「はぁ〜疲れた、園児ってホントに元気ですよねー、これから体もつかなぁ」
新人の保母である吉沢沙希は、首を左右に動かしながら、右手で自分の肩を揉んだ。
「誰でも一年目はそう感じるものよ」
事務机で何か書類をまとめている、先輩保母・小川恭子が沙希のほうを見ずに答えた。
「小川先生も最初はそうだったんですか?」
「もちろんよ。園児たちが言うことを全然聞いてくれなくて悩んだ時期もあったわ。まぁ保母さんが最初にぶち当たる壁ね」
「やっぱそうなのかー」
沙希は椅子に腰掛け、体を伸ばした。
「あ、それより吉沢センセ、」
恭子が沙希のほうを向いた。
「今日もタケシ君のお父さんが見えてるわよ。現在タケシ君と二人暮らしのタケシ君のお父さんが(笑)」
「も、もう〜小川先生ったら」
沙希は照れ笑いを浮かべたが、すぐに困ったような表情になった。
「あ、でも、なんていうか・・私は、あの、保母として・・」
「吉沢センセ、」
恭子が言った。
「保母さんが、園児の父親に恋しちゃいけないっていう法律はないわよ」
「小川先生・・・・」
沙希の顔がすぐに明るくなった。そして恭子は沙希のほうに笑みを返した。優しい笑顔だった。沙希は椅子から立つと、
「ありがとうございます!」
と頭をさげ、笑顔で部屋を出ていった。
それを見届けると、恭子はまた自分の机に向き直した。
「はぁー、いいなぁ若いって」