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森林破壊の歴史
半身半獣の森の神フンババは梢をそびえさせるレバノン杉を、数千年の間守ってきた。だがある日、強力な青銅の手斧を持ったウルクの王ギルガメッシュがやってきて、神々が宿る聖なるレバノン杉を切り始めた。怒り狂ったフンババは、嵐のような唸り声をあげて、口から火を吹きながらギルガメッシュに襲いかかります。しかし、フンババはとうとうその頭を切られ、殺されてしまいます。この時から人類による森の破壊が始まったのです。
人類はその歴史の大部分において燃料・食料・木材・肥料など生存に必要な資源を森林から得ていました。トロイ戦争の原因はブリアモス王の息子パリスがアガメムノーン王の息子メネラーオスの妻ヘレネーと恋に落ち、トロイに駆け落ちしたことにあると、ホロメスの叙事詩に書かれています。しかし、本当の原因は森林資源を回る争いだったとも言われています。
いま、石油欲しさに他国に侵略している(と噂されている)大国がありますが、昔日の森林は今日の石油・石炭・鉄・銅あるいはウランなど以上に不可欠な資源でした。トロイ戦争の原因が、森林資源を巡るトラブルであったとしても、時代背景を考慮すれば、なんら不思議ではありません。
2000年、東京・横浜で「四大文明展」が催されました。“文明の前に森があり、文明の後に砂漠が残る”といわれていますが、その四大文明のいずれも森(今日の資源)の消滅とともに崩壊しました。このようにすべての文明は森を利用して栄え、森の消滅とともに亡びたのです。
森林破壊の現状
8000年前、人間が初めて本格的な開墾を始めたとき、地球の陸地面積の約40%に当たる60億ヘクタール以上が森林で覆われていました。しかしいまでは、地球のところどころに残存する自然林の総面積は、36億ヘクタール程度に過ぎません。
現在、森林消失の90%以上が熱帯で起きています。1990年から2000年までの10年間に、熱帯地域の天然林は年平均1420万ヘクタール減少(日本の本州面積の約3分の2の面積)したと推測されています。減少の主な原因は次の3つに分けられます。
1は、焼畑耕作や燃料消費です。世界で約30億の人々が、暖房や調理用の燃料を薪炭に頼っています。
2は、 森林以外の用途、特に、放牧地・農地への転用です。たとえば輸出用牛肉生産のために中南米では、森林が牧場に変えられ、また飼料用トウモロコシやキャッサバ、あるいはコーヒー・ココア・茶など商品作物の栽培のために、途上国では森林が潰されてきました。
3は、次に見られるような 不適切な商業伐採
です。
★ クリアカット ロシア極東地方はロシアの面積の40パーセントを占め、その45パーセントが森林に覆われ、この面積だけで日本の七倍を超えます。この地域での伐採方法は区域の木をすべて切るクリアカット(皆伐)です。クリアカットは、利用しない樹種や若い木・細い木をすべてなぎ倒します。最も簡単、しかも効率のよい方法だからです。資源を無駄にしているほか、生態系を損ねているのでクリアカットは「森を殺す」といわれています。豊かな元の森林が再生するには150〜200年もかかります。あるいは再生しないで草しか生えない沼地になるかもしれません。日本は、その木を輸入しています。
★ グレートベア温帯雨林 温帯に属しながら熱帯林並みに降雨量が多い地域を、グレートベア温帯雨林地域と呼びます。ここは哺乳類や鳥類の宝庫で、地球上に残る温帯雨林の4分の1を占めています。渓谷には、樹齢1500年を超すベイスギや高さ100メートル、直径6メートルのベイマツなどの原生林があります。そのグレートベアの木がカナダで切られ、約半分が米国へ、25パーセントが日本へ輸出されています。
