「今日はすっごく楽しかったです。マリンルージュなんか乗ったの初めてだったし。ホント、ありがとうございました、部長」

      「おいおい、部長はよしてくれよ。こんな時ぐらいは仕事を忘れさせてくれよ」

      「はい、じゃあ・・・真田さん」

      「キミが喜んでくれてよかったよ。わざわざ横浜まで来た甲斐があった」

      「・・・奥さんに内緒でね」

      「こらこら、それは言わない約束だろ」

      「はーい。でも・・・私困るなぁ」

      「何がだい?」

      「だってこんなことされたら私真田さんのこと好きになっちゃうかも」

      「私は・・・キミのことが好きだよ」

      「え・・・」

      「あと私が10年若かったら、キミに結婚を申し込んでたかもしれないなぁ」

      「真田さん・・・」

      「どうも今夜は少しだけ、青春時代に戻ったようだったよ。心の奥に眠っていた熱いものが一気に出てきたような気分だ・・ヒック!おっと、さっき行ったシーガーディアンでの酔いが残ってるようだ」

      「ふふ、もう〜真田さんったら。じゃあ、私は・・・そろそろお別れしないと」

      「何か用事でも?」

      「いえ・・・これ以上一緒にいたら・・・私、ホントに真田さんのこと好きになっちゃいますから・・・」

      「・・・じゃあ・・・また会社で」

      「あ・・・最後に一個だけワガママ言っていいですか?」

      「何?」

      「・・・えーと・・・あの・・・あ、やっぱり・・・やめときます。えー、今夜はありがとうございました。秘密のデート、楽しかったです」

      そういって真田に背を向け、走り出す女。

      ところが10メートルくらいいったところで、女は振り向き、真田の胸に飛び込んでいった。

      そのときだった、急に横浜ベイブリッジが青白く輝き、二人の抱き合う姿を照らした。

      それと同時に『もう後戻りできない』という思いが2人の頭をかけめぐっていた。