台所太平記、観ました(2000年5月2日)
まずは、観劇の証拠から。

もう、最初に書いてしまいましょう。
ご安心ください。細川ふみえ、立派に舞台女優デビューを果たしました。出来は、文句無しです。うれしかった。
じつは、この劇で出てくる女中さん、主演の山本陽子さんをはじめとして5人の役柄は皆20歳代なのですが、フーミン以外はベテラン(30歳以上)、あるいは若くても演劇専門の人ばかり。これだけですと、彼女が埋もれてしまいそうに思えますが、そこは、開始早々の場面から安心して観ていられるということで、もう、感激の「大合格」。他の出演者に、決してひけをとらない演技でした。本当ですよ。
プログラム冊子の紹介順序では、山本陽子、音無美紀子に次いで3番目。もちろん、当芝居の重鎮として、主人役の滝田裕介、その妻、丹阿弥谷津子が出演者一覧の末尾に別格として載っていますので、フーミンは5番目ということで、しかも写真掲載は1ページまるごと使用です。いえ、順位がどうだから良いだの写真がデカイから何だのということではないです。これは、フーミンが女優として「期待できる」だから「抜てき」と思っていいんじゃないか。山本陽子さんが、フーミンを呼んでくださった。これだけでも、大感謝です。呼ばれたくても呼んでもらえない人は大勢いるはずなのだから。そして、もちろん、冊子での紹介順序より、中身です。みごとに、それに応えている。ああ、よかった。彼女に拍手を贈りたい。
←プログラム冊子にあった写真です。
設定は昭和30年代の京都。フーミンは、京都弁の女中さん。女優志望です。声が、か細いんじゃないか、とお思いの皆さん、全然そんなことはありません。しっかり聞こえる、凛としたつややかな声。テレビの中で聞ける彼女の声だけで想像しないでくださいね。私なんか、もう何年も舞台やってんじゃないか、と思ってしまいました。私が舞台演劇を最近観たのは、10年ほど前の、藤山寛美の松竹新喜劇。その時の藤山寛美は、体調が悪かったからなのか、声に張りが無く、前から10列めあたりの席だった私にすら、よく聞き取れなかったのです。ですから、舞台に慣れない人は、なおのこと、聞き取りにくいものなのかなと思っていたのですが、全然そんなことは無かったですね。
女中さんといえば、衣装は和服が相場でしょうが、フーミンは最初からお洋服。それは、活動的な役柄ということもあるのでしょう。事実、彼女は、動き回るということでも重要な役回りでしたから(後半の立ち回りも、面白かったですよ)。しかも、洋服姿でかろやかに動くところは、和服が多い出演者の中で、貴重なアクセントになっていました。最後の場面では、大女優の付き人になったフーミンが、陽子さん扮する初江の祝言にお祝いに来るというところですが、そこでフーミンは大きな帽子に真っ赤な衣装(ほら、ちょっと古めのドレス。呼称を知らなくて、申し訳無い....)で、華やかに、私は大女優なのよ、と見栄をはっているかのように登場です。身体のラインがわかる衣装を身にまとった、スタイル抜群のフーミンですから、ほんとうにドッキリしてしまいました。間近で見たかったです。
ちなみに山本陽子さんは、もともと和服が強いイメージでこの公演でも和服主体だったのですが、途中の1場面で洋服姿(しかもポニー・テール)になって、これまたちょっと驚いたのでした。設定が20歳台だからなので、考えたら、あたりまえなのですが。
私のことだから、ひいき目に見ているのかもしれません。ですが、誰かの足を引っ張るようなことは全く無く、ほんとうに、立派に演技できていたと思います。私自身が、この劇を、十分すぎるほど楽しめたのですから、もう、何も言うことはありません。
劇中、フーミン扮する、女優志望の百合は、たしか、こう言いました。
「うちは、日本のマリリン・モンローを目指すんやから」
女優の道を歩む彼女の、初めての舞台演劇。その役として、このセリフを言うことができたのは、何かしら不思議な運命を感じるのでした。そして、名古屋でその舞台を観ることができた私は、大切な人の誕生に居合わせたかのようで、とてもうれしく思いました。
(2000.5)