一律2割カット廃止。
            ・ 賃金(総報酬月額相当額)と年金(定額部分(65歳以降における基礎年金に相当)も含む)の
              合計が28万円を上回る場合は、賃金の増加2に対して、年金額1を停止。
            ・ 賃金(総報酬月額相当額)が48万円を超える場合、賃金が増加した分年金を停止。
       2. 65歳から69歳までの60歳代後半の在職老齢年金(現状維持)
            ・ 基礎年金は全額支給
            ・ 賃金(総報酬月額相当額)と厚生年金(報酬比例部分)の合計額が48万円を上回る場合、
              賃金の増加2に対して、年金額1を停止。
       3. 70歳からの在職老齢年金
            ・ 
平成19年(2007年)4月から60歳台後半の在職老齢年金と同じ取扱になる
              ただし保険料負担はない。
       4. 平成14年4月に施行された65歳以降の老齢厚生年金の繰り下げ廃止制度は
          平成19年(2007年)4月より再度繰り下げ制度が復活。

   
4. 女性と年金

       遺族年金制度の見直し 
平成19年(2007年)4月より

         ・ 65歳以降の遺族配偶者(妻)
           妻自身の老齢厚生年金は全額支給、現行水準との差額を遺族厚生年金として支給。
         ・ 18歳未満の子のない30歳未満の妻に対する遺族厚生年金は5年間の有期給付とする。
         ・ 中高齢寡婦加算(夫死亡時35歳以上の妻に40歳から支給)は待機期間をなくし、
               夫死亡時40歳以上の妻に支給とする。

   5. 障害年金の改善

       
平成18年(2006年)4月より 65歳時点での障害基礎年金と自身の老齢厚生年金の併給を認める。

   6. 国民年金保険料について

       1. 
平成18年(2006年)7月より 所得水準に応じた多段階免除制度の導入           

段階保険料
(平成16年度の
保険料にて計算)
保険料分の
(国庫負担率を1/2、
追納がない場合)
免除なし
13,300円
満額
1/4 免除
9,980円
7/8
半額免除
6,650円
3/4
3/4 免除
3,330円
5/8
全額免除 1/2

 

       2. 平成17年(2005年)4月より 30歳未満の第1号被保険者(所得のある親世代と同居している場合には
          保険料免除にならない)が下記条件を満たした時の国民年金保険料の納付猶予制度

           1. 被保険者本人及び配偶者が基準(全額免除基準と同額)に該当すること。(世帯主の所得は判断の対象外)
           2. 当該期間は、年金の受給資格期間には算入されるが、年金額の計算には反映されない。(カラ期間扱い)
           3. 当該期間について10年間は追納可能とし、追納された場合は保険料納付済期間とする。
           4. 当該期間中に障害となったり、死亡した場合は、障害基礎年金または遺族基礎年金を支給。
           5. 10年間の時限措置とする。


   
7. 第3号被保険者の特例届出について 平成17年(2005年)4月より

        ・ 過去の未納期間について、特例的に届出を認め、届出に係る期間は保険料納付済期間とする。
          (現在は第3号被保険者の届出を遅れて行った場合、2年前までの期間は保険料納付済期間とし、
           それ以前の期間は保険料未納期間となっている)
        ・ 2年以上遅れて3号の届出をした場合に、やむを得ない事由がある場合には、2年前以前の期間も
           保険料納付済期間に算入する。

   8. 離婚時の厚生年金の分割  平成19年(2007年)4月より

       離婚時に配偶者の同意または裁判所の決定があれば、離婚時に厚生年金を分割できるものとする。

        ・ 離婚当事者の婚姻期間中の厚生年金の保険料納付記録を、離婚時に限り、当事者間で分割することを認める。
        ・ 施行日以降に成立した離婚が対象。
          ただし施行日以前の厚生年金の保険料納付記録も分割の対象とする。
        ・ 分割割合(分割を受ける者の厚生年金の保険料納付記録の持分)は5割を上限とする。
        ・ 離婚当事者間の協議で分割割合について合意の上、社会保険事務所に厚生年金分割の請求を行う。
        ・ 合意がまとまらない場合、離婚当事者の一方の求めにより、裁判所が分割割合を定めることができる。
        ・ 保険料納付記録の分割を受けた者は、自身の厚生年金受給資格(老齢・障害等)に応じた年金を受給。
           ・ 自身が老齢に達するまで老齢厚生年金は支給されない。
           ・ 分割を行った元配偶者が死亡しても、自身の厚生年金受給に影響しない。
        ・ 分割は厚生年金(報酬比例部分)の額のみに影響し、基礎年金の額には影響しない。
        ・ 原則として、分割された保険料納付記録は厚生年金額算定の基礎とするが、年金受給資格期間には算入しない。


   
9. 第3号被保険者期間ついての厚生年金の分割  平成20年(2008年)4月より

       被扶養配偶者(第3号被保険者)を有する第2号被保険者が負担した保険料については、夫婦が共同して
       負担したものであることを基本的認識とし、第3号被保険者期間(施行後の期間)については、以下の場合に
       第2号被保険者の厚生年金(保険料納付記録)を2分の1に分割することができる。
         ・ 夫婦が離婚した場合
         ・ 分割を適用することが必要な事情にあると認められる場合として厚生労働省令で定める場合
           (配偶者の所在が長期にわたり明らかでない場合など)
         ・ 離婚した場合には、分割対象期間とならない期間(共働き期間等)についても、当事者の同意または
           裁判所の決定があれば、厚生年金の分割を受けることができる。(8.離婚時の厚生年金の分割に順ずる)

  10. 次世代育成支援(厚生年金の給付と負担関係)の拡充  平成17年(2005年)4月より

       ・ 子が3歳に達するまで(現行は1歳までですが)育児休業中(準ずる休業を含む)の保険料免除制度の拡充。
       ・ 勤務時間の短縮等の措置を受け就業継続する者に、子が生まれる前の賃金で給付算定する措置を創設。
         (標準報酬が低下した時に、従前の標準報酬額を適用し年金額の計算に配慮する為)

                     

     その他
       ・ 個人年金情報の定期的な通知 (ポイント制の導入など)
       ・ 国民年金保険料の収納対策の強化 (国会議員の未納問題に端を発したと思われますが)
      が改正されました。 なお短時間労働者への厚生年金の適用については今回の改正から外されましたが
      5年を目途として再度検討されるようですが、多分この法律も制定されると思います。

     少子高齢化の問題は今後ますます問題になってゆきます。合計特殊出生率は平成15年には1.29でした
     (この厚生労働省の試算計算は1.32を使用したようですが)が総人口が維持される人口置換え水準の
     合計特殊出生率は2.08といわれています。平均寿命は着実に伸びて行くと思われます。世代間扶養の
     考え方はもう難しい制度になっています。日本の年金制度の将来を考えた抜本的な改革をぜひ討議・審議
     して、国民が納得するまで説明してほしいものです。もちろん無駄遣い等の問題をまず解決してからですが。

              (参考資料: 厚生労働省年金局の平成16年年金制度改正案について)