劇・ふたりぼっちの朝
ìì ì í íí
●あらすじ
 「ふたりぼっちの朝」は、5分ぐらいで終わる第1幕と、そこにつけたした10分ぐらいの第2幕からなる。第1幕は、ひとりぼっちの子がいて、その子をなかまに入れるまで。第2幕は、なかまになった子どもたちが、時計がはんたいまわりになるというどたばた事件に出会い、解決するまで。1幕目だけで、かんたんにやることもできる仕組みになっている。
 
●劇に出てくる歌のリスト
ìì ì í íí
 ここは学校
 学校は海の底
 ふたりぼっちの朝(1)
 はんたいまわりのうた
 みんなあかちゃんのうた
 かんがえるうた
 ●かがみよかがみ
 ふたりぼっちの朝(2)
 
●出る人
ìì ì í íí
第1幕 こどもたち 
    先生
第2幕 こどもたち
    アナウンサー
    時間ひょうろんか
    おとうさん
    おかあさん
    おとなたち
 
「ここは学校」の歌から始まる。はじめは元気グループの子どもたち、歌って、おどって、さわぐ。
 
ここは学校
ìì ì í íí
ここは学校 がっこう がっこう
ゆかいで たのしい がっこう がっこう
うちにいるときは
みんな ひとりぼっちだけれど
がっこうに くれば
なかまが いっぱい
げんき いっぱい
おしゃべり いっぱい
ここは天国 天国だ
ここは学校 がっこう がっこう
ゆかいで たのしい がっこう がっこう
学校にいるときは
みんな たのしい なかまだぞ。
 
 歌い終わって、元気グループの子どもたち、どろけいをはじめる。
子ども1 ねえ、みんな、どろけいをしようか。
子ども2 うん、しよう。しよう
子ども3 わたし、どろぼうがいいな
子ども4 じゃあ、わたし、けいじ。○○ちゃんと△△ちゃん、なにがいい。
子ども5 わたし、けいじ
子ども6 じゃあ、わたし、どろぼうにするわ
子ども7 じゃあ、はじめるよ。それーっ
子どもたち、わあーっ、きゃあーっ
 と、しばらく、どろけいをしはじめる。それをじっとみているひとりぼっちの子ども8。ひとりごとを言い始める。
子ども8 どうして、わたしは、ひとりぼっちなんだろう。
     どうして、わたしは、みんなといっしょに、どろけいをやれない     んだろう。
     どうして、わたしは、みんなに「わたしも入れて」って、いえな     いんだろう。
と、子ども8、とつぜん大声でさけんでしまう。
子ども8 わたしも、どろけいに入れてーっ
 どろけいをしていた子どもたち、とつぜん動きが止まってしまう。
子ども9 えっ? なんだってー?
子ども10 どろけいに入りたいだって?
子ども11 だめだめ、あんたなんか。足がおそすぎるよ。ねー、
     12ちゃん。
子ども12 うん、やっぱりね
 と、そこへ、とつぜん先生があらわれる。
先生1 これこれ、きみたち、ちゃんと仲間に入れて、なかよく、たのしく    遊びなさい
子ども12 あっ、先生。わかりました。8ちゃん、いっしょにやろう。どろ     ぼうになって。じゃあ、おいかけるよ。
と、また、どろけいを始めるが、だれも子ども8を追いかけない。子ども8、にげるのをやめて、立ち止まる。
子ども8 わたしも、どろけいに入れてーっ
     わたしも、なかまに入れてーっ
 ここで「学校は海の底」の歌に入る。
 
学校は海の底
ìì ì í íí
なぜ わたしは ひとりぼっちだろうか
なぜ わたしは なかまがいない
なぜ わたしは なんにもできない
ひとりぼっちの ひまつぶし
学校は 海の底
くらくて つめたい 海の底
だれもいない しずかな 海の底
 
