除痛の話


 人間(動物)にとって、痛みは身を守る重要な信号である。もし痛みを感じなかったら、身体が何かによって侵襲されても気が付かないことになる。たとえば、刃物で切られても解らないことになる。

  痛みは生きていく上で、絶対に必要な感覚である。痛ければ本能的にその原因から逃れようとするし、痛みが発生すれば、痛みが消える様に手を打つ。しかし、それは逆に見れば拷問の道具にもなる。痛みは苦しい。死ぬほど苦しい場合もある。そしてその痛みは他人には解らない。あくまでも本人の自覚症状のみである。

 専門家は、ペインスコアと言って、10段階で本人の申告によって分類している。その痛みの程度がどの程度軽減されたかを推し量っている。各大学や病院で独自にペインクエッショナ(痛みの質問表)を作って、管理しているのが現状である。

 でも、最近は大分様子が変わってきている。各大学で、痲酔科が独立し、ペインクリニック科と称する外来が出来て久しい。そこでは、痛みの治療を専門に扱っているのである。主に、麻酔剤による神経ブロックが中心となっている。それに、物理療法(針麻酔やTENS、経皮的電気神経刺激)を平行して行っている。また、以前に比し麻薬の使用も一般的になっている。患者の苦しみである痛みを取ってあげることが、何にもまして福音となるからである。従って以前ほど痛みは、副作用は別として、苦しく我慢することではなくなっている。

 痛みは解っているようで、その仕組みは現在でも不明なことが多い。パターン理論、スペシイファイ理論、ゲートコントロール理論等、いろんなことが発表されている。その中でも、最後のメルザックとウォールによって提唱されたゲートコントロール理論は、一番説得力がある。針麻酔や、TENS(経皮的電気神経刺激)の効果を説明出来、かつ幻肢痛(実際に足が無いのに、まるで足があるように痛む現象)の可能性を説明した。

 神経ブロックも痛みの有効な治療方法の一つである。以前は整形外科で、どうしょうも無い痛みの治療に、外科的な神経ブロック(神経を切断する)を行ってきた。今は、前述のように麻酔剤による神経ブロックが一般的であるが、それでもなお、神経そのものを切ったり、除去するオペが行われているのも事実である。歯医者で神経を抜くと言ったこと耳にしたことがあると思う。皆痛みの信号を伝達する通路を遮断しているわけである。

 しかし、人間の体は良くできている。一つの経路が遮断されても、またすぐにバイパスが出来てくる。ゲートコントロール理論によれば、痛みの信号は太い神経と細い神経による痛みの信号を、脊髄硬膜外の所でどちらの信号を脳に伝えるかコントーロルされるとされている。そのコントロールは気分の持ち方によっても大きく左右されるとのことである。

 小さいときに、怪我をするとお母さんに別なところさすってもらい、「痛いの痛いの飛んでいけ!」なんて言われると、本当に痛みが軽減したものである。東洋医学の経穴で手の親指と人差し指の付け根のツボ(合谷)や肘の付け付近のツボ(曲池)に指で刺激すると、除痛効果(虫歯の痛みには速効的である)が得られるのと同じである。  

 東洋医学は有史以前よりの経験則から成り立っているが、さすがに歴史の重さを感じさせられる。針麻酔の効果は記憶している人も多いと思うが、一世を風靡した。ツボや径絡の考え方は決して嘘八百では無い。

 ゲートコントロール理論を応用して考え出されたTENS(経皮的電気神経刺激器、日本では薬事法により低周波治療器と呼ばされているが発生機序は異なる)は、除痛を目的とした治療器である。その働きは原理的にはすごく簡単である。痛みの信号は、神経を電気的に伝わって脊髄に入り、脳に伝わり、そこで痛みとして感じる。その経路に微弱な電流を流して痛みの信号が脳に伝わるのを遮断させるのがTENSである。また、逆に筋肉を収縮させて、指や腕を随意に動かしたりするのも、脳よりの信号が神経を伝わって、筋肉のモーションポイント(MP)に伝達し筋肉を収縮させる仕組みになっている。これをTENSで行うと、任意の筋肉を収縮させることが出来る。麻痺患者の治療や、規則正しいリズミカルな電気刺激を加えることによりマッサージ効果を出し血行を良くしたり、肩こり等の治療に効果がある。

 針麻酔やTENS(低週波治療器)をもう一度見直しても良いと思っている。とにかく気持ちよい効果が簡単に得られる。まだ経験していない人がおれば、是非一度試していただきたい。痛みに悩まされている人にとってはまさしく福音である。世の中の見方がかわってくるほどである。

 ただ、機械の選定だけは気をつけていただきたい。有名メーカーの製品が良いとは限らないのが、この種の健康機器の定めである。TENSと呼ばれるのにふさわしい機器は当然限られてくる。是非、医師(ペインクリニック科、麻酔科、整形外科)か専門家に聞いて欲しい。

 質問、相談等がありましたらメールを頂きたい。必ず満足出来る回答が出来ると思っている。

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Hitosh


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