ライブスチームの運転


791. ”2級ボイラー技士”について  (R6.4.21掲載)

 所属する倶楽部のメンバーの方のなかに、ボイラー技士の資格を有している方がいらっしゃることは、以前から知っていました。 でも、”資格がないとライブスチームの運転ができない”という訳ではないこと(逆に、 ”資格を持っていなくても法的に問題がない”と聞いたこともありませんが)から、 これまでさほど関心をもっていませんでした。 しかし、ライブスチームを扱う上の安全性を追究しているうちに、 ”ボイラーの知識・技能があった方が良い”と考えるようになり、 2級ボイラー技士の免許取得を目指すこととしました。

2級ボイラー技士 テキスト(教科書)
 令和4年早春、本屋さんで2級ボイラー技士のテキスト(教科書)を購入しました。 そして、学科試験には、@ボイラーの構造に関する知識、Aボイラーの取扱いに関する知識、B燃料及び燃焼に関する知識、 C関係法令の4つの科目があることを知りました。
 最初の科目の”ボイラーの構造に関する知識”は、 ”比体積、密度、比エンタルピ・・・、密度の逆数が比体積・・・。”など、 私の苦手な物理や化学の世界のようで・・・。 勉強開始してから約1ヵ月後、かねてより療養していた母が亡くなり、葬儀や法要を営んでいるうちに勉強は休眠状態となってしまいました。 ”気が乗らないなら、無理してまではやらない”との考えなので、その後もずっと休眠のままでした。 昨年秋、家内がとある公的資格を取得したのを機に、再開することとしました。 ”家内に負けてなるものか!。”と、再びエンジンをかけた次第でして。

 実機やライブスチームの世界はそれなりに知っているつもりですが、 テキストを読み進めてみると、用語・言葉が微妙に異なっており、戸惑いを感じました。 私の思い違いがあるのかもしれませんが、例えば、
  インジェクター → インゼクタ
  給水逆止弁   → 給水逆止め弁(きゅうすいぎゃくとめべん)
 また、インゼクタは給水ポンプの予備用で使用されてきたが、現在はほとんど使用されていない、とのことなど。
このぐらいならまだなじみがあり良い方で、エコノマイザ、ディフューザポンプ、ターンダウン比、ダンパ、 漸開弁(ぜんかいべん)・急開弁(きゅうかいべん)などは、聞いたことがありません。 とにかく合格するには、勉強して覚えるしかありません。

 関係法令では、2級ボイラー技士は、ボイラー取扱作業主任者の選任基準においては、 貫流ボイラー以外のボイラーでは伝熱面積25u未満ですが、全てのボイラーを取り扱えることを知りました。 つまり、伝熱面積がどんなに大きくとも、取り扱うことができるのです。

2級ボイラー技士 過去に出題された問題集
 テキストをひと通り読んだところで、過去に出題された問題集を購入しました。 やってみると少しは解けるものの、合格ラインを大きく下回りました。 合格ラインは4科目全て10問中、4問以上の正解と、かつ4科目全体で40問中、60%以上の正解です。
 テキストに戻って、もう一度、@ボイラーの構造に関する知識からC関係法令までを読み直すこととしました。 のちに知ったのですが、 安全衛生技術試験協会さまのホームページで、過去2回分の問題と解答が公表されています。 但し、その答えがなぜ正解なのかの、解説はありません。そこが市販の過去問題集との違いになります。

実技講習のテキスト
 ”2級ボイラー技士”の免許取得には、学科試験に合格するだけではなく、 私のようにボイラーの取扱いの実務経験がない場合は、20時間の実技講習の受講・修了が必要です。 学科試験の合格と、実技講習の受講・修了の順番はなく、どちらが先でもかまいません。 私は実技講習と学科試験の日程上(実技講習:2024/1/24〜26、学科試験:2024/2/7)、実技講習受講を先にしましたが、 3日間のうち、2日間は座学でしたので、学科試験の受験対策にもなり、実技講習受講が先で良かったと思っています。 なお、平日の開催ですので、会社に3日間の休暇を願い出ました。 幸い実技講習の開催場所(日本ボイラ協会の支部)が自宅近くの駅からバス1本で行けるところにあり、通学時間は通勤時間よりも短く、 出勤時より朝寝坊でき、かつ帰宅時間は早く、とても恵まれていました。

