突然の大爆発。地球は大きな戦争でもうほとんどほろびかけている。焼き尽くす火に追われ、押し流す水に飲まれる人々。そんな中、ようやく生き延びた子どもたちは、博士の発明したタイムトンネルで過去へと出発する。戦争のなかった時代に戻って、人間たちが押してしまった「戦争のボタン」を止めるために。さあ、子どもたちは、未来から過去へと向かい、一度おこってしまった戦争を止めさせることができるのでしょうか。
ナレーショングループ
子どもグループ
はかせくんグループ
はいきょのおとなグループ
すべてをやきつくす火グループ
すべてをおしながす水グループ
たたかう赤おとなグループ
たたかう青おとなグループ
まつりの赤おとなグループ
まつりの青おとなグループ
とつぜん、大きなばくはつ音がする。大きなばくだんのはれつする音。たいほうのはっしゃ音や、きかんじゅうの音、たてものがくずれおちる音。あげくは、ていぼうがくずれ、水までがこうずいになって、町をおそう。そんなはいきょが、この劇のはじまりだ。
まくがあくと、おとなたちが、ばくはつ音の中で、にげまどっている。おとなたち、あっちにふらふら、こっちによろよろ、ときに、ばたりばたりとたおれこむ。そこに、かぶさるように、ナレーションが入る。
ナレーション1 2千××(ばつばつ)年○月、ぼくらの町は戦争だった。
ナレーション2 ばくだんの火は、わたしたちの家をもやし、すべてのもの をやきつくした。
ナレーション3 南極の氷がとけて、海がおこって、こうずいになった。
ナレーション4 すべてのものが、きえていった。
ナレーション5 いま、地球から、すべてのいのちが、きえようとしていた。
ナレーション全 いま、地球から、すべてのいのちが、きえようとしていた。
おとなたち、たちあがり「ほろびた地球のうた」を歌う。
なんにもない
なんにもない
まったくなんにもない
ほろびた
ほろびた
みんな ほろびた
ひとの いのち
くらい うちゅうに
ほろびた ほろびた ほろびた
むかし
ちきゅうのうえには
あおいそらがあった
あかいたいようが
ぎらぎらとかがやいた
みどりのもりが
ざわざわとざわめいていた
とりたちはたのしくうたい、
わらっていた
なんにもない
なんにもない
まったくなんにもない
ほろびた
ほろびた
みんな ほろびた
ひとの いのち
くらい うちゅうに
ほろびた ほろびた ほろびた
おとな1 あっ、むこうの方から、大きな火がせまってくる。
おとな2 大きな火がせまってくる。
おとな3 みんな、にげろっ。
おとな4 たすけてくれーっ。
おとな5 たすけてくれーっ
と、にげるおとなたちを、おしつつむように、火があらわれ、あばれまわる。
もやせ もやせ もやせ もやせ
すべてのものを もやせ
もやせ もやせ もやせ
すべてのいのちを もやせ もやせ
いま
にんげんたちの こころのなかは
にくしみのほのおで もえている もえている
いま
にんげんたちの からだのなかは
にくしみのほのおで もえている もえている
もやせ もやせ もやせ もやせ
すべてのものを もやせ
もやせ もやせ もやせ
すべてのいのちを もやせ もやせ
火1 もやせ、もやせ!
火2 もやせ、もやせ!
火3 いま、人間たちの心の中は、
火4 にくしみほのおでもえている。
火5 いま、人間たちの体の中は、
火6 にくしみのほのおでいっぱいだ
火7 さあ、こんどは、あっちのまちをもやしてしまおう。
火8 いくぞーっ、それーっ。
火全 おーっ。
と、火は、あばれながら、さっていく。たおれていたおとなたち、また、たちあがる。
おとな6 あーっ、地球はもうおしまいだ。
おとな全 地球はもうおしまいだ。
おとな7 あーっ、むこうの方から、こんどはとてつもなく大きな波がおそ ってくる。
おとな8 おおきな洪水がおそってくるぞ。
おとな9 たすけてくれーっ!
