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放欲の民主主義
2004年度一般会計予算政府案は歳入総額82兆1109億円、うち国債発行額36兆5900億円です。したがって、歳入に占める国債(国の借金)の割合を示す国債依存度は実に44.6%でした。この比率は先進国の中でも、おそらく群を抜いて悪い数値だと思われます。
これをサラリーマン家計に例えると、必要な年収のうち約55%のみが給料で、残り約45%は消費者金融(サラ金)に頼っているばかりか、返済額より借り増し額の方が多いので、借金残高は年々膨らんでいく状態です。この破滅型サラリーマン家計と同様に、のっぴきならない局面に立たされているのが、わが日本国の財政状態の現況です。
なぜ政府・与党は借金を重ねるのかその理由を探っていきます。前項で見た基本式に政府部門を加えると、国民所得(GDP)を求める算式は、
「国民所得」=「消費」+「投資」+「政府支出」
で示されます。算式を見れば分かるように、右辺が増えれば国民所得も増え、減れば国民所得も減ります。
突然ですが、次の問いに答えてください。@ あなたは首相です。不況脱出のためにとりうるもっとも有効な手段を述べなさい。A その理由を説明しなさい。@の答え=政府支出の増加を図る。Aの答え=右辺の「政府支出」が増えれば、「国民所得」も増える――。一国の経済は不況時には「消費」と「投資」が低迷するので、「国民所得」も減少します。この負の連鎖のよって、景気はさらに悪化し、失業者が街にあふれます。この状況から脱出するための手段として、政府は主に「政府支出」を増やすのです。
しかし、一般に不況局面では、国の財政に余裕がありません。そこで政府は国債(国の借金)を増発します。借金の増加は好ましくありませんが、一方で、国民は常に好況を希求し、生活水準を引き下げることに反対します。そこで、ホンネでは選挙を念頭に置き、表向きには国民多数の意志に逆らうのは民主主義の理念に反すると理論武装した上で、政府・与党はさらに国債を増発してきました。
このような流れの中、バブル当時政府にいて“遅れてきたケンジニアン”と揶揄されたMは、「不況は有効需要の不足によって引き起されるから、赤字財政でも恐れずに、政府支出を増やすべきだ。」というケインズ理論に帰依し、忠実に実践しました。2003年度末の国債・借入金・政府短期証券の合計額は、703兆1478億円であると財務省は発表しました。地方も200兆円程度の借金を抱えています。巨額な長期債務残高は、このようにしてあのバブルの時でさえ増え続けていたのです。
借金があれば、そこから抜け出すための方針を最優先にするのが、一般の企業や家計の責任者のあり方です。しかしながら、逆に借金を増やす政策を政府・与党は選択してきました。将来に目を向けた健全策より、景気上昇を望む国民の多数の今の、声に迎合した方が選挙に有利だからです。国民もまた、その政策を支持しました。このようにして、国民合意のもと借金残高は増えつづけたのです。
民主主義を俯瞰する
この合意をもたらしたものこそ「more and more」の欲望であり、欲望・民主主義・国債増発は通低しているのです。西村貞二はギリシャの歴史と政治について、「アテネが王政にはじまり、貴族政治・金権政治・僭主政治・民主政治をへて衆愚政治に堕落する経路は、まるで政治のひな型を見るようでありませんか」と記しています。(僭主政治とは非合法の手段で政権を獲得した独裁政治を指します)。
この一文は民主主義が最善でないことはもとより、その脆弱性・衆愚性・危険性を暗示しています。
資本主義制度の下、人びとはより多くの富を求めて競争します。その結果として、自己の利益を優先する「個人主義」、他者を蹴落とす術に長けた者のみを成功者とみなす「弱肉強食」の社会が構築されました。この世界では、人はみな、勝者も敗者も欲望の充実を追及します。したがって、自身の欲得を尺度にして投票します。その国民の声を尊重(民主主義の根本原理)した結果、わが国では未曾有の赤字国債が生じました。
親が欲望丸出しの快楽に走り、前後の見境もなく浪費したため、この東洋の島国には多額の借金が残りました。あわれ!塗炭の苦しみを、子孫は背負って行くことになります。この様相を指して西村は「衆愚政治に堕落する経路---。」と表現したのです。
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