実技講習のテキスト
 こちらも実技講習のテキストです。表紙から裏にかけて、9600形蒸気機関車の写真です。 実機ではなく、模型のようです。このテキストは、市販のテキストには無い写真や図が豊富で、 私のように蒸気機関車は別としてボイラーを見たことのない人にとって、とても良いテキストです。 市販のテキストで勉強していたとき、実物のボイラーを見たことがないので、 読んでいてもイメージが出来なく、理解が困難だったからです。

 実技講習の3日目は実技です。 実物のボイラーの点検から点火までを一人ずつ実施しました。 更に、シミュレーターを使った水面計の機能試験と、 シミュレーターを使った手動の点火操作・火炉内でのガス爆発(ボイラーの爆発ではありません。 炉内・煙道の換気(プレパージ)が不十分な状態で点火すると、 炉内でガス爆発を引き起こし、事故となることのシミュレーション)も一人ずつ実施しました。 特にシミュレーターは他の受講者が注目して見ている中で一人ずつの実施でしたので、緊張します。 水面計の機能試験は1日1回以上行うこととされており、蒸気コック、水コック、ドレンコックの3つのコックの、 開く/閉じるの操作を正しい順番で行うことを勉強しました。 この水面計機能試験の各コックの開閉操作の順番は、学科試験に出題されました。 ちなみに、その順番は次の通りです。

<水面計機能試験の操作の順番>
 @蒸気コックと水コックを閉じる。この順番はどちらが先でもかまわない。そして、ドレンコックを開く。
 A水コックを開く。→ 水コックを閉じる。
 B蒸気コックを開く。→ 蒸気コックを閉じる。
 Cドレンコックを閉じる。
 D蒸気コックを開いて、最後に水コックを開く。

 OS製 3.5インチゲージ クラウスの水面計です。 ドレンコック()はありますが、 蒸気コックと水コックはありません。よって、たとえ水面計機能試験をやりたくても、やれませんので。


 実物のボイラーを使った実技では、講師の方が原水(市の水道局から供給されている水)と軟化装置で処理した水に、 それぞれに硬度指示薬を滴下され、 その色の違いを見せていただいたのは興味深かったです。 軟化装置で処理した水は青色に、 原水は赤色に着色しました。 私達が日常飲んでいるのが赤色に着色した水で、 ボイラーに好ましいのが青色に着色した水です。

実技講習の修了証
 3日間の実技講習を終えて、修了証をいただきました。 40名近くいましたが、私は最年長クラスでした。 若い皆さんと共にボイラーについて勉強した3日間でした。ちなみに受講料はテキスト代を含め、税込26,827円でした。 3日目の実技講習のなかで、講師の方より、”何らかの原因でボイラーの水位が安全低水面を下回ってしまった場合、 送気を止めると(ボイラーから蒸気を送るのを止める)操業が出来なくなるが、 たとえ、社長が「ボイラーを運転せよ!」と言ってきても、安全が確認できない場合は、決して運転するな!!!。その判断をするのが ”ボイラー技士” の役目だ!!!。”とのこと。 しっかりと記憶しておきます。安全第一ですので。


