イラク戦争の是非と環境問題

アメリカの叫び

2003320日、米英軍はついにイラクに侵攻しました。まず、反戦派あるいは懐疑派アメリカ人、の声を聞いてみましょう。

1、ノーベル平和賞を昨年受賞したカーター元大統領は、9日付のニューヨークタイムス紙に寄稿し、対イラク武力行使を、「文明国の歴史の中でほとんど前例のない」誤った軍事的、外交的行為に踏み切ろうとしていると厳しく批判しました。カーター氏は戦争が正義であるための条件として@すべての非暴力的な方策が尽きた後の手段であることA戦闘員と非戦闘員が区別されることB自国が受けた被害に釣り合うことC国連が認めた法的な裏づけがあること、などを列挙しました。そして、イラク戦はどれも満たさないと述べました。

2、次は、親しく名前で呼ぶ間柄の記者とブッシュ大統領とのやり取りの一部採録です。「イラクの脅威はそれほど切迫していないと考える国がいるのはなぜか?」「世界中で何百万という人が反戦デモをしている。そういう国や人々はあなたに強く反対しているだけでなく、あなたが率いる米国を傲慢だとみている。なぜそんなことになったのか?」「フセインが攻撃してこないのに血を流す必要があるだろうか。そう考えている国民も半数いる。どう思うか?」「--−攻撃がさらにテロを呼び、反米感情を増幅し、中東を不安定にするという人がいる。彼らの方が正しいと考えるときはないか?」

3、最後に、「ひとりの父からもうひとりの父への公開質問状」と題するグリンピース・USA事務局長ジョン・パサカンタントの手紙の一部採録を示しておきましょう。あて先は「親愛なるブッシュ大統領」です。@.思いやり、謙虚さ、包容力」などのこれまでのアメリカの価値観が「支配力、尊大さ、アメリカ国益の最優先」に取って代わられるのだとしたら、これから私たちはどのように子供を育て、家庭を築いてゆけばよいかを考えます。A.アメリカによる国際法侵犯は、アメリカが信頼を寄せ、尊敬する国々に対して悪い前例を示すものです。B.イラクに親米政権を樹立することによってハリバートン(筆者注:チェイニー副大統領が以前在籍していた会社)やアメリカの石油企業に転がり込んでくる利益をあなたはどのように分配するか教えてください。----アメリカの兵士たちは石油企業の利益のために送り込まれていると言えませんか。

C.あなたは国連主導のイラクとアメリカ合衆国への兵器査察を支持しますか。アメリカ国内で起きた炭素菌事件を踏まえると、国内でも相当の量の生物兵器材料、さらに化学兵器が国際的に合意された量を遥かに上回って生産されているように思われます。D.私たちの国は創造性、一夜にして新しい産業を開拓できる力、柔軟性、自信を誇りとしている国です。ですがもう一方では、ガソリンを浪費する自動車に乗り、世界中に軍事基地を設置して、石油の供給ラインを守って、世界中から反感を買っている国でもあります。--−私たちは世界の温暖化ガスの25%を排出している4.6%の恵まれた部類に属しているにもかかわらず、世界に対し驕り高ぶった態度を示しています。E.世論の動向をうかがう側近や、顧問、コンサルタントが皆帰宅してしまった後、残されたあなたは自分に立ち返って素直に過去の過ちを認めなければなりません。その上で大統領、あなたは娘さんたちになんと話すのですか。

 

アメリカの論理・価値観・文化

上に見てきたように、この戦争は国際法と国連憲章に違反しています。ブッシュ大統領は国連決議の如何にかかわらず攻撃する。と言明していましたが、これは民主主義に反する考え方です。また、武力で主権国家を転覆し、あるいは殖民地化する行為は19世紀以前の帝国主義の手法です。アメリカは地球温暖化防止条約京都議定書から離脱したばかりか、包括的核実験禁止条約(CTBT)の批准を拒否し、弾道弾迎撃ミサイル(ABM)制限条約から脱退しました。さらに限界前核実験を開始しました。アメリカはイラクが生物・化学兵器を保有していて、国際法に反するから制裁するといいます。けれども、アメリカ人さえアメリカが違法な量の生物・化学兵器を有していると考えています。

アメリカがイラク攻撃に踏み切った理由のひとつに石油利権が絡んでいると国際社会は考えています。現に、米・共和党のルーガー上院議員の「もしフランスやロシアがフセイン政権崩壊後の石油の分け前をほしいなら、軍事行動に参加すべきだ」との主張をAFP通信は報じました。エクソンモービルを中心に、米国の石油資本が戦争を後押ししていることは周知の事実だといわれています。

「人類の歴史は束縛からの開放、あるいは不平等から平等へと進んできました。この歴史の河の流れは止まらないし、止められない絶対であり、これからも進んでいきます。奴隷、農奴、階級、肌の色、宗教、男女の差などはなくなってきたし、さらになくなっていくでしょう。」と10年前の拙著に書きました。しかし、アメリカの行動は、この人類の理想を砕き歴史を逆流させています。その理由を考えていきます。一つはアメリカの軍事力、経済力が他国をはるかに超越している点です。信長も、秀吉も、家康も、ナポレオンも、独裁政治を実行しました。彼らの辞書には「不可能」という文字はありませんでした。この権力者の誰もが陥る法則に、ブッシュ大統領も人間であるがゆえに漂着したのだと考えられます。