子ども13 8ちゃん、あんた、くらいのよ。
子ども全 くらすぎるのよ。
子ども14 わたしは、とくべつに8ちゃんをなかまはずれにしたおぼえはな     いわ。わたしは、ただ、わたしの好きな人たちと遊んでいただけ     だわ。
子ども15 わたしは、体を動かして遊ぶのが大好き。だから、いつも、どろ     けいをしている。8ちゃんは、いつも、じーっと、ただすわって     いる。べつに、なかまはずれなんか、してないよ。
子ども16 わたし、くらい子、きらい。くらい子と遊んだって、つまらない。     つまらないから、遊ばない。それのどこが悪いのよ。
子ども17 わたし……。わたしは、8ちゃんと遊んでもいいと思っている。     でも、それをいったら、こんどは、わたしが、みんなと遊べなく     なりそうで、こわいの。だって、みんなと遊んでいると、たのし     いんだもの。
子ども8 わたし、ひとりぼっちがすきなわけじゃないのよ。
子ども18 わたし、今まで、好きな人と遊んでいれば、それでいいと思って     いた。でも、それで、こまっている人がいるのが、わかったわ。
子ども19 こまっている人がいたら、たのしくない。
子ども20 ひとりぼっちは、つまらない。
子ども21 わたし、ひとりぼっちの人がいたら、勇気を出して、かたをたた     いて、声をかけるわ。ねえ、いっしょに遊ぼう。
子ども8 うん、遊ぼう。
先生2  よかった。よかった。めでたし、めでたし。これも、みんな、わ     たしの教育がりっぱだったからに、ちがいない。おっほん。
子ども全 まったく、もう、先生ったら。
 と、めでたく終わり。最後は歌でしめましょう。
 
ふたりぼっちの朝(1)
ìì ì í íí
きみが 朝 学校に来て
ひとりぼっちの子がいたら
まよわないで かたをたたこう 声をかけよう
白いつばさを はためかせて
大空 たかく まいあがる
心は ときを こえて
夢は そらを かける
 
きみが 朝 学校に来て
ひとりぼっちの子がいたら
勇気出して あく手しよう 声をかけよう
黒いやみを 切りひらいて
かがやく明日 見つめよう
心は ときを こえて
夢は そらを かける
 
第二幕(といっても、べつに、幕が開いたり閉まったりすることもない。)
こども22 さて、こうして、わたしたちは、みんな、なかよしになった。
こども全 なかよしになった。
こども23 みんな、なかまになった。
こども全 なかまになった。
こども24 ひとりぼっちは、もういない。
こども全 ひとりぼっちはもういない。
こども25 さあ、みんな、どろけいをやろうよ。
こども全 うん、やろう。やろう。
と、そこに、とつぜん、こども26、27、あわててやってくる。
こども26 たいへんだーっ。たいへんだーっ。
     みんな、たいへんだよーっ!
こども全 えーっ! どうしたの! Eちゃん。
こども27 みんな、学校のとけいが、はんたいにまわっているよ。
こども全 えーっ、とけいが、はんたいにまわっているだってーっ
と、ここで大きな時計が出てきて、はんたいまわりなんかすると、わかりやすいかもしれない。
こども28 ぎょえーっ! ほんとうにはんたいにまわっている。
こども全 ぎょえーっ!
 
はんたいまわりのうた
ìì ì í íí
ぐるんぱ ぐるんぴ ぐるんぷ どっかん
ぐるんぱ ぐるんぴ ぐるんぷ どっかん
ぐるぐるぐる めがまわる
どきどきどきどき こころがさわぐ
あーあーあー
あーあーあー
あー
 
あるひ きがついたら
とけいのはりが はんたいまわり
ぼくらのあたまも はんたいまわり
あさひがしずんで おやすみなさい
ゆうひがのぼって おはようさん
あしたのつづきが きょうになる
きょうのつづきは きのう、おととい、そのまえ、おおむかし
あーあー
 
ぐるんぱ ぐるんぴ ぐるんぷ どっかん
ぐるんぱ ぐるんぴ ぐるんぷ どっかん
ぐるぐるぐる めがまわる
どきどきどきどき こころがさわぐ
あーあーあー
あーあーあー
 
