加速度脈波

Acceleration of Pulse Waveform


 また、変なタイトルと思われた方が多いと思う。書く私自身もそう思っているのだから当然と思う。

 
加速度とは、距離を時間で2回微分すると加速度になると物理の教科書に書いて有る。距離、速度、そして加速度である。車でも、一定速度で走っていて、そこでアクセルを踏み増した時、生じるのが加速度である。定常状態から、速度が変わった時の程度を表している。

 
加速度センサーと言うのがある。これは、ある一定の速度のものが、どれくらい速度が変化したかをみるセンサーである。単位はm/平方secである。これは、1秒間に速度が1m/secだけ変わる時の加速度を表している。重力の加速度が960cm/平方secであることは小学校の授業で学んだので覚えておられれる方が多いであろう。

 物理の話は結構という方が多いと思うので、この話はこの程度で終え、本題に入ろう。所で、皆さんは
脈波と言うのを知っているだろうか。解らない方は、まず右手の親指を出していただきたい。そして、爪の部分をじっと注意深く見て欲しい。まず、爪の根本に白い半月(内爪)が見えるであろう。そこは無視して、その上(爪の先端の方)を見て欲しい。透けて、下の赤みを帯びた肉(爪床)が見えているであろう。そこで、左手の親指で、右手の親指の爪の先端を軽く押して欲しい。そうすると、爪の下の皮膚が白くなるのが解るであろう。ここで、その白い部分が爪の半分くらいの面積になるように力を調節して欲しい。すると、どうだろう、その白い部分と、赤い部分の境目が、自分の脈拍に同期し、爪の根本から、先端へ赤い部分が、脈打つように変化しているのが解るであろう。これが指尖脈波である。自分の脈拍に同期して、リズミカルに赤い部分が増減しているのが目で確かめることが出来るのである。

 これを、もっと詳しく、正確に検出する機械が
指尖脈波計である。脈波の動きを、目ではっきりと見え、そして記録も出来るようになっている。この脈波が、その人の健康状態によって微妙に変化するのである。原理は、近赤外線の発光源と、皮膚を通して通過した光を検出するCdSeなどの受光素子よりなっている。そこで、指尖の抹消血管に流れる血液の量(容積)の変化を電気的に検出しているのである。検出された波形は、時間軸をX軸とすると、その時間軸に対して、丁度ラクダの背の2つの瘤(頂点とそれに続いてやや小さい山がある。この波形は、脈に同期して出現する)のように、普通はなっているのである。ところが、加齢等で、血管が堅くなってくると、この瘤が不明瞭になってくるのである。その、不明瞭さを明確にするために、2次微分を行って、波形の変化を強調して、診断しやすくするのが加速度脈波計である。

 この波形が健康のパラメーターになっているのである。東洋医学で、
脈診と言うのがある。これは、手首に人差し指と中指、薬指の3本の指を当て、その力加減と、血管の脈動の具合を判定し診断するのである。それを、主観ではなく、客観的に見ようとするわけである。加速度脈波は血液循環の状態(善し悪し)を示す良い指標となっている。

  波形の変化より、

 A:通常元気な若い人に見られる波形で、血液循環の良い状態
 B:血液循環が不十分になっていく過程で見られる波形
 C:血液循環が不十分になってきた状態
 D:血液循環がかなり悪い状態

と、普通分類されている。

 脳血管疾患、虚血性心疾患、乳腺腫瘍、子宮筋腫、卵巣腫瘍等の人は、血液循環がかなり悪い状態を表す波形(D)を示すことが多い。また、我々の研究で良く解ったのは、残業なんかして、疲れている夜の8時頃に計ると、波形が悪くなる(B,C)のである。これは、顕著に現れる。ところが、少し散歩してくると、それこそたちどころに波形が改善されるのである。慣れてくると、この機械を使わずに、この傾向が感じで解るようになる。要するに、精神的に疲れたなと思ったとき、軽い運動をすると、血液循環の状態が驚くほど改善すると言うことである。

 当然、
血液循環改善のための身体トレーニングを実施する場合、この加速度脈波からその効果が簡単に判断出来るので、トレーニングの効果測定にも有効となっている。

 この、機械は日本では、医療機器メーカーのF社とM社で医科向けに販売(50から200万円)されている。一般向けを狙って、家電大手やその他のメーカーからも特許が何件か出願されているが発売はされていない。次の世代の健康機器として、脚光を浴びる日が来るかも知れない。

 しかし、要は、人間にとって、如何に
適切な運動が大事かと言うことを客観的に教えてくれるだけであるので、ここにこられた皆さんには必要の無い機械でもある。なぜなら、「道」に興味をある人は、歩くことを厭わない人が多いと思われるからである。私自身も、これからも、機械や薬に頼らず、自らの足で、積極的に世間の道を歩いていきたいと思っている。道はどこまでも続いているから、命のある限り歩いて行きたいと思っている。
                     

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Hitosh
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