The Cage / ザ・ケイジ

STAFF
脚 本 ジーン・ロッデンベリー 監 督 ロバート・バトラー
副プロデューサー バイロン・ハスキン 撮 影 ウィリアム・E・スナイダー
カメラ操作 ジェリー・フィナーマン 美術監督 パト・カズマン、
フランツ・バチェリン
副美術監督 ウォルター・M・ジェフリーズ エンタープライズ設計 ジーン・ロッデンベリー、
ウォルター・M・ジェフリーズ
音 楽 アレキサンダー・カレッジ 衣 装 ウィリアム・ウェア・シース、
フィルム・ディレクター、
レオ・シュレーヴ
製作助手 モリス・チャプニック 第一演出助手 ロバート・H・ジャストマン
セット装飾 エド・M・パーバーズ 音響ミキサー スタンフォード・G・ハクトン
映像効果 ハワード・A・アンダーソンCo. 特殊効果 ジョー・ロンバルディー、
プロバティー・マスター、
ジャック・ブリッグス
照明主任 ボブ・キャンベル 製作監督 ジェームズ・A・ペイズリー
メーキャップ フレッド・B・フィリップス ヘアースタイル ガートルード・リード
調 査 ケラン・デフォレスト 特別科学コンサルタント ハーヴェイ・P・リン・Jr
CAST
クリストファー・パイク ジェフリー・ハンター ミスター・スポック レナード・ニモイ
ナンバー・ワン(副長) メージェル・バレット ビーナ スーザン・オリバー
STORY
 クリストファー・パイク船長率いる航宙艦U.S.S.エンタープライズは、 ライジエル7番星での任務を終え、宇宙基地に向けての航行中、通信電波を受信した。それは古いタイプの遭難信号であり、18年前に消息を絶ったアメリ力の宇宙船S.S.コロンビアのものであることが判明する。発信源はタロス星系のタロス4番惑星、Mクラスの惑星で、科学探査によれば酸素もあり、人間が生存するのも不可能ではなかった。タロス4番惑星の周回軌道に乗ったエンタープライズは地表探査を行ない、金属反応のある地点を発見、船長以下6名の上陸班が転送降下した。
 やがて上陸班はS.S.コロンビアの生存者達を発見した。地球人との再会を喜ぶ生存者達。その一団の中で上陸班の目をひいたのは美しい女性だった。S.S.コロンビアが、この惑星に墜落した直後に生まれた彼女は、名前をビーナといい、魅惑的な目ざしでパイクをみつめる。ビーナはパイクに「何故私達がこんなに健康なのか、その秘密を教えましょう」といって彼の手を取る。彼女のいうまま小高い岩山に昇るパイク、だが、ビーナは突然、消失してしまった! 驚くパイクの前に、今度はヒューマノイドタイプの異星人が出現、彼を地中へと連れ去ってしまう。
 パイクが目をさますと、そこは岩をくり抜いて作られたような牢獄のような所だった。 2人の異星人が現われ、彼の心を読む。そして、実際には有り得ぬことだが、現実としが思えぬ幻を次々と体験させられる。ライジェル7番星の死闘、故郷での愛馬との再会、そしてオリオンの奴隷商人となった自分……そう、タロス星人はパイクの記憶や願望を、具体的にビジョン化して体験させ、それを観察していたのだ。
 パイクは、それらの幻の中に登場するビーナを詰門し、タロス星人の素性を知る。彼らは数十万年前に、高度な文明に達した種族だったが、戦争のため地下へ逃がれ、そこで精神力を発達させたのだ。そのため機械文明のすべてが失われ、 夢のみに生きる種族になっていた。彼らは他の惑星の生物を捕え、その創造力を滋養として生き延ぴており、パイクはその創造力を彼らに与える標本にされているのだ。
 パイクは読心力がある彼らにも、原始的な感情を読みとることが難しい事に気づき、タロス星人を捕えることに成功、自分を開放させる。
 ビーナを連れていこうとするパイクに、タロス星人は幻を解く、するとそこに現われたのは、かろうじて人間と判る生物だった。18年前の事故で、唯一の生存者ビーナを救出したタロス星人であったが、その身体はバラバラで、生命を保つ ことには成功したものの、地球人の身体を知らなかったので、このような姿になってしまったのだ。パイクはタロス星人に、幻でもいいから元の姿に彼女を戻してくれと頼む。
 やがてビーナは、パイクにそっくりな幻と共に、地中へと消えていく……。それはタロス星人がビーナのために創り出した物だった。パイクは、それを見届けると艦を発進させ、この星を去るのだった。
NOTE
 スタートレックの出発点ともいうべき本作は'64年に製作された。NBCより制作のゴーサインが出た後、俳優のスカウトが始まり、船長役(ロバート・T・エイプリルからクリストファー・パイクに変更になる)にジェフリー・ハンターを選んだ。彼は'50年代20世紀フォックス撮影所の契約俳優として幅広い役を数多く演じてきた。主な作品としては「キングス・オブ・キングス」、「ザ・サーチャー(ジョン・ウェインと共演)」、「テンプル・ハウストン」などがある。
 テレビシリーズのパイロット版は後のエピソードとかなり異なるのが普通だが、この「ザ・ケイジ」ほどかけ離れているのは滅多にない。構成を変えて「タロス星の幻怪人」として放送するに際しても、宇宙船のワープ駆動シーンも全てシリーズで見る者とは違っていたのでカットしなくてはならなかった。また、船長がまだタロス星人に捕まったままなのに、スポックが逃げ出そうとするシーン(バルカン人はひどく嫌な存在として描かれている)や、性的に刺激の強すぎるシーンなどもカットされている。
 さて、このパイロットフィルムは、キャスティング以外の部分でも、クラッシックの設定と異なる部分はかなりある。 例えば、クラッシックやTNGなどでも使用されているフエイザーは、この作品では登場せず、かわりにレーザーが登場しているし、記章やユニフォームにも相違点は見られる。セカンドパイロット以降、こうした部分がなくなるのは、本作をたたき台にして、何度もディスカッションされた結果であろう。
 登場人物や細かな設定が、TVシリーズと異なってはいるが、全編 に漂う知的なSFマインド、人間ドラマに重点を置いた演出、魅力的なキャラクターとストーリー展開等々、スタートレックらしさがこのパイロットフイルムにして、すでに明確になつている。
 ただ、本作はNBCの重役会議では不評だった。当時を振り返って、ロッデンベリーはTV番組「STARTREK 25TH ANNIVERSARY」('91年12月に、米国シンジケート系でオンエアされた、"スタートレック誕生25周年"という特別番組)の中でこう語っている。
「知的すぎるというのがNBCの弁だった。 彼らは幌馬車隊宇宙へ行く、というのを期待していたんだ。つまり挙と挙の殴り合いのようなシーンをね」
その為、セカンドパイロツト「光るめだま」の、クライマックスではカークとミッチェルの殴り合いをさせ、G0サインを得たのは周知の通りである。
 尚、本作のアメリ力での初放映は'88年の10月3日。これはTNGの第1シーズンと第2シーズンの放映休止期間に、特別番組として放映されたためであった。クラッシックやTNGの出演者達が、数多く登場するのはそのためだ。ホストを努め ているパトリック・スチュワートは、TNGのエンタープライズ船長であるジャン=ルーク・ピカード役の俳優である。