ライブスチームの運転


12.蒸気圧の維持方法  (H27.11.12掲載)

 個人・プライベートのレイアウトではボイラー圧力が下がったら停止して、圧力を回復させればよいのかもしれませんが、 私がよく行く市営のレイアウト(フローラルガーデンよさみ)においては、 所属する倶楽部が運営する毎月第1日曜日以外の土日祝日は有料であり、お客様は小学生以上100円/名を負担の上、 ご乗車されます。
 通常は市が保有している電動の蒸気機関車”よさみ号”のみの運転であるところに、 自分の機関車(OS製コッペル)を持ち込んで運転します。運営スタッフの案内により、”本物同様に石炭を焚いて走らせている” ことを知ったお客様からはたいそう驚かれたり感動されたりし、 乗車希望の方が多くなると、順番に並んでお待ちいただくこととなります。 たくさんの乗用台車を連結していれば、一度に多くの運客ができるのですが、わずか1両では1家族2〜3名までとなり、 乗車までお待ちいただくこととなります。
 1周約250mを走り、次のお客様が乗車されることとなりますが、 私(機関士兼機関助士)の心理としては次のお客様が乗車されたら、お待ちいただくことなく、すぐに発車したい。 ボイラーの圧力低下により、圧力回復するまでお待ちいただくようでは恥ずかしいし、申し訳なく思います。 停車は、投炭と、機関車のタンクへの水補充と、エンジンに給油するスチームオイルのタンクへの補充のみの最低限にとどめたい。 圧力回復のための発車待ちは避けたいところです。

 午前10時30分頃〜12時00分の1.5時間
 午後1時00分〜2時30分の1.5時間
  ”通算3時間の間、圧力を低下させず、連続して運客することができるか?”


を自分の課題としています。
 OS製コッペルの場合、最低3Kg/cmの圧力がほしい。いかにこの3Kg/cmを下回ることなく、 1.5時間×2回維持することができるか? 特に午後の1.5時間が難しいです。 火室内にクリンカー(燃結。石炭の燃え殻がくっついて焼け焦げた塊)が出来ていれば燃焼の妨げになるし、また、 煙管もだんだんとつまってくるからです。
 私は昼休みに有火状態のまま、煙室扉を開け、使い古して細くなった煙管ブラシを各管に1回通すこととしています。 倶楽部のメンバーの方がされていたので、マネしています。これで大きなつまりは、なくなります。

 圧力維持のポイントの一つとして、石炭の投炭量、言い換えると火床の厚さが挙げられます。 火床は厚くても薄くてもよくありません。1周回ってきて、お客様の乗降中に、焚口戸を開け火室内を見ます。
 そして、

  石炭をくべるのか? くべないのか?
  くべるのなら、どれだけくべるのか?
  走行中にくべるのか? くべないのか?(今くべるのは早いが、1周はもたない場合もあるので)


 をすぐに判断し対処します。
 ”すぐに” というのは、焚口戸を開けると冷たい空気を火室内に取り込むことになり、圧力低下の要因となるので、 必要最小限の時間しか、開けたくないからです。余談ながら、時折、火室内の石炭が燃えているところの写真を撮ろうとするお客様がいらっしゃいます。 この時はお客様サービスとして、開けていますが、ボイラー蒸気圧に余裕がないと出来ません。
 そして、出発しますが、石炭の燃焼が予想どおりであればよいのですが、 上がってくると予想していたが、上がってこない事態が発生します。逆に思った以上に圧力が上がり安全弁が噴くことがあります。 圧力が上がらない時、あるいは下がっていく時は、軸動ポンプからの給水量を減らすか、又は給水を止めることになりますが、 ボイラーに水がない場合は給水しない訳にはいきませんので、「さー 困った。」となるのです。 逆に、圧力が上がりすぎる時は、軸動ポンプからの給水量を増やします。それでも上がりすぎるようなら、ハンドポンプからも給水します。 でも、水面計の上位まで入ったら、給水を止めます。汽笛の音が鈍くなりますし。
 圧力が上がりすぎる主な原因は石炭のくべ過ぎだと思います。逆に圧力が上がらない、 下がってしまう原因の一つとして、石炭の投炭量が足りないこと、あるいは逆に多すぎることが挙げられます。

 発車前の投炭要否の判断が正しかったか否かは、走行してみないと分からないのです。

 ”いかにして、未来の火室内の石炭の燃焼状態を予想するか?”