 実技講習を無事修了すると、次は学科試験の受験です。 安全衛生技術試験協会さまのホームページから、最近の過去2回分の問題をダウンロードしてやってみると、 正解率は約70%でした。合格ラインの60%は上回っているものの、自信がなく、たぶんこれかなと答えて、正解のものも少なくなく、 実質はギリギリのところだと思いました。そこで、もう一度テキスト(教科書)を読むことにしました。3回目となります。 しかし、試験日まで日にちがあまりなく、全部読む時間がありませんので、強調してある部分のみを読みこみました。 脱酸素剤として使われる薬品を問われる問題などの場合は、答えを丸暗記するしかありませんが、 それ以外は、理論・理屈で覚えないと、正解を見つけることはできません。

 学科試験の会場は、安全衛生技術試験協会さまの安全衛生技術センターです。 地下鉄と名鉄電車を乗り継いで行きます。万一、名鉄電車が止まった場合に備えて、代替えルートと、最後はタクシーを使うことを想定し、 タクシー代を用意しておきました。そして、時間も十分な余裕を持って自宅を出発しました。 結果は、順調に移動でき、会場には集合時間の1時間半前に到着しました。 それでも、数名の方は既に来られていました。試験時間は4科目で3時間(午後1時30分から午後4時30分まで)です。 1時間経過すると、退室可能となります。その1時間を経過すると、驚いたことに半分ぐらいの方が退室されました。 私は40問中、38問目を解いていたときです。 その後も続々と退室していかれます。皆さん、よく出来たのか、諦めたのかは分かりませんが・・・。 私は、自信がない問題の再考と見直しをして、1時間半経過後に退室しました。 試験時間の半分を経過したところですが、残っていたのは、1教室約100名中、10数名でした。 ちなみに、試験手数料は8,800円でした。 なお、試験日は実技講習と同様、平日なので、会社に休暇を願い出ました。

 合格発表は1週間後の午前9時30分に、 安全衛生技術試験協会 安全衛生技術センターさまのホームページに合格者の受験番号が掲載されると共に、 その日の午後に通知書を発送するとのこと。 2月12日(月)が祝日のためか、1日後ろになり、ホームページへの掲載は2月15日(木)午前9時30分とのこと。 合格発表まで何だか落ち着きません。

免 許 証
 
 合格発表の当日、ホームページに私の受験番号が掲載されていました。でも、番号だけで名前がありませんので、ややピンときません。 そして、2月19日(月)、免許試験合格通知書が届きました。これには名前も記載されています。 間違いなく合格です。以上で完了ではありません。 送られてきた免許試験合格通知書と実技講習の修了証を添付して、厚生労働省の東京労働局長に免許を申請する必要があります。 早速、2月20日(火)に申請書を郵送しました。そして、2週間後の3月5日(火)、遂に免許証が自宅に届きました。 ”労働安全衛生法による免許証”とあり、 ”二ボイラー”のところが”1”になっています。 テキストを購入し勉強開始してから、2年経過して、ようやく免許取得完了しました。


最後に
 2級ボイラー技士の免許取得を目指し勉強して、特に良かったと思うのは、ボイラーの水管理に関してで、 pH・酸消費量・硬度の意味、ボイラー水中に含まれる不純物とその影響、補給水処理の方法、 ボイラー系統内処理(使用される薬品(清缶剤))について、学習できたことです。今後、更に深めていきたいと思います。

 国鉄における蒸気機関車の技術開発は、C61やC62が製造された昭和20年代前半から、 C63が設計された昭和31年頃までで終了したのでしょうか?。 一方、ボイラーの世界は技術開発が続けられ、”ボイラー効率の向上、自動制御機能の充実、安全性の向上、 大気汚染の防止対策などに取り組んでこられたのだろう”と思います。そして、今後も技術開発が続けられることでしょう。 しかしながら、”ボイラーの水位が低下しても自動的には給水ポンプは起動しない”、 ”負荷(蒸気の必要量)が大きくなっても、低燃焼から高燃焼には切り替わらない”など、 ”自動制御機能がまったくなく、すべて人に依存する蒸気機関車の運転の方が、はるかに面白い!!!。”と思った次第で。  


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