血中酸素飽和度
(パルスオキシメーター)


  血中酸素飽和度を計る、パルスオキシメター(悲観血式血中酸素飽和度計)が安く小さくなった。そして、病院だけでなく、山でも使う人が現れた。以前に、NHKの中高年の登山教室でも取り上げられたが、今日の放送(7/30、12チャンネル、夜7時、「夏の名山歩きの旅」)でも紹介されていた。登山の時に利用すると、その人の酸欠状態が一目で解るからである。

 富士山に登ったとき、酸欠で頭が痛くなった。八ヶ岳の最高峰の赤岳の頂上でも、少し頭痛がした。やばいと思ったが、下山すると何事も無かった様に直った。いわゆる高山病のはしりだったのであろう。こんな時の、酸素飽和度は85%以下となっている。通常のOP(手術)では、90%以下で酸素補給の合図である。

 犬で、実験をしたことがあるが、酸素飽和度が60%を割ると、あの真っ赤な血液が真っ黒になるのである。酸素飽和度は、血液の中の、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロンビンの割合を、パーセントで表示するものである。通常は98%以上が正常である。たばこを吸った後や、呼吸を1〜2分止めると、この表示が数%下がり、95%位に変化するのがリアルタイムで見ることが出来る。呼吸を思い切って停めた時、実験で92%位になったことがある。このときは、もう本当に苦しかった。

 ところが、この値より小さな値に、登山時では簡単になってしまうのである。徐々に継続して登っていくから、体の方もある程度までは順応していくのである。しかし、忘れていけないのは、現実は相当危険な値になっているのである。いかに、徐々に体を高度に慣らしていくことが大事か、このことよりも理解できると思う。

 血液を採取すること無く、この酸素飽和度を計る機械であるパルスオキシメーターは、指先の血液の流れを、波長の違う二つの赤外線(酸化ヘモグロビンに吸収されやすい波長と、還元ヘモグロビンに吸収されやすい波長の二つ)で計り、その割合から、血液の中の酸素の含まれる割合を計算して、リアルタイムで表示する機械である。発明者は日本のN社のA氏(特許所有者)であるが、実用化したのはアメリカのN社であった。

  日本が原案者で、米国が実用化した数少ない事例として、医学界では有名な話である。しかし、この機械の価値を見いだしたのはやはりアメリカであった。日本の医師は、そういう意味でも、少なくとも先見性は無かった。また、この機械が必要とされるほど、医療過誤でのトラブルも日本では無かった。米国では、医療過誤の無かった事の証明用として、まずこのパルスオキシメターが利用されたのである。

  医療用具で、世界に先駆けて開発し、日本ではしっかり特許もとっていたが、海外では、特許申請をしていなかった。とても海外申請するほどの予算が無かったとのことであったが、今では信じられないことである。たぶんに、価値の認識が無かったのであろう。そして、日本の救急医療法が変わり、救急救命士の制度が出来てからは、救急車の必需品にもなった。これを読まれている方で、救急車の世話になった方は、覚えているであろう。自分の指先に、選択バサミの様なもので挟まれたことを。これが、センサーである。赤外線が発光し、反対側で、その指の透過光量を計っているのである。もちろん、非侵襲であるため、痛くも痒くもない。
   
  酸素飽和度に関し、有名な話がある。心電計では異常が発見されたから患者が決定的なダメージを受けるまでの余裕時間は10秒しかないが、血中酸素飽和度では1分有るという。その間に、何らかの処置を行えば良いのであるから、かなりの余裕があると言って良い。最近では、歯科医までもが使用するようになった。患者のショック状態の予知に重宝しているのである。当然、病院でのOPには、必ずと言って良いくらい使用されている。

  麻酔中の換気の異常を関知してから、患者がダメージを受けるまでの時間で一番余裕のあるのが炭酸ガスである。炭酸ガスであると4分の余裕が有るという(フィラルデルフィア病院の医師による)。酸素飽和度の4倍である。しかし、残念ながら、パルスオキシメータの様に、簡便に非観血で炭酸ガスを計る機器が無いのである。従って、現状はそれこそパルスオキシメータが全盛となっている。 

  パルスオキシメータは、病院の他、在宅酸素療法の患者や、ICUやCCU、救急車、歯科医、そして一般病棟でも、ベット毎に1台使われるまでに普及してきた。呼吸障害の検知にも有効である。この機械は同時に、脈拍も計り表示してくれるから重宝である。

  病院で使われていた機械が、家庭に普及した例は多い。血圧計は当初、厚生省は家庭用としては認めようとしなかった。そのくせ、低周波治療器や温熱治療器、マッサジ器等は早くから家庭用の治療器として認められている。いま、鼓膜温計が認められ、ホルター型心電計やパルスオキシメータ、血糖値計、尿糖計が家庭で使用されるようになった。

  ある意味では、当然かも解らない。医科向けの機器を、簡単に素人に使わせると、誤使用のもとになり、誤判断に繋がる可能性が出てくる。やはり、これらの機器を使うときは、医師の指導下で利用すべきと思う。また、素人が生半可な知識で判断すべきではない。診断は、やはり専門家である医師が行うべきであり、また医師法でもそう定めている。

  登山という行為が、油断すると危険な状態を招くことがあることを、今回は述べて置くだけにしたいと思う。体調が悪かったら、潔く下山すべきである。これは、天候にも言える事であるが、山はそこにあり、無くならないのである。
             

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Hitosh


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