バナー(時の狭間で)

テスターの内部抵抗

 電流・電圧・抵抗の関係は電気工作をする上でとても大切で、実際に動作しているの
 設計や回路として正常なのかを確認する為の要素になります。
 

 電圧計や電流計の基本は? 

アナログ式の指示器は、コイルに流れる電流が発生する磁界と永久磁石の作用で指針を作動させる可動コイル形指示計か可動鉄片型指示計が基本になっています。

つまり、コイルに電流を流す事によって磁気を生じさせ、その磁気の大きさによって針を動かす力を得ています。(電磁石で金属を引き付ける事と同じと考えてよい)

例えば1mAを流すとフルスケールする指示計が100Ωの内部抵抗(コイルの抵抗)を持っている場合、そのまま使えば0.1Vを加えると1mAが流れます。目盛りを換えれば最大0.1Vの電圧計でもあります。

この計器に3Vを加えたら30mA(0.03A)が流れますので計器は壊れます。
で、
分圧器とか倍率器と呼ばれる補助器を付けます。

分流器は計器のコイルに定められた電流以外はバイパスするようにします。つまり例の場合、30mAの内29mAをバイパスし1mAだけコイルに流れるようにするのです。

また、倍率器はコイルに定められた電圧が加わり、オーバーの分を引き受けるモノで、例の場合、2.9Vを引き受け0.1Vだけコイルに加わるようにします。

この、分流器や倍率器を切り替えて使うのがマルチテスターになります。

 倍率器    1mAで100Ωの抵抗を持つ指示形を例にとります。

図1
左図で r=100Ωとして5Vと50Vを表示するにはRsを幾らにすればよいのか計算してみましょう。

a-b間の電圧は E=IR で有るから
E=0.001X100=0.1(V)
そうするとb-c間で残りの4.9(V)にすればいいのですから R=E/I によって
Rs=4.9/0.001=4900(Ω) となります。

同様に50Vの場合はRsで49.9Vを発生させればいいと考えると
49.9/0.001=49900Ω=49.9kΩの抵抗を接続します。

このように測定範囲に応じた倍率器Rsを切り替える事によってテスターは各電圧を測定できます。


 分流器   1mAで100Ωの抵抗を持つ指示形を例にとります。

図2
左図でa-b-cと流れる電流は1mAを越えてはいけません。
これで30mAと1Aを測定する為のRsを算出してみましょう。

まず、30mAを流そうとするとa-Rs-cに29mAを流さなければなりません。

Vac=IXR=0.001X100=0.1(V)
で、0.1Vを加えて29mAを流すRsは
R=E/I=0.1/0.029=3.448・・(Ω)四捨五入して3.5Ωとなります。

同様に1Aは Rsに0.999Aを流せばよいのですから、
0.1/0.999=0.1001・・およそ0.1Ωの値にRsを設定します。


 測定器の誤差発生について 

 さて、回路の一例から、電圧を測定する時の注意を考えましょう。
1.aーb間の電圧は?

2.b−c間の電圧は?

3.a−c間の電圧は?
図3

左図(図3)にオームの法則を適用してみましょう。

まず電池から流れる電流値は
I=E/Rで有るから
I=3/(200+100)
 =0.01(A)


次に1.のVab(aーb間の電圧)を求めると

 Vab=IXR=0.01(A)X200(Ω)=2(V)

 更にVbc=0.01(A)X100(Ω)=1(V) となります。
 だから Vac=2(V)+1(V)=3(V) となって、電池の電圧と同じになります。

ここで↑で計算した5V電圧計で測ってみましょう。
図4

r=100、Rs=4900 でしたね。

と言う事はMa-Mc間は5kΩ(5000Ω)です。

図4が内部抵抗rと倍率器Rsを置き換えたものです。

ここで、R=r+Rs=5kΩです。

さて、図3の回路にテスターを触れると図4になる訳ですが、ちょっと考えましょう。

抵抗Rが図3の回路に加わる事になります。
すると
Vabや、Vacを測る時、元の抵抗に5kΩが並列に入ります。と言う事は、電池から見た場合の電流値は図3で計算した値と異なってきます。

Vabの時 ab間の抵抗値は200X5000/(200+5000)≒192.30Ω ac間では292.3Ωですから
I=3/292.3≒0.0102(A)

Vacの時 ac間の抵抗値は300X5000/(300+5000)≒283.018Ω
I=3/283≒0.0106(A)

この例のテスターの場合、接触させただけで0.2mAや、0.6mAの電流増加になるのと同時に、ab間やac間の抵抗値までも変わってしまうのです。これが本来の回路に影響を与える値かどうかをその都度判断しなければなりません。

電圧・電流測定の場合、内部抵抗rはなるべく大きい値が正確になります。
アナログテスターですと5kΩ〜20kΩが多いですが、デジタル式はMΩ(メガオーム)単位が多いです。

【問題】

  1. 定格電流1[mA],内部抵抗10[Ω]の電流計を用いて,100mAの電流計を作るのに必要な分流器の値を求めよ。また,この100[mA]の電流計の内部抵抗はいくらか。
  2. 定格電流100[μA],内部抵抗500[Ω]の直流電流計を用いて,定格電圧100[V]の直流電圧計を作るための倍率器の抵抗値を求めよ。

【解答例】

  1. 1mAX10Ω=99mAXRΩであるので、Rs=10/99≒0.101Ω 内部抵抗 はRin=Ra//Rs≒0.1Ω
  2. 100μA×(Rm+500Ω)=100V ∴Rm=100μA/100V - 500Ω≒1MΩ