a Nakata Hideo Film [リング]

1998東宝配給

99年度(第32回) シッチェス国際映画祭(スペイン)            最優秀作品賞、最優秀視覚効果賞受賞

第17回ブリュッセル国際ファンタジー・スリラー&サイエンス・フィクション映画祭            グランプリ受賞

監督 中田秀夫

脚本 高橋 洋 

撮影 林淳一郎

美術 斉藤岩男

照明 前原信男

編集 高橋信之

スクリプター工藤みずほ

SFXス−パ−バイザ−  松本 肇

撮影助手  水口智之・川崎清仁・的場光生

照明助手  小林 敦・宮坂斉志・増田靖志・田中善之

撮影効果  横山 聖(K&L)    

現像  イマジカ

タイミング  小椋俊一

フイルム  フジフィルム8531/8571    

使用尺数  51770feet
        FCN8531(48220f) FCN8571( 3550f)

機材  シネオカメラ    アリフレックスBL4

    シネオビジョン18mm 50mm 25mm

    85mm 35mm 400mm    シネバロタール×10ズ−ム

製作  角川書店・ポニーキャニオン・東宝・イマジカ

製作プロダクション エ−ス ピクチャーズ オメガ・プロジェクト

配給 東宝(1998/1・31封切)

中田ちゃんの初めての35mmで廻した作品

若手の有望株、がんばれ!

最初は厳しい中でやっていても そのうち

自分の好きな作品が取れるようになります

しかし この【リング】が あんなにブレークするとは…

 

以下、1998年「映画撮影」誌から

リング」と「らせん」は、共に鈴木光司原作で、それぞれは前、後編の関係にある。

両作とも売れに売れた小説らしい。それを今回、一挙に映画化することになった。

「リング」を中田秀夫監督、「らせん」は飯田譲治監督、渡辺真撮影で進行すること

になった。  

−準備段階−

「リング」を監督した中田氏とは、「暗殺の街」(主演仲村トオル、大和武士、

配給大映)に次いで2本目の付き合いになる。「女優霊」(浜田毅撮影)で好評を

博して後の、再度のホラー映画だ。監督から話があったのが2月頃、紆余曲折して

いたらしいが、その間、原作を読み、クランクインするまで他の仕事をしながら待機

していた。そして、8月中頃招集された。まず原作では主人公が男なのに対し、脚本

(高橋洋)では女(松嶋菜々子)になり、別れた亭主(真田広之)と謎に追われ、謎を

追い、謎に挑み、謎を解くという話になっていた。その間に、自分たちの子供への思

いの話を混ぜながら、テンポ良くできていた。その冒頭[黒々とした水塊が不気味に

うねり、、低くうなっている。海原を時折、悲鳴のように風が吹き抜け、波がざわめく]

