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曙光!日本人の世界観
2002年8月、(若手が変える「101人の改革案」)が朝日新聞に掲載されました。この101人は衆院当選3回以下、参院同2回以下で50歳未満の国会議員が対象。党派別では自民24人、民主45人、公明9人、自由7人、共産8人、社民5人、その他3人でした。設問のうち、ここでは次の3問のみを取り上げます。
〔6問〕憲法を改正するとしたら、どういう点ですか。(自由回答)
特筆すべきは、環境・環境権等と答えた人が14人もいることです。しかも、前問との絡みもあって回答を避けた人がいますから、それを考慮すると母集団は60人に、比率は23%に上ります。これは先に取り上げた「私たちが書く憲法前文」の投稿者たちの約30%と、ほぼ同じ傾向を示しています。選良たちは、歴史の潮流を直視し、鋭い感性でそれをすばやく確実に捉え、考察の対象に仕立て上げているようです。
〔7問〕将来、日本が目標とすべき経済成長率はどの程度がよいと思いますか。(「0〜1%」「2〜3%」「5%以上」「政治家が経済成長率の目標を定めるべきでない」から選択)
「2〜3%」の安定成長という答えが64%、「0〜1%」の低成長が14%、「5%以上」は2人だけでした。2人を除く全員が経済成長至上主義を否定しています。この流れも「私たちが書く憲法前文」の投稿者たちの考えと一致しています。そのなかでも「0〜1%」と答えた人々は、物欲中心の現文明を否定しているとさえ考えられます。若い国会議員たちは、決して拝金主義一辺倒ではありません。
〔8問〕日本が今後、モデルとすべき国はどこだと思いますか。(自由回答)
イギリス13%、スウェーデン11%、ドイツ9%とヨーロッパ各国が上位に並び、米国を挙げたのはたったの2人でした。スウェーデンはよく知られている福祉国家であって、人類のユートピア=理想郷に近い国です。また、ドイツは官民あげて環境対策に取り組んでおり、経済至上主義を捨て、安全でやさしい共生への道を歩み始めています。したがって、米国流の過酷な競争社会よりも、ヨーロッパ諸国が模索する「成熟と共生」の文明に、わが選良たちは共感を覚えていることを、この回答は明らかにしています。
歴史の鳴動
以下、日本の未来を双肩に背負う若き国会議員たちの、意識と感性ならびに、希望や苦悩を回答の中から探っていきます。今後、環境問題はますます最重要課題として浮上してくると考えます。しかしたとえば、環境関連の著書が書籍全体に占める比重は極端に低く、平積みされている話題の本とは比べようもありません。またインターネット上における比重も、出版と同じ傾向にあります。
このような状況の中にありながら、憲法改正を問う〔6問〕の中で環境問題を、彼らは23%も選んでいます。彼らの意識や感性は、明らかに進取的です。
目標成長率を問う〔7問〕では、78%の議員が0〜3%の低成長を選択しています。これは経済至上主義からの脱却、いうならば、価値観の変更を意味します。いま、事業の失敗や失業などを苦にして、40〜50歳代男性の自殺者が急増しています。この人たちは、「カネ中心」の社会のなかに埋没し、常に出世競争を強いられたばかりか、他人より1円でも多く稼げば評価され、少なければ家族を含む世間一般(本人自身の心の中での葛藤なども)から、劣等者の烙印を押されてきました。さらに彼らは、「毒入りニンジン」を人生の至宝だと教えられ、それを反芻する余裕すらないままに、ただ一途に追っかけてきました。やがて敗者であることを、彼らは思い知らされます。そして、始めて彼らが自分の意思でした決断が、人生の幕引き自殺でした。
この人たちは、「弱肉強食」の尺度で測れば、たしかに弱者であり、脱落者です。しかし、そのモノサシそのものが間違っていたなら、彼らは弱者でもなければ脱落者でもありません。「カネ」が命より上位の価値観、このような狂った社会を見なおしましょう。というのが、議員たちの感性、新しい考え方です。
というより、それはもともと日本人の細胞のひだに眠っていた「魂」ではないでしょうか。啓蟄とは、冬ごもりしていた虫が穴から出てくることで、俳句の季語は春。意識の上とはいえ、地中に潜んでいた日本人の魂が、いよいよ地表に姿を現し始めたのではと、かすかな期待が持てます。
「モデルにすべき国」を問う〔8問〕に対する回答も、根は〔7問〕と同じで、食うか食われるかの競争社会を否定し、生きる喜びにつながる「共生」への道を選択しようという価値観です。このようにみてくると、この回答はアメリカ型文明(=未来の日本)を否定しています。
テレビアニメ『ルパン三世』のなかで、「いよいよ自由の国アメリカだ」と仲間の1人が興奮した口調で語りかけるのに答えて、「カネがあればね」とルパン。このルパンの短いことばのなかに、競争社会の問題点が凝縮されています。私たち夫婦は、ニューヨーク五番街の専門店でショピングを楽しみました。まず、大きくて重たいガラス戸を押して中に入ります。またガラス戸があり、今度は軽く押すだけで店内に入れます。すると、そこには筋肉粒々、天を突く大男の黒人ガードマンが2人、銃を腰にこちらに向き無表情に立っていました。客はみんな白人ばかりでした。
