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七〇億人水不足の恐れ
宇宙船から見る地球は、青く輝いています。青いのは地球が水惑星だからです。地球上の水は、海洋・湖沼・河川、土壌や動植物の体の中に液体として存在します。「万物の根源は水である」と古代ギリシャの哲学者は言いました。たとえば、微生物を生きたまま長期間保存するとき、低温で完全乾燥します。この睡眠中の細胞も水分を得ると、活発に代謝が動き出します。種子や胞子は発芽を始め、乾燥微生物は生(せい)を取り戻し増殖を開始します。まさに水は生命の源です。その水について考えていきましょう。
1995年、当時世界銀行の副総裁であったイスマル・セラゲルディンは「二十一世紀は水をめぐる争いの世紀になるだろう」と予測しました。不幸にもそれは的中し、今日では「水の世紀」という言葉が、水不足・水汚染・水紛争などを包摂する概念として定着しています。
水問題にかかわるすべての国連機関がまとめた水資源に関する「世界水発展報告書」が、2003年3月5日発表されました。それによると、人口増や水質汚染・地球温暖化などが原因で、今世紀半ばに深刻な水不足に直面し、影響を受ける人口は、最悪の場合60カ国・70億人に達します。
現在、アフリカ・アジア・中東の三四か国が水不足国に分類されており、そのうち32カ国が穀物の純輸入国になっています。水不足が原因で穀物を国内で栽培できないからです。これら水不足国の合計人口は、2025年には現在の4億7000万人から30億人に増加するものと予測されています。
[涸れゆく地下水] 地球上に液体として存在する淡水の推定九七%は帯水槽に貯えられており、中国・エジプト・インド・インドネシア・パキスタンなど多くの国々は国内食糧生産の半分以上を灌漑地に依存しています。その帯水層の水が不足しています。地域別に見ていきましょう。
1、インドの国立環境工学研究所は、地下水資源の過剰使用が国中で起きている。重要な農業地帯の地下水位が「危険な速度」で低下していると報告しました。インドの主要穀倉地帯であるパンジャブ州とハリヤナ州では地下水位が1年に0.5〜0.7メートル低下しています。
2、中国の穀物のおよそ40パーセントを生産する華北平原の大半の地域で、地下水位が1年に1〜1.5メートルずつ低下しています。
3、アメリカのオガラ帯水層は8つの州にまたがる巨大なもので、地球最大の地下水系です。この帯水層、特に南端部分は雨水による涵養が少ないため、事実上、汲み上げればそれだけ地下水量は減少していきます。
4、北アフリカとアラビア半島の大部分の地域は「化石帯水層」に依存しています。この地域の降雨量は極端に少なく、帯水層の涵養はほとんど見込まれません。
世界の地下水資源の年間減少量はおよそ1800億立方メートルと推定されています。1トンの穀物を生産するのに約1000トンの水を必要としますから、この年間減少量は、1億8千トンの穀物の減少量に匹敵します。このように灌漑農業の大きな部分が水赤字のもとで行われています。
[ 河川の水不足] 河川流域の水危機による「環境難民」は98年には、2500万人発生しましたが、2025五年までに1億人に達すると予測されています。国連環境計画のリポートによれば、世界の主要河川の半分以上で枯渇や汚染が深刻化していて、農業用水や工業用水・飲料水など川に頼る流域住民の健康や生活が脅かされています。
世界の四大文明を育んだチグリス・ユーフラテス川、ナイル川・インダス川・黄河いずれも水不足に陥っています。すべての地域で砂漠化が進んでいて、やがて地球全体に広がって行きます。水は化石燃料と違って、代替物がありません。21世紀は、生死をかけた水をめぐる争いの時代になるでしょう。
深刻な水汚染
以上の水不足に加えて、汚染が進んでいます。人間の活動は知らず知らずのうちに危険な汚染物質を地下水に流し込んでおり、汚染物質は長く残留します。川の水が平均わずか16日で入れ替わるのに対し、地下水の平均滞留時間は1400年。河川と違ってこれらの帯水槽は非常に広大であるばかりでなく、膨大な量の水を貯えていて、浄化は不可能です。たとえば、土壌に比べて帯水槽は溶存酵素、微生物、有機物をあまり含まず、化学物質が分解されにくいからです。
水の汚染が原因で病気にかかり、死んでいく子どもたちが世界には8秒に1人の割合でいます。アフガニスタンやバングラデッシュなど途上国における病気の原因の8割は、川の水質汚染が原因だといわれています。一方、先進国は尿素を配合した化学肥料を大量に使い穀物の収穫を大幅に延ばしたのと引き換えに、土壌と地下水を汚染しました。そのため安全に飲める水がどんどん減っています。豊葦原瑞穂の国といわれる日本でさえ、安全な水が不足しています。大小さまざまなペットボトル水がスーパーに並んでいる事実の中に、それは現れています。
日本の仮想水
とはいえ「湯水のように使う」ということばあるように、日本人は水の貴重さを深くは認識していません。日本が海外から輸入している食糧を、もし日本で作ったとしたら必要になる水のことを仮想水(かそうすい)といいます。たとえば、食パン1斤に必要な水は500〜600リットル、ステーキ200グラムでは約4000リットル、これは2リットルのペットボトルで約2000本に相当します。国内で年間に使用する水の量は約890億トン、これに対し仮想水量は約640億トン。私たちは食糧やミネラルウォーターを輸入することで、世界の希少な水を大量に消費しているのです。地球上、水の総量は一定ですから、日本人が水を使えば、その分だけ多分、極貧に苦しんでいる人々の分け前が減ります。
「日本の水を日本人が使ってなぜ悪い!」という、次元を超えたところに水問題の本質はあります。食料=水を買える状態はいつまでも続くでしょうか。この意味からも決して、対岸の火事ではありません。
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