MY HOBBY    読書(文芸)                         もどる


エッセイを含めた文芸作品から、感動したものを、このコーナーにて紹介させて
いただきます。
  (書名は順不同、著者名等、人名は敬称略とさせていただきます)


『宮本武蔵』 (1)〜(6)  吉川英治著   講談社文庫   1971年発行

今ふたたび、宮本武蔵が静かなブームです。インターネットの検索でも6000件
以上登録されていました。私が高校2年の冬、この本を読みました。生まれて
初めての長編小説の読破でしたが、それ以来、歴史小説を好きになりました。

「我以外、皆吾師」(私以外の人は、みな私の先生である)を、座右の銘として
いた吉川英治が、理想の人間として書き上げた作品です。単なる剣術家では
なく哲人として、人間形成の理想的姿として、私も宮本武蔵が大好きです。

あえて、武蔵を知らない人に、こういう人ですよと紹介するならば、
「剣というひとつの道を通して、獣のような男が人となり、修行を重ねて聖人と
なった人間」では、いかがでしょうか。

「われ何事にも悔いまじ」と、武蔵が作品で語っていますが、私はこの言葉が
一番好きです。後悔の無い人生は理想ですが、なかなかできるものではないと
思っていました。

今私が思うには、後悔と反省はまったく違うということです。
誰にも悪いことは起こりますが、それを反省すれば前進の基(もと)になります。
しかし、後悔には前進がありません。
見方を変えれば、悪いことも、後悔ではなく、反省することで良薬となります。

宮本武蔵のように、ひとつの道を一生かけて追及できる人は、いかなる時代
でも、人生を堪能できます。一所懸命とは、武蔵のような生き方だと思います。

何かひとつのことを、やり抜ける人間でありたいですね。


『竜馬がゆく』 (1)〜(8)  司馬遼太郎  文春文庫  1975年発行

国民的ヒーローであり、私にとって歴史上の偉人で最も尊敬する人、坂本竜馬。
いかなる状況下でも、常に前向きな生き方は、今風に言えば「プラス思考の塊」
です。

竜馬のすばらしいところは、柔軟な思考力です。 
苦境において、通常なら二者択一で、どちらかの道を選択します。
しかし、竜馬の場合、常人には考えつかないような「第三の道」を見つけます

私も苦難の中で「竜馬なら、この時どうするだろうか?」と、考えてみます。
凡庸な私に、これだといえるものは浮かびませんが、思考のトレーニングとして
試してみるうちに、思いもしなかった発想が浮かぶこともあります。

司馬遼太郎が、坂本竜馬を書いていなければ、これほどの注目を集めることは
無かっただろうと思うほど、評価の難しい人物であります。言葉を変えれば、それ
だけスケールの大きな人間だったと思います。

竜馬に関する本を何冊か読みましたが、否定的に書かれている作品もあります。
竜馬はスゴイ人ですが、それ以上に、司馬遼太郎がすばらしい人間であると、私
は思いました。

「大きく生きよう」
私がこの本を読み終えて、出てきた言葉です。
「ころんでも、ただでは起きないヤツ」と、人から言われ、竜馬に少し近づけたと、
喜ぶ私は、単純でしょうか?

大学の卒業旅行は、一人で高知県の桂浜に行きました。
竜馬の銅像の前に腰掛けて、一日中、海と空を眺めていました。
「ここにいたら、大きな心になれるよなー」と、思いました。
とても平和な一日でした。


『回転木馬のデッド・ヒート』  村上春樹  講談社(文庫あり) 1985年

初めて読んだ村上作品です。
ミリオンセラーとなった『ノルウェイの森』をはじめとする小説ではなく、スケッチの
ような短編集を、一番にあげる人は少ないと思いますが・・・。

最初に読んだ作品で、その作家に対するイメージが固まります。
私は、学ぶことの多い作家だと思いました。
村上春樹の作品は、映画のように、どこか一箇所、心に残る言葉があります。
読み終えて穏やかな心になれる、大好きな作家です。ほとんどの作品を読んでい
る、数少ない作家です。

以前、新聞に載せられた言葉も、なるほどと、うなずけるものでした。
「よい文章を書くことは、よい人生を生きること」・・・深みのある言葉です。

『回転木馬のデッド・ヒート』には、9つの短編が収められています。

中でも強く印象に残ったのは、「プールサイド」という作品です。
主人公の男が、35歳を人生の折り返し点と決めます。ひとつのこだわりですが、
23歳でこの作品を読んでから、35歳までに「自分に何が出来るのか」と、課題を
与えてくれました。

実際、私の人生が変わったのは35歳でしたから、とても意味深い作品であります。

この作品集で印象に残った言葉です。

「どれだけ他人の目をごまかせても、自分自身をごまかして生きていくわけ
にはいかない」
(プールサイド)

「人は何かを消し去ることはできない ---消え去るのを待つしかない」
(タクシーに乗った男)


『もう一度、投げたかった』 山登義明・大古滋久  幻冬舎文庫 1999年 
炎のストッパー津田恒美 最後の闘い
 

『最後のストライク』      津田晃代         幻冬舎文庫 1998年
津田恒美と生きた2年3ヶ月                    

NHKスペシャル「もう一度、投げたかった」を、ご覧になられた方も多いと思います。
ジャンルとして、文芸とは言いがたいのですが、あえて紹介させていただきます。

広島カープの速球王として活躍しながら、1993年(平成5年)7月20日、32歳の若さ
で息を引き取られた「ツネゴン」こと、津田恒美の物語です。

私は、津田投手が南陽工業のエースとして、甲子園で大活躍していた時代からの
ファンです。けれんみ(ごまかし)の無い、すばらしい大投手でした。プロに入って
からも、真っ向勝負をする気持ちのいいピッチャーでした。間違いなく「記憶に残る
選手」です。

脳腫瘍と闘い、再起を果たせないまま彼は死にました。たしか、他界された翌日の
スポーツ紙にて私は知りましたが、ひとつの青春が終わったなと感じました。
とても残念でした。

「もう一度・・・」と、志なかばにして、悲劇の訪れることがあります。野球のみならず、
人生に未練は付き物かもしれません。人間、いつかは死にます。でも、そのいつか
を意識することなく生きています。一日でも長く生きたいと願うのが人の本能です。

この2冊を読みながら、私は幾度も泣きました。
ファンの一人として、「夢をありがとう」という気持ちです。人生は、儚いものです。
いつ最後を迎えても、悔いのない生き方をしたいものだと思いました。

「どんなに監督やコーチに怒鳴られても、どんなに観客に野次られても、
やっぱり野球がやりたいよ・・・」             
(津田恒美の言葉より)


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