★ パプアニューギニア パプアニューギニアには世界で3番目に広大な熱帯雨林の原生林が広がり、そこには美しい極楽鳥など、およそ1600種類の鳥類や3000種の植物が存在するといわれています。しかしその原生林で現在、違法伐採や破壊的伐採による深刻な破壊が進んでいます。すでに原初存在したうちの60%が失われました。違法で破壊的な伐採を行う企業は、主にマレーシアなどから進出する多国籍企業です。日本は世界で2番目に多くこの木を輸入しています。
★タスマニア 世界一背が高くなる広葉樹、セイタカユーカリの成熟した森がオーストラリア大陸の東南に浮かぶタスマニア島にあります。樹齢400年に達する古木の場合、高さ80mを超えるものも多く、林床はコケに覆われています。この森が皆伐の対象になっており、元の面積13%程度しか残っていません。伐採された木材は、主に木材チップに加工され、その9割.が日本に輸出されています。
日本は、国土の67%が森林地帯で、世界第2の森林国です。それは、江戸時代に幕府直轄の天領で伐採が禁止されたり、里山が「鎮守の森」として庶民によって守られてきた成果でした。ところが、日本はいま世界一の木材輸入国になっています。そして、結果として森林破壊に手を貸しています。たとえば、熱帯林の土壌は表層を除いて痩せているため、一度伐採されると、生成は難しいといわれています。木材輸入について、手段がないわけではありません。タスマニアの場合、「原生林を破壊しないで生産したチップを購入したい」と、伐採企業に要求することで問題の大部分は解決するといわれています。有限性への深い認識が求められます。
森林の効用
人の脳や心臓は、植物がつくる炭水化物をエネルギー源にしています。植物がつくる炭水化物とビタミンを食べて、動物はみな生きています。森林は、二酸化炭素を吸収・貯蔵し、生物多様性と国土の保全・水源の涵養・水質の浄化等人間の生存に不可欠な様々な機能を持っています。世界の野生生物の約半数が熱帯林には生息するといわれ、そこは遺伝子資源の宝庫でもあります。森林面積の消失により、熱帯雨林の多くの野生生物種が絶滅の危機に瀕しています。
以下、森の働きのうち、重要な一部を簡単に見ていきましょう。
●二酸化炭素の吸収 木の重量の半分は二酸化炭素、したがって木は二酸化炭素の缶詰といわれています。木が吸収する二酸化炭素の量は木の幹や枝葉の質量にほぼ等しく、熱帯雨林は1年間に1へクタールで100トン、温帯林は同60トン、寒帯林は同21トン吸収します。森林・雑木林を1ヘクタール伐採すると、二酸化炭素の年間吸収量が60トン減少し、逆に葉や幹・枝が分解されるので二酸化炭素は600トン放出されます。
●薬用 私たちが買う薬の4分の1以上は、植物から得たものです。たとえば、多くの抗生物質、鎮痛剤・利尿剤・鎮静剤などさまざまな薬があります。そのほか植物から作られる薬は、心臓病や小児血病・リンパ系のガン・緑内障の病気にも使われています。
●保水 森林には水を蓄える働きがあります。森林土壌は非常に孔隔(大小さまざまのすき間)に富んでいて、地表に届いた水のほとんどを一時貯留します。多目的ダムのダム湖の容量とその流域の租孔隔量とを比較した試みがありますが、それによると粗孔隔量はダム湖の実に19倍の容量でした。森林を破壊することは、この緑のダムを破壊するに等しい愚かな行為です。
●気候の安定 森林の植物は水を蒸散し、林地面は蒸発することによって、地表付近の気温や地温の異常な上昇を防いでいます。森林が伐採されるとその地域の気候が変わり、たとえば、熱帯林を失うと地球表面の反射率が増え、熱帯全域の対流・風のパターン・降雨量等のかく乱が生じます。
●海の幸 山に木を植えると腐葉土が培養され、それはプランクトンを増やし、海を豊かにします。
●水の浄化 林床に到着した土壌水はカビやバクテリアなどの土壌微生物やミミズ、ヤスデなどによって様々な物質が取り去られます(植物は根から土壌水中に含まれる物質を養分として吸収します)。このようにして土壌水は浄化されます。
●災害の防止 森林は土石流災害を緩和するほか、地すべり・なだれの防止にも役に立っています。
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