理由の二つ目は「文化」にあります。文化とは、その地域の独特の風土や歴史あるいは独自の伝統に根ざした人間の営み、生活の型を指します。イラク攻撃に軍事参加している国のうち、デンマークを除く米国、英国、オーストラリアの3国はいずれもイギリス文化圏に属しています。これはもちろん偶然ではなく必然です。イギリス人、チャールズ・ダーウィンの「弱肉強食」はイギリス人であるゆえに生み出された思想だと考えられています。東洋人なら「弱肉強食」を「共生」と呼んだかもしれません。アメリカ文化の核心に、この「弱肉強食」の思想が色濃く根を張っています。

日本ではアメリカ企業の進出におびえ、「はげ鷹集団」と恐れています。が、アメリカ企業にとってはごく当たり前に当たり前のことをしているに過ぎません。アメリカでは自ら勝ちつづけない限り、負け犬・落伍者に転落し、あげくの果てには全人格さえ否定されるからです。この「弱肉強食」のほか、イギリスの文化の特徴は1、自分・自国の考えは絶対に正しい。2、これに反する考えは悪である。3、であれば、悪を駆逐し、善を広める義務がある。というものです。したがって、イラク侵攻は「弱肉強食」など文化に適合しています。これがアメリカの正義です。

 

新保守主義と日本の対応

日本は「土建国家」といわれていますが、アメリカは「軍事国家」です。アメリカの国防費(01年)の世界に占める割合は36%、武器輸出(99年)の割合は実に64%です。戦争は究極の環境破壊であるとともに、武器を大量に消費します。この武器の大量消費を喜ぶ勢力がアメリカ国内に少なからずいます。これらの事実を踏まえて考えると、この侵攻は、もはや帝国主義的といわざるを得ず、イラク国民の解放という旗印を世界の多数が信じない道理です。

アメリカは自由な国、豊かな国、民主主義が満ち溢れている国、正義の国、おおらかな国でした。世界中の人々があこがれる国でした。現在でも、あのイラクの人々でさえアメリカにあこがれています。古きよきアメリカ、そこには理想の天国があると今でも、信じているからです。貧富の差はますます拡大し、マスコミさえ資本家の手中にあって、報道は実質上統制されているのが、今のアメリカです。選挙は金で決まり、税制などは金持ち優遇に徹しています。

このまま推移すれば、アメリカは二極つまり、富裕者と貧者間が対立する極相の社会に行き着きます。そのため貧者の購買力の衰えにより、経済の停滞と社会秩序の崩壊が深刻化すると考えられます。対外的にもイラク侵攻により、共感を持つ国が減少しました。アメリカ政府の懸命の努力をもってしても、アメリカ支持国は44か国、世界の20%強に過ぎません(実際には17か国?)。札束や銃のみでは、人間の心を買えないのです。

この異常ともいえるアメリカを主導しているのが新保守主義者、原理主義者たちです。原理主義とは神から「世界の悪を正す特別な使命が与えられ、自分は正義の実行者である」と信じている絶対主義です。しかし、イエスは敵をも愛しなさいと教えています。たとえイラクが無法者であったとしても、イラクでの殺戮はキリスト教の教義に反しています。

ところで、冒頭の「アメリカの叫び」で記したように、この原理主義者たちの考えが必ずしも、アメリカの総意ではありません。ニーヨークなどアメリカ各地で連日反戦デモが行われています。戦争反対の意思を発表する有名人もたくさんいます。この勇気と多様性こそアメリカ人の血液に流れている本物の心だと、祈りを込めてと考えます。この勢力によるゆり戻しに期待したいと切に思います。

過去の文明は上りつめたとき、覇権を行使し始めたときから凋落に向かうことを歴史は教えてくれます。だが、アメリカは世界のリーダーであり、日本の一番の友好国です。アメリカの崩壊は世界秩序を麻痺させます。早く原理主義の呪術から目覚めてほしいと切望してやみません。

わが小泉首相は侵攻前から、アメリカを支持すると言明してきました。安保条約があることと、朝鮮民主主義人民共和国との関係を考慮すれば最終局面に至って、苦渋の選択としてしぶしぶ理解する。というのならわからないでもありません。しかしながら、国連決議のないままのイラク侵攻を手放しで支持しました。これは国連による世界平和の維持を、国是としてきた日本外交の悪しき転換です。それはまた、被爆国、日本の立場をまったく考慮しないロボット思考です。戦後最悪の選択をした首相だと私は考えます。日本は世界に誇れる平和憲法を持っています。とりわけ憲法{前文}の理想は人類共通の理想でもあります。

さて、遅ればせながら、この理想の実現のためにも、日本はアメリカに対して

一、人類の共通財産、大気や水やその他の資源を独り占めすることはもはや許されないこと。

二、世界には尊重すべき、多数の異なった価値観があること。

三、「共生」こそが、人類永続の唯一方途であること。

この3点を真の友人として忠告すべきです。

アメリカの世界戦略、別名グローバル化か進めば、地球環境はさらに悪化します。これに勝る人類の危機はほかにありません。アメリカは世界屈指のキリスト教国、中でもブッシュ大統領は敬虔なクリスチャンだといわれています。イエスは「共生・愛」を繰り返し説いています。ブッシュさん、イエス・キリストの教えを忠実に守ってください。そして、人類史上永遠に語り継がれる救世主になりませんか。
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