これだけの事実からでも、アメリカの治安の悪さと人種差別の存在が浮かび上がります。たしかに、法制上の人種差別はないかもしれません。しかし、〔マネーというパスポート〕を持っていないために、実質上、貧乏人は高級店で買い物ができません。この点に、結果としての不平等・人種差別が現実に存在しているのです。溢れるほど自由があっても、マネーがなければ、そんな自由は絵に描いた餅に過ぎず、ルパンの短いぶっきらぼうな返事、「カネがあればね」はこのことを指しているのです。
富の93%を上位2割層が占めるなど、アメリカでは貧富の差が大きい(近い将来の日本も)ため、希望を失った人たちには恥も外聞もなく、暴力に訴えあるいは無気力に陥ります。そして殺人・強盗・レイプは日常化し、その他にも家庭内暴力や幼児虐待、さらには子どもの誘拐があとを絶ちません。
まったくの偶然でしたが、(若手が変える「101人の改革案」)の裏のページに、「子どもの誘拐 米5万8000人」の記事が掲載されていました。記事によると、ブッシュ大統領は演説し、子どもが誘拐殺害される事件が相次いでいること。昨年、子ども5万8000人余りが誘拐され、うち約100人が殺害されたことなどを明らかにしました。そして「テロとの戦いで子どもたちの安全に努めているが、我々の社会自体にも恐ろしい暴力性が存在する」と、述べました。
この事実は他人事ではありません。アメリカで起こった犯罪、たとえば家庭内暴力などは、必ず数年遅れで日本に伝播するし、また傍点で示したように、暴力を生起させる因子を含んでいる社会で多発する新しい犯罪は、法則性を持っているからです。考えてもみてください。人間の「こころ」を切り捨て、一切の価値観を「カネ」に託す文明に、混沌が生じるのは当然ですよね。合理主義一辺倒の文明は、一見進歩的に見えますが、その実は底の浅い文明です。日本の若き選良たちは、このような物質文明の負の部分を鋭く意識していて、あのような回答をしたのだと思います。
縄文時代の貝塚には幼獣の骨が少なく、幼獣を保護したことがうかがわれ、また人殺しの武器はなかったと佐原 真は指摘しています。縄文時代は、森の文化ともいわれています。その森の文化を特色づけるキーワードは、共生と循環、そして平等主義です。縄文人が平和で安定した社会を1万年以上にわたって維持しえたのは、この社会システムを持っていたことに由来します。特に西欧文化と比較したとき、この文化は光り輝きます。有限の地球の中、現文明はいずれ崩壊の危機を迎えますが、そのとき、森の文化への回帰が人類を救います。
日本の若い議員たちは、このことを意識し始めているのではないでしょうか。
この「101人の改革像」に現われた若き選良たちの理想や思想こそ、これまで筆者が訴えつづけてきた「夢」でした。したがって、筆者の夢想は全くの的外れではない(かも知れない)と思え、歓喜と満足感にいま、私は包まれています。それはたとえば、村八分から解放された村人、笑いの輪にいる転校生、暗く長いトンネルの先のまばゆい青空、このような気持ちです。歴史は社会の底の方で歴史をおし進める力が徐々に蓄積されて進展します。まだ少数ですが、日本人は歴史の鳴動を深層で捉えつつあるのではないかと、私の夢物語は懲りずにさらに続いていきます。
夢は実現するか
2002年4月の朝日新聞世論調査によると、■ 地球環境問題に大いに関心がある、ある程度関心があるが84%、■ 地球環境の状態を病気、重病と答えた割合は67%、■環境保全のために、制限された生活を受け入れるが67%でした。ここに表れている数字はたぶんに日本文化の全員参加と関わっています。それにしても危機感の高さは尋常を超えています
今後、人類が戦っていくべき難敵は環境破壊です。そこで、これまで見てきたように柔軟性、変わり身の速さを持つ一番打者として、経済力・技術力が高い上に、「みんないっしょ」の国民性および環境問題に対する意識の高さを併せ持つ四番打者として日本はその難敵に挑みます。そして、戦費の一部は国連通常分担金とPKO分担金を振り向ける旨宣言します。反対があれば、「沈み行く『宇宙船地球号』の甲板上で、分け前争いと主導権争いにのみ明け暮れるのはナンセンスではないか」と、世界に向かって問を発します。
銃こそ向けないものの敵の防御は固く、戦いは熾烈なものになります。日本の挑戦は必ず世界の同調を呼び、また良心と共鳴し合います。この連鎖の輪が大きくなって世界中に広がれば、文明の転換が正夢になるかもしれません。――そこまでいかなくても(大法螺を吹かなくても)、希望を失い、目的を持てず、生きる喜びを見つけられない無機質な日本の若者たちに、この挑戦は目覚めを促し、日本を再生させます。
以上は多分単なる「夢物語」です。しかし真の敵を見失い、刹那的利益のみを追い求める20世紀型文明はもう過去のもの。すでにカウントダウンが始まっているその文明にすがりつく人たちこそ、「叶わぬ夢」を見つづけているのです。世界の良心、ならびに各種世論調査に示される意見の最大公約数は、新文明への移行です。
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