街  道

 歩数計で「東海道53次」がヒットしている。単なる歩数計では無く、距離の概念をいれ、さらに目標として、東海道の宿場を順番に通過し、達成感を得られる機構となっている。エンジョイ歩数計というのだそうだ。ところが、東海道だと、すぐ目標達成してしまうので、今度は、さらに距離の長い「奥の細道」を出した。これがヒットすれば、次は、ジオシティの「シルクロード」を目標とした商品がでてくるかもわからない。それほど、ウォーキングは多くの人に受け入れられている。

 一方、街道と言えば、司馬遼太郎の「街道を行く」が良く読まれている。最近はNHK−TVでも、連続して放映されている。すべて(47冊)読んでみたが、すこぶるおもしろい。歴史と地理と、そしてそこに住む現代人の有りようが、小説を読むようにおもしろく紹介されている。氏の造詣の深さが至る所に現れている。

 司馬氏のパターンは、記者と、地元の人との同行による街道巡りで、その殆どが、現代の足、車で移動している。もともと、この「街道を行く」は週刊朝日の連載ものであった。全部で文庫本47冊になっているほど、膨大な奥の深い紀行文となっている。

 じつは、私も学生の時は、ユースホステルの会員になり、日本全国を回った。当然、車ではなく、鉄道がメインの移動手段であった。もちろんバスも多用した。しかし、少なくとも自分で道を探して、運転したわけではなかった。限られた予算での旅行であるので制約が多く、結果として何のことは無い、いわゆる観光地巡りになっていた。

 それはそれで楽しい。しかし、定年を迎えれば時間は十分にある。私もご多分に漏れず、仕事よりリタイアする年になった。そこそこの蓄えと年金が頼りのつましい生活が待っているのである。ある意味では、これからの人生の方が長い。今、私の親父は93歳で元気でいる。お袋は86歳だ。60歳定年でも、あと少なくとも20年以上は、まあ生きていくことになるだろう、と思っている。

 その20年を考えると、決して短い年輪ではない。こどもを産んで、成人に達する年月である。しかし子育ての経験者はよく解っていると思う。あっと言う間の時間である。よくよく考えて行動しないと、それこそあっと言う間に終わってしまう。

 それを考えると、この街道が、私のライフワークとしたいと考えている。今までも主な街道は車でも回ってきた。しかし、今までは、限られた時間での移動であった。次の目的地へ向かう為の一過程にすぎないので、とにかく先を急いだ。今、昔の人の様に、日本全国の街道を歩るいてみたいと思っている。できるだけ、自分の足で、大地を一歩一歩と踏みしめてみたい。

 エンジョイ歩数計の「奥の細道」の様な疑似体験では無く、実地を歩いてみたいと思っている。一つのヒントは、人間生きていくためには、何かを喰わなければならないと言う事実である。生きたいなら、他の生命体を喰わない訳にはいかないのである。それも、合法的にである。そこまで考えると、人間はどこにいても、かかる費用は変わらない。生きるためには食べることだけを考えれば、人間はどこにいても、かかる費用はそうかわらない。ならば、食費の安いところ、景色の素晴らしい所にいた方が良いと言うことになる。

 そこで、どうせ時間が十分にあるなら、日本の、世界のあちこちでを歩いてみたいと思った。光熱費は自然が相手だ。暗くなれば寝れば良い。寒ければ、寝袋に入ればよい。昼は自分の足で動けばすぐ暖かくなる。体が汚れれば洗えば良い。風呂に入れたければ、山の公共温泉場に行けば、ただ同様のやすい費用で、心置きなく温泉に浸かれる。

 雨が降って、移動がおっくうなら、一日寝ていても良い。好きな本を読んでいても良い。素晴らしい景色が有れば、一日絵を描いていても良い。

 晴耕雨読の世界に、憧れてくる年になったようだ。 

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Hitosh


追  記
  その後、某他社より本当にシルクロードを目標とした歩数計が発売されているのが分かった。日本の通弊で、どこかの製品がヒットすると、すぐ真似をする会社が現れる。体脂肪率計もそうであった。そして、2番目に発売した会社の製品が、生き残っている。
  以前に、電機製品で、マネシタ電機と言われた会社があったが、日本らしいと思った。もっと、独創性を大事にして行きたいと常々考えている。

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Hitosh

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