 こどもたちが歌い、おどって、さわいでいるところに、ニュースを読むアナウンサーと時間評論家のいまなんじがあらわれる。
アナウンサー 1・ピンポンパンポーン ピンポンパンポーン
       2・えーっ、ここで、とつぜんですが、りんじニュースをお         つたえいたします。
       3・きょうの午前10時30分ごろ、えーと、ちょうどいま         ごろなんですが、とけいのはりがはんたいにまわってい         るので、何時だかよくわかりません。
       4・とにかく、日本中の時計のはりがいっせいにはんたいに         まわりはじめました。
       5・げんいんは、まだ、よくわかっていません。
       6・東京都江戸川区○○○のちくたく時計店では、時計のは         りをみていたちくたくさんの目がまわって、救急車で近         くの病院に運ばれました。
       7・それから、地下鉄東西線では、中野行きの電車が勝手に         西船橋に行こうとして、いま、こまって止まっているそ         うです。
       8・時間評論家のいまなんじさんにきていただいていますの         で、ちょっと話をきいてみることにします。
       9・いまなんじさん、どうして、時計のはりがはんたいにま         わりはじめたのですか。
いまなんじ  1・はーい、わたしが、時間ひょうろんかのいまなんじでー         す。
       2・とけいのはりが「はんたいまわり」をはじめたわけです         が、これは、ひじょーに、むずかしーいもんだいです。
       3・わたしの考えでは、人間がみーんなわがままになたから         だと思います。
       4・人間がみーんな、じぶんかってになって、
       5・ほかのひとのことなんか、ぜーんぜん、かんがえなくな         って、
       6・まるで「あかちゃん」みたいになってしまったので、
       7・時間もあかちゃんにもどりはじめて、はんたいまわりに         なったのだとおもいまーす。
       8・これは、ひじょー に、たいへんなことです。
       9・このまま、とけいのはりのはんたいまわりがすすんでい         ったら、人間がみんな「あかちゃん」になってしまいま         す。
アナウンサー 10・それでは、これで、りんじニュースをおわりにします。       11・えーっ、なんかミルクをのみたくなったなあ。
       12・あばあばぶう。
いまなんじ  10・えーっ、ひじょーに、たいへんです。
       11・わたしも、ちょっと「あかちゃん」になってきたみたい         です。
       12・あばあばぶう。
と、アナウンサーと時間評論家のいまなんじは、大きなほにゅうびんを出して、ミルクをのみはじめ、そのままたいじょうする。
こども29 とけいのはりがはんたいまわりをして、みんなが「あかちゃん」     になっちゃうんだって。
こども全 みんなが「あかちゃん」になっちゃうんだって。
こども30 わたし、あかちゃんになりたくないわ。
こども31 あら、わたし、あかちゃんになってもいいわ。だって、あかちゃ     んになったら、もう学校にこなくても、いいんでしょう。一日中、     のーんびりゲームでもしていようかしら。
こども32 あかちゃんになったら、ゲームなんかできるわけないでしょう。     それより、おむつよ。おむつ。わたし、おむつをつけるのなんて、     ぜーったいに、いやだからね。
こども全 おむつなんかつけたくない。あかちゃんなんかに、もどりたくな     い。
こども33 せんせーい、! 時計のはりのはんたいまわりを止めてくださー     い。
こども全 せんせーい、! 時計のはりのはんたいまわりを止めてくださー     い。
先生3 はーい、わたしは先生ですよ。みなさん、なかよくしていて、い     い子ですね。これも、わたしのひごろの教育がりっぱだからにち     がいない。おっほん、あばばうぶう! では、さようなら。
こども34 あっ、せんせい。いかないでください。あーあ、いっちゃった。
こども35 おかあさーん! 時計のはりのはんたいまわりを止めてくださー     い。
こども全 おかあさーん! 時計のはりのはんたいまわりを止めてくださー     い。
おかあさん 1・はーい、35ちゃん、なんかようですか。
      2・ちょうどよかったわ。ちょっと、おつかいにいってきてち        ょうだい。
      3・おかあさん、なんだか、ミルクのみたくなったから、ほに        ゅうびんと粉ミルクをかってきてちょうだい。
      4・おねがいね。
      5・あばあばぶう!
こども36 あーっ、もうだめた。
こども37 おとうさーん! 時計のはりのはんたいまわりを止めてくださー     い。
こども全 おとうさーん! 時計のはりのはんたいまわりを止めてくださー     い。
おとうさん 1・えっへん、なんだね。
      2・とけいのはりが、はんたいにまわっているんだって。
      3・わっはっはっはっはっ! そんなことは、どうってことな        いさ。
      4・それより、おまえ、ちょっと、おとうさんのおむつをかえ        てくれないかね。
      5・あばあばぶう!
こども38 あーっ、みんな、あかちゃんになっちゃうよ。
こども39 こまったなあ。
こども40 こまったなあ。
こども全 こまったなあ。みんな、あかちゃんになってしまう。
と、ここで、あかちゃんになったおとなたちがとうじょうして、ほにゅうびんでミルクをのんだりしながら、とおりすぎていったり、あるいはこどもたちとおとなたちとで、いっしょになって歌ったりおどったりするのもいいだろう。とにかく、せかいはどたばたさわぎのじょうたいになる。
 