から終末[車の行く手には不気味な黒い雲がうごめいていた]とあるように、抽象的

な言い回しの多い脚本なので、想像力を働かす愉しい作業が、肉体の苛酷さによる

苦しみの毎日に打ち勝つことを信じ撮影に向かっていった。そう、撮影者は体力だ

けではない、創造する力が最も重要なのだ、と…クランクインの前に、冒頭の荒れ

た海を撮りに行くことにした。クランクインすると撮る暇がなくなるからだ。台風が接

近してくる日を狙い、千葉の鴨川へ行った。撮影に入ってからは一度も台風に見舞

われなかったことを思えば、思ったら吉日で良かったのだと思う。[飢餓海峡]を参

考にしたが、なかなか思うような絵が撮れずに苦労した。おぞましい海、魔物が潜む

海、闇に隠れた海の悪意、呪いの海…などと監督に言われ、脚本家に書かれ、自

分でもそう感じつつ次のシーンの繋がりや全体のトーンと共に考えていく。何気ない

カットだが、そんなカットほど実は、頭を悩ませながら撮っていることがある。この海

のカットもそんなワンカットだった。

−撮影−

期間は37日。タイトなスケジュールはいつものこと。短期間をいかに楽しみ、充実さ

せるかはスタッフ次第。そのスタッフのイニシアチブをとるのが撮影者の役割でもあ

るから、特に今回は楽しみながら、遊び心を持って撮影することに重きを置く。娯楽

映画を撮るに当たっては、まず自分が最初にその映画のファンになることを念頭に

置いている。この映画では、井戸が重要な位置を占めている。基より本物の井戸を

使って撮影できるわけもないので、セット撮影にする。床面積の広いセットの経験は

あっても、縦に一杯長く使ったセットは初めての経験だった。東映の第6ステージ一

杯に立ち上がったセットは圧巻だった。井戸は伊豆の山荘の床下入口のロケセット

部分と、それに続く床下部分のセット。井戸の上部と水底までのセット、というように

4ヵ所に別れて撮影することにした。但し、7〜8カットは蓋の部分から水底が、ある

いは水底から天井向けのカットがあった。東映の3重の更に上にキャメラを置くこと

は、上がればすぐ分かることだが、非能率的かつ不経済なため、ペガサスクレーン

にトーマヘッドを付け、リモートで操作することにした。高所恐怖症のキャメラマンに

は絶妙のアイデアだった。 撮影しているときには暗いモニターのためにフォーカス

が合っているかが不安だったがセカンドの川崎君が上に下に大活躍してくれて、ほ

ぼ完璧だった。余談だが、水底に入って撮影すると、凄まじい水圧で驚いた。水底

に入ったスタッフ、役者さん、ご苦労さんでした。井戸以外では、クランクイン前に東

宝の島谷氏が冗談交じりに云った『淳平さん暗いから。東宝映画なので明るくお願

いします』の一言は、結構脳の奥底にインプットされていた。それで、どんなに暗いシ

ーンでも登場人物の顔はつぶさない。背景は特性曲線を目一杯使って、人物を強

調すると共に、ホラー物としての空間を保つようにしよう、などと考え、全編の撮影を

していった。この微妙なトーンにフジのニューポジが果たしてくれた役割は大きかっ

たように思う。自分では、ホラーとしての空間を持った世界を作れたかと考えている

が、どうですか?監督の意向でキャメラはなるべく動かさずにいた。ともすれば、こ

の種の映画はよくクレーンを使ったり、ドリーを使ったり、手持ちを駆使したりと、キ

ャメラが語りすぎることがある。使おうと思えば使えたが、恐怖の先売りになりそうだ

と感じたら、直ちに止めた。そうすることで、じわじわ迫り来る恐怖の対象物がより鮮

明な形で、観客の脳裏に張り付いてくるのかもしれないと考えた。ひとつ悔やまれる

ことがある。ラストで主人公の女性が自分の子供を助けるために、車で実家に向か

うシーンがあった。その日、朝早く新宿を発ち、関越を一路榛名山へ。9時頃到着し

たが、魔物が蠢く彼方へ車が走る絵を撮るには、余りにドピーカン。おまけに遠くの

山陰はベタ光線。最終日で気温5度。ラストの引き絵には考えがあったので、逆光

まで待つことにした。その運転する女主人公の背景を、当初逆光にしていたのだ

が、牽引して、おまけに上り坂で、スピードがどうにも上がらない。牽引のドライバー

が、『横位置だからスピードは誤魔けますよ』 馬鹿野郎、誤魔けないよ。おれが覗

いているんだ…よっぽど怒鳴ってやろうと思ったが、最終日。スピードを上げるため

にやむなく、下り坂、順光の背景でも撮影しておいた。編集されれば、やはりスピー

ドのある2番手の絵になる。案の定、引き絵の狙いと異質になり、あとで苦労はする

し、満足いかない。自然の光線をベストと感じたとき、その光線で貫き通すべきだ。

人工的な光線は、工夫をすれば解決できるものが多い。自然光に折角チャンスを

与えられたのなら、利用しなければいけない。その時々の光線を見つめる眼がキャ

メラマンの差になるのだろうから。−SFX−この映画には幾つかの箇所にデジタル

合成された映像がある。合成は自然に、他と馴染むように等と考えてはいる。しか

し、さすがにテレビから化け物が出てきたりするので、理想通りにはいかないにして

も、映画の中での世界観のSFXとして、自然に見える様にと作る。合成に関しては

イマジカのフレームを駆使した。7年ほど前「タスマニア物語」で大顰蹙を買ったとき

にはなかったデジタル方式だが、出来上がらなければ分からない昔と違い、ある程

度見ながら判断できる点と、合成されない他のカットとの馴染みという点では、格段

の進歩がある。さも合成していますというような、品評会の様な映像でなく、日常の、

それでいて理想の背景に仕上げるための合成なら、これからもどんどん使って、イ

メージの豊饒を競い合うのも良い。ハードはどんどん進歩していくのだから。

−仕上げ−

いったいどういうことになって行くのか。ラッシュというものの考え方を、プロデューサ

ーはどう思っているのか。『アビッドで編集するのでラッシュは無し。必要な箇所は、

許可を得て焼いて下さい』お願いしますよ、プロデューサー諸氏。クランクアップま

で、90%を簡易テレシネされたビデオでラッシュを観ていたため、タイミング時に大

変苦労した。おまけに、監督以下プロデューサーまでも、明るいと云ってくる始末。い

くらラッシュを上げれば良い調子になっていると云っても、誰もテレシネ以外観てい

ないのだから、撮影している当人以外分からない。不経済を理由にラッシュを焼か

ないために、どれだけスタッフの才能の芽が摘まれていくのだろうか。

−最後に−

今回もいつものように、皆さんの御助力があって初めて出来上がりました。シネオカ

メラの相原さん、日本照明の畠山さん、報映産業の平松さん、K&Lの倉堀さん、あ

りがとうございました。初号の日、隣に座った中谷美紀ちゃんが、見終わって一言、

「ワー怖い。もう2度と見たくない」美紀ちゃん、怖がってくれて、ありがとう。 映画館

に思った以上の人が足を運んでくれて、やっと映画が100%完成した気がする。