おとな10 たすけてくれーっ!
と、にげるおとなたちを、おしつつむように、水があらわれ、あばれまわる。
ながせ ながせ ながせ ながせ
すべてのものを ながせ
ながせ ながせ ながせ ながせ
すべてのいのちを ながせ
いま
にんげんたちの こころのなかは
いかりの水で あふれてる あふれてる
ながせ ながせ ながせ ながせ
すべてのものを ながせ
水1 ながせ、ながせ!
水2 ながせ、ながせ!
水3 いま、人間たちの心の中は、
水4 いかりの水であふれている。
水5 いま、人間たちの体の中は、
水6 いかりの水でいっぱいだ
水7 さあ、こんどは、あっちのまちをおしながしてしまおう。
水8 いくぞーっ、それーっ。
水全 おーっ。
と、水は、あばれながら、さっていく。 子どもたち、すこしずつ、ようすをみながら、とうじょうする。
子ども1 ここは、どうやら、だいじょうぶみたいだな。
子ども2 うん、だいじょうぶみたいだ。
子ども3 みんなをよぼう。
子ども4 うん、よぼう。
子ども5 おーい、だいじょうぶだ。こっちに、おいで。
子ども6 まったく、ひどい世の中になったものだ。
子ども7 ばくだんのばくはつのおかげで、火でいっぱいなのに、けむりとはいもいっぱいで、あたりは、いちめん、まっくらだ。
子ども8 氷がとけて、海がおこって、火でいっぱいなのに、水までいっぱいで、とんでもないや。
子ども9 いったい、だれが戦争なんか、はじめたんだ。
子ども全 いったい、だれが戦争なんか、はじめたんだ。
はかせ1 えーっ、お答えします。
はかせ2 この戦争は、
はかせ3 赤の人々と、
はかせ4 青の人々が、
はかせ5 なぜかにくしみあって、
はかせ6 戦争のボタンをおしてしまったから、はじまったのです。
子ども10 はかせ君、はかせ君。
子ども11 赤の人々と青の人々は、
子ども12 なんで、にくしみあっていたんだい。
子ども13 なんで、戦争のボタンなんかをおしてしまったんだい。
はかせ7 えーっ。
はかせ8 それは、
はかせ9 わたしも
はかせ10 わかりません。
子どもたち、みんな、ずっこける。
子ども14 あーあっ、こんな戦争のなかった時代にもどりたいなあ。
子ども15 戦争がなければ、
子ども全 戦争がなければ、
子ども16 おなかいっぱい食べられる。
子ども全 戦争がなければ、
子ども17 きれいな服も、いっぱい着られるわ。
子ども全 戦争がなければ、
子ども18 わたしたち、もう少し長く生きることができる。
子ども19 戦争のなかった時代にもどりたいなあ。
はかせ11 えーっ、
はかせ12 それは、
子ども全 それはー?
