生物の多様性

多様性とはなにか

生物の多様性は、複雑なつづれ織りのようであり、相互に依存し合う微妙なバランスの上に成り立っています。 

生物種の数は控えめに見ても1億に達すると推定され、そのうち現在までに発見され、命名されているのは約175万種です。その種と数は―、昆虫類751千、多細胞食物約248千、昆虫以外の節足動物(ダニクモなど)約123千、軟体動物5万、真菌類約46千などです。  

熱帯の森林は、世界の陸地面積の7%を占めているに過ぎませんが、そこは生物種の半分以上が生息する生物種の宝庫です。たとえば、ペルーの熱帯雨林には、1ヘクタール当り木本性の植物が300種以上生育し、また5キロメートル四方には1300種以上の蝶が生息しています。ボルネオの熱帯雨林では、15ヘクタールの区域に約700種の樹木が特定され、これは北米全体の樹木種数に匹敵します。熱帯林の中でも特に、中南米・東南アジア地域は生物種の数が非常に多く、このように生物種や固有種の多い国は「メガ・ダイバーシティ国家」と呼ばれています。Diverは多様性と訳されます。

 生物の大絶滅 

地球史の中で、これまでに生物種の大きな絶滅は5回あり、一番近いのが、恐竜の絶滅として一般によく知られている前白亜紀(6500年前)の絶滅です。 

過去5回の大絶滅の主な原因は、地殻変動や火山活動・異常気象・巨大隕石の衝突などの自然災害でしたが、進行中の大絶滅は人間活動が主な原因となって起きています。たとえば、熱帯雨林が伐採や焼畑などにより脆弱化すれば、そこに生きていた生物種は消えていきます。また、化学物質の使用や砂漠化などによって、生きる場を失った動植物も何百年もかかって創り上げた豊かで、複雑なバランスの取れた生態系もろとも消失します

化石などの調査から、自然絶滅の速度は従来、100万種につき年に1種程度であると推定されていました。ところが、近年、生息域の減少、乱獲などにより種の絶滅が急速な勢いで進んでいます。マイヤーの予測によれば、生物が地球上から消える速度は、恐竜時代には約千年に1種、16001900年には約4年に1種、1900年代前半には約1年に1種、1975年ごろには約9時間に1種、19752000年には約13分に1種です。

国連の「生態系評価報告書」によれば、現在の絶滅の速度は自然に起こる絶滅の千倍以上になるという。そして、現在進行形、6回目の大絶滅による絶滅種・絶滅危惧種の予測割合は、哺乳類38%、鳥類19%、ハチュウ類25%、魚類30%、植物種の全種14%などです。

代表選手に両生類を選び、人間活動が生物多様性に及ぼす影響の1部を次に見ていきましょう。

1つは、生息地の消滅です。たとえば、スリランカの場合、残された雨林はわずか750平方キロメートル。過去150年の間に、原生雨林の96%が失われました。

2つは、化学物質汚染です。皮膚を介して呼吸をし、水分を摂取するため薄くて浸透性の高い皮膚を持っている両生類の皮膚は、容易に農薬や化学肥料ならびに、硝酸塩を含んだ汚染物質を吸収し、壊滅的ダメージを受けます。

3つは、紫外線です。近年オゾン層に穴が開く(オゾンホール)現象が見られるようになりました。オゾン層が薄くなれば、地球に照射される紫外線量が増え、無防備の皮膚と卵をもつ両生類は危険にさらされます。

20041014日、IUCN(国際自然保護連合)は世界各地の両生類の3分の1に当たる1851種が絶滅の危機にさらされているとの調査結果を発表しました。日本ではアベサンショウウオ(京都府ほか)、イシカワガエル(沖縄県)など20種でした。従来は過剰開発による生息地の縮小が絶滅を招く主な原因とされてきましたが、感染症や気候変動などそれ以外の理由でも数が急激に減っていることが今回の調査で判明しました。

35000年前すでに両生類は生存し、3度の大量絶滅の危機を乗り越えてきました。だが、これまでの自然災害と異なる今回の環境変化の数々(化学物質・紫外線など)に、両生類は対応していけるでしょうか。両生類はまた、汚染物質の影響を受けやすく、環境悪化を敏感に感知する「炭鉱のカナリア」役といわれています。この両生類の危機は、一両生類のみに起こっている特別の事情ではありません。

生態系とヒト   

人類は太古の昔から、人類自身を含む生物多様性の中に生きてきました。この関係は、未来永劫続いていきます。生態系はまた、有用な薬を提供し、あるいは環境汚染を浄化する吸収源としての働きもします。ヒトの脳は自然環境に適応しながら進歩してきましたから、脳と自然とは鍵と鍵穴のような関係を持っています。したがって、生物多様性が織りなす不思議で、複雑かつバランスの取れた生態系の中でのみ、人類の生存は保障されます。

自然は、人間など容赦なくつぶしてしまう力を持っている反面、人間活動によってあっけなく崩壊してしまう脆弱さもまた含んでいます。野生生物の大絶滅が人類に及ぼす影響は計り知れず、他の生物が滅んでいく中で、人間のみが生き残ることは絶対にありえません。前述、生態系の評価報告書は、「現在のような自然資源の利用をいつまでも続けることはできない」と、生態系利用の在り方の抜本的な変革を求めています。

生物多様性保存の根本理由は、このような人間と生物との総体的関係であり、人口の安定・貧困の撲滅・社会的公平性の実現などを通じてのみ達成可能です。

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