 なにしろ、実物と違って、走行中は火室内を見ることができませんから。この点が模型特有の運転の難しさです。

 私がよく行くレイアウトでは、1周のうちには直線もカーブも、上りも下りもあります。 その地形に応じて運転操作することとなります。駅を発車して、まもなく上りとなり、さらに右カーブとなり最大の難所となり、 しばらく続いて、直線となったところから下りとなり、しばらく続きます。やがて平坦となり右カーブし、 やや下ってから駅に到着します。
 発車してから難所を越すまでの間は給炭をしません。つまり、焚口戸は開けません。 その間の必要な石炭は発車前に投炭しておきます。上がりかつ、カーブですので大量に蒸気を消費しますので、 通常、この間は給水しません。通風も活発となりますので、むしろ圧力が上がってくることもマレにあります。
 上がりきって下りの直線に入ったら、加減弁を絞り、軸動ポンプのフィードバックバルブを閉めて給水します。 しばらくそのまま給水しますが、長く続けると圧力が低下するので、適当なところでフィードバックバルブを開けます。 このあたりが中間地点であり、また、下り勾配ですので、給炭するならこのタイミングで給炭します。 駅に到着する少し前に軸動ポンプのフィードバックバルブを閉めて給水します。まもなく停車するので、 蒸気の消費量が減るのを見越して給水します。ブロワーバルブは停車する少し前に開け、 フィードバックバルブは閉めたまま駅に到着します。多少圧力が下がっても停車中に圧力が回復してくるはずですので。

 通常は以上の操作となりますが、圧力の具合いや、ボイラー水位の状況により調整することなります。 1周約4〜5分で走行し、駅での乗降時間数分(この間に、投炭し、必要に応じて、水やスチームオイルの補充を行います)で出発します。この繰り返しを1.5時間連続するのです。  この間にはお客様が途切れることもあります。その間、駅で停車となりますが、この時間は良くも悪くもなります。  ボイラーの圧力が下がっている時は、回復するための恵みの時間となりますが、調子が良い時は、 その調子を狂わすことにもなります。連続して運転するということは、ある一定のリズムとなりますので、投炭量、 投炭の時間間隔も一定となります。
 しかし、不定期に止まると、そのリズムはくずれます。なにしろ、停車中も石炭はドンドン燃えていき、 ボイラーの水は少しずつ減っていきますので。また、たちが悪いのは、火室内の石炭の燃焼状態を見誤ることです。 一見よく燃えているように見え、また、火床の厚みも充分なように見えて、投炭不要と勘違いするのです。 走行中と違って振動がないためか、燃焼を終えようとしている石炭が下り落ちず、 いわば ”フワフワ スポンジ”のようになっているのに気がつかず、よって、投炭することなく出発すると、 息切れになります。慌ててウェールズ炭を投炭しても、活発に燃え出すまでタイムラグがあるので(つまり、即効性がない)、 その間、圧力が少しずつ少しずつ下がっていくのです・・・!!(泣く)


OS製コッペル
火室内
駅で停車していても、火室内の石炭の燃焼は停止することなく、燃え続けています。


 これが怖いのです。停車時間には落とし穴があるのです。お客様が途切れたら停車し、来られたら、すぐに出発という、 発車時間が定められていないのは、実物と違った、模型特有の難しさだと思います。

 では、圧力低下時の対処方法は?

 前述のようにOS製コッペルの場合、3Kg/cmを下回ると走行困難です。 無理に走行するとダメージが大きくなるので、早めの対処が必要です。 早期圧力回復には通常走行中に使用しているウェールズ炭は不向きです。 私はスチームアップ時に使用する太平洋炭を一時的に使用します。中から大きめのを4〜6個投炭します。 太平洋炭は即効性が良く、すぐに煙と炎を出して燃えはじめます。
 私はこの事態に備え、常時太平洋炭を乗用台車に積載しています。

 ”困ったときの太平洋炭” です。

 倶楽部のメンバーにはスチームアップ時に使用する灯油付けの木片を使用する方がいらっしゃいます。 これも良い方法かと思います。太平洋炭の出番がなく(つまり、圧力を低下させることなく)、お客様に喜ばれ、 1日安全運転で終えられると、満足感、充実感が得られます。
 そして、帰宅後の美酒が待ち遠しくて!


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