はかせ13 できるかもしれません。
はかせ全 できるかもしれません。
子ども全 えーっ、
子ども20 ほんとうかい。
子ども21 ほんとうに、もどれるのかい。
はかせ14 ほんとうです。
はかせ15 じつは、こんなものがあるのです。
と、はかせくん、なにかまるいわっかをとりだす。
子ども22 なんだい。これは。
はかせ16 タイムトンネルです。
はかせ17 ぼくたちが、
はかせ18 長い間考えて、
はかせ19 考えて、考えて、考えて、
はかせ20 やっとかんせいしたときに、
はかせ21 戦争がおこってしまったのです。
はかせ22 ざんねんです。
はかせ全 ざんねんです。
子ども23 ざんねんじゃないよ。はかせくん。
子ども24 タイムトンネルだから、戦争のない時代にもどることができるんだろう。
子ども25 ぼくたち、みんなで、戦争のない時代にもどって、戦争のボタンをおすのをやめさせようよ。
子ども26 そうだよ。みんな、戦争のボタンをとめるために、タイムトンネルで、過去に出発しよう。
子ども27 はかせくん、どうすれば、過去にもどれるんだい。
はかせ23 それは、
はかせ24 あるじゅもんを
はかせ25 となえながら、
はかせ26 タイムトンネルのわっかを
はかせ27 くぐりぬければいいのだ。
はかせ28 まほうのじゅもんは、
はかせ29 レドモ、レドモ、ルネントムイタ
イラミ、イザンゲ、コカ、シカム
子ども全 まほうのじゅもんは、
レドモ、レドモ、ルネントムイタ
イラミ、イザンゲ、コカ、シカム
子ども28 さあ、ぼくたちの未来のために、過去にむかって出発だ。
子ども全 さあ、出発だ。
と、子どもたち、タイムトンネルに入る。
ぼくたちは、
時間のかべをこえる
おされた「戦争のボタン」をとめるため
まほうのじゅもんは
レドモ、レドモ、ルネントムイタ
イラミ、イザンゲ、コカ、シカム
いま、ぼくたちの地球は死にそうだ。
トンボも いない
チョウチョも いない
バッタも、カッパも
こおりづけのマンモスもいない
でも、みんな、なかまだよ
すすもうよ
ぼくたちは、
時間のかべをこえる
おされた「戦争のボタン」をとめるため
まほうのじゅもんは
レドモ、レドモ、ルネントムイタ
イラミ、イザンゲ、コカ、シカム
いま、ぼくたちは地球とすすむんだ
トンボも すすむ
チョウチョも すすむ
バッタも、カッパも
こおりづけの マンモスもすすむ
さあ、みんな、なかまだよ
すすもうよ
子どもたちがタイムトンネルをくぐっている間に、世界は、赤の人々と青の人々の対立の場面に変わっている。
あか1 さあ、みんな、赤の力をみせるぞ。
あか2 あさ、のぼる太陽は、赤い。
あか3 夕方、しずむ太陽も、赤い。
あか4 つまり、一日中、赤が一番えらい。
あか5 なにがなんでも、赤が一番えらい。
あか6 それーっ、いくぞ。
あか全 おーう。
と、あかグループ、うたい、おどる。
あかは えらい
あかは つよい
あかは せかいを しはいする
まっかないつわり、あかんべえ
おさるのおしりも、まっかっか
メラメラメラメラ
もえる火も
メキメキメキメキ
はしる火も
あかは えらい
あかは つよい
あかは せかいを しはいする
と、つづいて、青グループ。
あお1 さあ、みんな、青の力をみせるぞ。
あお2 あさ、のぼる太陽のまわりは、いつも青い。
あお3 夕方、しずむ太陽のまわりも、いつも青い。
あお4 つまり、一日中、赤は青にかこまれている。
あお5 青が一番えらい。
あお6 それーっ、いくぞ。
あお全 おーう。
と、あおグループ、うたい、おどる。
ざんざざ、ざんざざ、ざんざざ、ざざざ
ざんざざ、ざんざざ、ざんざざ、ざざざ
海に広がる 青い波
空に広がる 青い空
地球は いつまでも 青かった
宇宙の はてまで 青かった
あおびょうたんに あおいきといき
あおだいしょうは にょろんにょろ
あおは せかいをしはいする
あおは せかいをしはいする
ざんざざ、ざんざざ、ざんざざ、ざざざ
