ヴァンゲリス
【推薦】
「天国と地獄」
【ジャンルを超えた標題音楽】
ヴァンゲリスを知らない人には、こう説明する。「炎のランナー」「南極物語」「ブレードランナー」「1492・コロンブス」「2002年サッカー・ワールドカップ公式アンセム」などなど。
「天国と地獄」はヴァンゲリス初期の超大作であり、今もって代表作のひとつ。シンセサイザーとピアノ、各種打楽器、ソプラノ・ソロ、合唱による、多楽章形式のオラトリオだ。約20分の前半(パート1)と後半(パート2)に分かれ、途中に小さな歌曲があるという、計45分の大曲。
歌以外は全てヴァンゲリスの演奏によるもので、多重録音で制作されている。シンセサイザーの音色は、さながら大管弦楽。ホルンやトランペットによる金管楽器の爆発や、弦楽合奏の厚みのある響きをうまく再現する。楽器がシンセサイザーであるゆえに、幻想的な雰囲気や不気味な雰囲気の表現力は異様なほど。打楽器は通常の管弦楽の範囲をはるかに越えていて、各種民族楽器の複合体だ。ティンパニやシンバルはもちろんのこと、初めて聴くような打楽器も多数。野性的というかアフリカ的というかインド的というか、表現不能。合唱が加わる部分は、そこらへんのオラトリオやミサにも負けないほどの大迫力。なお、歌詞はどうなっているのか、今もってわからない。
一応ロック畑の出身(たとえば、中間の歌曲はジョン・アンダーソンのソロ歌唱)なので分類上はロックであるが、じつはクラシック音楽における現代音楽と同じだ。しかし類似の曲を探すのは困難だ。
曲の構成は、Wikipediaを参照してほしい。
2006年発売の紙ジャケット盤は、レベルオーバーのためノイズが大変にひどく、購入を避けるように。買う場合は、プラスチック・パッケージの旧版(国内盤で2種類ある)がよい。
2008年10月発売のSHM-CD仕様の再発売盤は、2006年リマスターなのでノイズがバリバリ確定です。メーカーも、レベルオーバーを認識済です(下記)。
お問い合わせの件ですが、 本年10月22日に発売予定のSHM-CDにおいては、 最新のマスタリングである、紙ジャケット仕様の際にも使用したリマスタリング音源を使用いたします。 この件に関しまして制作担当者にも確認しましたが、紙ジャケット仕様の際にも使用したリマスタリング音源は、 最近録音されて発売されている新譜の音源ほどにはレベルオーバーとなっていません。 ヴァンゲリスの「天国と地獄」が最初に発売された当時と比べれば、レベルオーバーとなっていることは事実ですが、 昨今の最新新譜と比べて、充分にレベルを抑えたリマスタリングを制作担当者も心掛けております。 人間の単純な心理として、音圧レベルの高い音を印象的と捉えてしまう傾向を考慮して、 昨今のレコード会社各社の新譜においては、エンジニアが競ってレベルオーバーを行なっています。 以上のような昨今の傾向もご賢察の上、ご了承いただけますようお願いいたします。 (株) BMG JAPAN カスタマーサポートセンター |
CD化一覧
1990年盤(国内) BVCP5024
ケース裏はオレンジ色の地にトラックの内容記載。ピークは余裕を持ったもの(図1)
1991年盤(英国) ND71148
1995年盤(国内) BVCP7371 ケース裏はLPと同じ天使の手。K2マスタリング。ピークは限界。数箇所フルビットになっているが、音はつぶれていない。(図2)
2002年盤(欧州) Spiral
, Albedo 0.39 と3枚セット
2006年盤(国内) (*)
紙ジャケット盤。レベルオーバーのノイズがバリバリ。売り払ったのでデータをお見せできないのが残念。
2008年盤(国内) SHM-CD。メーカーは、2006年盤で使ったマスタを使うと明言したので、レベルオーバーの宣言をしたも同然。実際にどうなるかは不明。
図1 1990年盤で、パート1全体を解析
図2 1995年盤で、パート1全体を解析
[完]