みんなあかちゃんのうた
ìì ì í íí
にんげんは あかちゃん
かわいい あかちゃん
にんげんは みんな かわいくて、わがままで、
じぶんかってな あかちゃんだ
にんげんは 森の木を切ってる
にんげんは 空気をよごしてる
 
にんげんは あかちゃん
かわいい あかちゃん
にんげんは みんな かわいくて、わがままで、
じぶんかってな あかちゃんだ
にんげんは 山をくずしてる
にんげんは ちきゅうをこわしてる
 
こども41 こうなったら、もう、わたしたちの力で、どうにかとけいのはり     のはんたいまわりをとめるしかないわ。
こども42 わたしたちのちからで
こども全 わたしたちのちからで
こども43 はんたいまわりをとめる
こども全 はんたいまわりをとめる
こども44 かんがえよう
こども全 うん、かんがえよう。
 
かんがえるうた
ìì ì í íí
かんがえる
とのさまがえるは
きたなくなった池の中で
「さいきん、世の中、すみにくいよね」と
かんがえる
 
かんがえる
いさはやの むつごろうは
かわいたどろの中で
「さいきん、世の中、すみにくいよね」と
かんがえる
にんげんは
かんがえるアシであると
むかし
パスカルがいったさ
にんげんは
かんがえる動物だから
にんげんなんだ
 
そうすると、
かんがえなければ
にんげんは
いったい
なんだろうかと
かんがえる
 
こども45 そうだ。かがみを使ってみよう。
こども46 かがみだって?
こども全 かがみだって?
こども47 かがみはなんでもはんたいにうつすだろう。はんたいまわりのと     けいのはりも、かがみの中なら、ふつうにまわる。
こども48 ふーん、ふんふん。
こども49 かがみは、自分のすがたをうつすだろう。わがままで、じぶんか     ってで「あかちゃん」みたいな自分をみたら、人間だって、少し     ははんせいするかもしれない。
こども50 よーし、そうと決まったら、かがみを集めよう。
こども全 かがみを集めよう。
と、こどもたち、かがみをあつめにたいじょう。それから、みんな、かがみを持って、ふたたびあらわれる。かがみはダンボールにミラーフィルムをはったような軽くて大きいのがあったら一番いい。
 
かがみよ、かがみ
かがみよ かがみ
ぼくのすがたを うつしておくれ
かがみよ かがみ
わたしのこころを うつしておくれ
わがままで
じぶんかってで
あかちゃんみたいな
ぼくのすがたを うつしておくれ
 
かがみよ かがみ
ちきゅうのみらいを うつしておくれ
かがみよ かがみ
よごれたちきゅうを うつしておくれ
わがままで
じぶんかってで
あかちゃんみたいな
いまの ちきゅうを うつしておくれ
 
かがみよ かがみ
ぼくのねがいを きいておくれ
 
●それから
 子どもたちが、かがみにねがいをかけて、まほうのじゅもんをいうと、とけいのはりは、はんたいのはんたいにまわりはじめる。つまり、もとにもどる。おとなたちも、もうおつむなんか、いらなくなる。めでたしめでたしで、最後にみんなで「ふたりぼっちの朝」をうたって、おしまい。
 
ふたりぼっちの朝(2)
ìì ì í íí
きみが 朝 学校に来て
ひとりぼっちの子がいたら
まよわないで かたをたたこう 声をかけよう
白いつばさを はためかせて
大空 たかく まいあがる
心は ときを こえて
夢は そらを かける
 
きみが 朝 学校に来て
ひとりぼっちの子がいたら
勇気出して あく手しよう 声をかけよう
黒いやみを 切りひらいて
かがやく明日 見つめよう
心は ときを こえて
夢は そらを かける
 
ìì ì