ざんざざ、ざんざざ、ざんざざ、ざざざ
あお7 赤は、みんな、こしぬけばかりだ。
あお8 こしぬけだ。
あお9 はっはっはっはっはっ。
あお全 こしぬけだ。
はっはっはっはっはっ。
あか7 なに、青の方こそ、みんな、よわむしだ。
あか8 よわむしだ。
あか9 はっはっはっはっはっ。
あか全 よわむしだ。
はっはっはっはっはっ。
あお全 なんだと。
あか全 やるか。
あお10 おまえたち赤は、まちがっているのだ。
あか10 おまえたち青こそ、まちがっているのだ。
あお11 わたしたち青は、正しいのだ。
あか11 わたしたち赤こそ、正しいのだ。
あお12 こうなったら、もう「戦争のボタン」をおしてやる。
あか12 こっちこそ、「戦争のボタン」をおしてやる。
と、子どもたち、止めに入る。
子ども29 やめて。
子ども30 おねがい。
子ども31 そのボタンだけは、おさないで。
子ども32 そのボタンは、「戦争のボタン」。
子ども33 「戦争のボタン」をおしたら、
子ども34 もう、おしまい。
子ども35 すべてのいのちが、止まってしまう。
子ども36 わらっているぼくも、
子ども37 ないているわたしも、
子ども38 おこっているきみも、
子ども39 いまを、たのしく生きているあなたも、
子ども40 すべてのいのちが、止まってしまうから。
子ども41 「戦争のボタン」は、おさないで。
やめて。
おねがい
そのボタンだけは、おさないで。
そのボタンは、「戦争のボタン」。
「戦争のボタン」をおしたら、
もう、おしまい。
すべてのいのちが、止まってしまう
トンボもいない
チョウチョもいない
バッタも、カッパも、
こおりづけのマンモスもいない
わらっているぼくも、
ないている
おこってる、
いまを生きてるあなたも
やめて。
おねがい
そのボタンだけは、おさないで。
そのボタンは、「戦争のボタン」。
あお13 どうしようか。
あか13 どうしようか。
あお14 こどもたちのいうことは、正しい。
あか14 こどもたちのいうことは、正しい。
あお15 でも、われわれ青も、正しい。
あか15 いや、われわれ赤が、正しい。
あお16 正しいのは、おれたちだ。
あか16 いや、おれたちが、正しい。
あお17 せんそうだ。
あお全 せんそうだ。
あか17 せんそうだ。
あか全 せんそうだ。
みんな せんそうだ。
あお18 「戦争のボタン」をおすぞ。
あか18 「戦争のボタン」をおすぞ。
みんな おーっ、
「戦争のボタン」はとうとうおされてしまい、おとなたちは「正しい戦争のうた」を歌います。子どもたちは、さらに過去にさかのぼります。タイムトンネルをくぐりぬけた先は、平和な祭りの場面。そこで、やっと、作りかけた「たたかいのボタン」を止めさせるのに成功します。未来の地球を守ることができた未来の子どもたちは、帰って行きます。フィナーレ「未来のきみとあくしゅ」を歌っておしまいです。
むかしから、いつも正しいのが、せんそう
まちがったせんそうは、ひとつもない
ひとを なんにん ころしても
ものを どんなに うばっても
てっぽうを バンバンとうっても。
たいほうを ドカンとうっても
ひこうきで、ばくだんを おとしても
せんそうならば、ゆるされる
せんそうならば、えいゆうさ
まちがっているのは、いつも、あいて
正しいのは、いつも、じぶん
それが、正しい戦争のうた
それが、正しい戦争のうた
もしも、きみが、この地球に生まれなかったら、
きみは、青い空も、青い海も、のぼる太陽、しずむ夕日も、
みることは、できなかった。
もしも、ぼくが、この地球に生まれなかったら、
ぼくは、青い鳥も、赤い花も、ざわめく鳥も、はしるタヌキも、
見ることは、できなかった。
ぼくは、いま、生きている
まっ青な空の下で
わらっている
ないている
おこっている
かなしんでる
そして
なにもしないで
しずかに空を見上げる。
ぼくは、大きくせのびをしよう
空にむかって
手をあげて
未来のきみとあくしゅ