りそな、繰り延べ税金資産

 管理人の挑戦

2003516日、都市銀行「りそな」は公的資金注入の申請をしました。申請に追い込まれた直接の原因は、監査法人による繰り延べ税金資産の否認でした。この事実をマスコミは、紙面を多く割いて報じています。しかし、その報道の内容を一般読者が、理解するのは極めて困難です。一般読者にも理解できる解説、その難問に管理者が挑戦します。うまくいったら拍手で応えてください。では。

 

税効果会計は新生児

(自己資本比率) 説明の必要上まず、自己資本比率の説明をします。日本経済新聞に掲載される決算報告の貸借対照表の要旨を見てください。左側「資産」と右側「負債および資本」の合計は同額です。その要旨を簡略して示せば図のようになります。

貸借対照表

       

 

資 産

 

負 債

資 本

 

図の「資産合計」または「負債および資本合計」に占める「資本」の割合を自己資本比率と呼びます。ちなみに「資産」とは、現金と同じ性質を持つものを指す概念です。「負債」とは、借入金と同じ性質を持つものを指す概念です。「資本」とは「資産」から「負債」を引いて求められるもので企業の純資産を意味します。したがって、「資産」は多いほど、「負債」は少ないほど「資本」つまり、純資産は大きく示されます。

自己資本比率は資本÷資産合計で求めますが、この比率は企業の安全性の指針であり、多いほどよい比率です。この比率が極端に低い場合には、その企業は危篤状態にあると判断され、存続さえ危ぶまれます。ところで、わが国銀行の自己資本比率は国際業務では8%、国内営業では4%を超えなければなりません。「りそな」は債務超過に近いといわれていますので、この比率は0~2%ぐらいと予想されます。(債務超過とは負債が資産を上回る「マイナス資本」の状態で、図では資本の金額に▲がつけられて表示されます。

(税効果会計)

一定の条件(次項で説明)が満たされれば、資産の部に「繰り延べ税金資産」として計上するとともに、同額を(自己)資本に算入する仕組みを税効果会計と呼びます。資産と資本に同額を計上するのは、複式簿記のしくみによります。(複式簿記では左側と右側に同一金額を同時に計上しなければなりません)

(繰り延べ税金資産) 【例題】A社の03年度の欠損額100億円、04年度の当期利益100億円、納税額0円でした。04年度は当期益が100億円もあるのに、納税額がないのは納得できません。原因は税法と企業会計原則との認識の違いにあります。税法では03年度の損失を04年度の利益から控除することができます。そのため、2事業年度を通算した損益は0になり納税義務は生じないのです。

04年度が負担するべきであった納税額40億円(税率40%と仮定)を免れた原因は、03年度の損失にあります。であれば、これを考慮して、03年度の決算書に反映させるべきでしょう。そのための、会計処理が税効果会計です。したがって、03年度の貸借対照表、資産の部に「繰り延べ税金資産」が、資本の部に「繰り延べ税金資本」(剰余金として表示)が載せられるのです。

以上の記述を読まれた上で、決算書を読んでいただければ、新しい発見があると思います。もし、いささかなりともお役に立てたら、管理人の挑戦も成功なのですが。

(公認会計士の役割と責任) 新日本監査法人の判断が「りそな」を倒産(公的資金の導入申請は、経営的には倒産を意味します)の危機に追い込みました。監査法人とは、公認会計士業務(主に企業の監査)を行う目的で公認会計士によって設立された法人です。従来、監査法人は企業が公表する決算書の正否について意見を述べてきました。したがって、監査法人は「正当な注意義務」に則して、監査を行ったのであれば、その意見についてのみ責任を負いました。たとえば、その企業が倒産の危機に瀕していることを知っていても、その事実について意見を述べる必要がなく、そのことで責任を取らされることもありませんでした。これは決算書については経営者が、監査意見については監査法人が責任を負うという、二重責任の原則によります。

しかし、株主など企業の利害関係者が知りたい情報の最たるものは、企業の存続可能性です。そのため、前3月期から監査法人は企業の存続可能性についても意見を表明することを求められるようになりました。

(税効果会計の絶対条件) 税効果会計は、例題で見てきたように、次期以降に利益が見込まれることが絶対条件です。「りそな」の場合、この条件が満たされなかったのです。それに加えて、監査法人の責任問題が絡まって新日本監査法人は、最後通告をせざるを得なかったものと思われます。その点、他の大手銀、みづほ・三井住友・東京三菱・UFJの利益見込みが妥当であるかどうかの判断は難題です。

利益の見込まれない税効果資本は形式的で架空の資本です。加えて、自己資本比率に占める大手銀平均の税効果資本の割合は、50%を超えています。この意味は、税効果会計が導入(税効果会計は近年、採り入れられた)されていなかったら、大手銀のすべが8%を割り込んでいる状態であることを示します。あるいは、利益の見込みが20~30%狂っても税効果資本が減額されるので、同じ状態に陥ります。かろうじて1本足で安定を保っているヤジロベーをご存知ですか。大手銀はそのヤジロベーの状態にあります。

この金融機関の危機は資本主義文明ゆえに、もたらされました。ある人が「戦争より悪いのは貧困である」と言明しました。貧困こそ社会悪の極致だというこの考え、理解できないわけではありません。しかし失業を原因とする自殺、深夜に及ぶサービス残業の常態化など、それは人の尊厳に反するように思われてなりません。豊かになった日本、もうそろそろ生き方を変えて、その先頭を日本人が走りたいものです。そうしないと地球がもたないのですから。

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