大気汚染 2-1正体

【あらすじ】

俯瞰(ふかん)とは、天空から神の目で地球を見下ろすこと。つまり、広い視野を欠き、地平(ちへい)でうごめき、自国の利益のみを追求する短絡的(たんらくてき)考え方に対して、総体的・客観的(きゃくかんてき)立場に立って思考を始めることです。

カラスが鳴かない日があったとしても、マスコミに経済記事が載らない日はなく、とくにうれしいニュースには、政府関係者はもとよりほとんどの国民が喜びをあらわします。

しかし、(よご)れた大気や汚染(おせん)された水・(どく)を含んだ食品などの中で私たちは生活しています。「うれしい」ニュースの裏には、このような「うれしくない」事実がかくされていることを認めたうえで、新しい考え方を築いていくのがフカンの思想です。

汚染物質

 地球を取り巻いている約500kmの厚さの空気の層を、大気といいます。全体の約78%が窒素(ちっそ)21%が酸素(さんそ)、ほか二酸化炭素(にさんかたんそ)などで大気はできています。火星や木星などほかの惑星(わくせい)にも大気はありますが、人間がなにもつけずに呼吸できる星は、酸素の多い地球だけです。

火山噴火(ふんか)などの自然災害によるのではなく、人間の経済・社会活動に基づく物質の燃焼などの影響で大気が汚染されることを大気(たいき)汚染(おせん)といいます。大気汚染は、自然界の物やエネルギーの流れ、つまり地球システムをみだし、さまざまな悪影響を及ぼします。

取り急ぎ、大気汚染物質の中の残留性(ざんりゅうせい)有機(ゆうき)汚染(おせん)物質(ぶっしつ)(POPs)を通してその悪影響の一端を見ていきましょう。POPsとは、潜行性(せんこうせい)の有機化合物の一グループで、@ どれも毒性があること、A 食物連鎖のなかで濃縮(のうしゅく)されやすいこと、B 環境中で分解しにくいこと、C その発生源から遠く離れた場所まで移動しやすいこと、という4つの共通の特性を持っています。

POPsは、生きている有機体の脂肪組織に親和性(しんわせい)(ある物質が他の物質とたやすく結合する性質・傾向)を持つため、動物も人間も主に取り入れる食物からこれらの毒物を体内にためていきます。したがって、食物(しょくもつ)連鎖(れんさ)の各段階でそれ以前の毒性が吸収され、汚染に追加されて影響が何倍にもなってためられていくのです。

POPsは生命世界の網の目にまで侵入し、半永久的(はんえいきゅうてき)にそこに居座(いすわ)りつづけ、直接にあるいは食物連鎖を通して人体に悪影響をもたらすのです。

環境省編『平成16年版環境白書』の「大気環境の現状」および他の資料も参照して、主な汚染物質をつぎにかかげておきましょう。

1酸性(さんせい)()……主として化石燃料の燃焼により生ずる硫酸や硝酸がとけた酸性の強い雨。       

2(こう)化学(かがく)オキシダント…工場、自動車から排出される窒素酸化物や揮発性有機化合物が太陽光線の照射を受けて光化学反応により二次的に生成されるオゾンなどの呼び名。

3窒素(ちっそ)酸化物(さんかぶつ)……発電所や工場のボイラー、及び自動車のエンジンなど高温燃焼の際に空気中の窒素が酸素と結合して発生する。主として一酸化窒素と二酸化窒素の形で大気中に存在する。

4粒子状(りゅうしじょう)物質(ぶっしつ)(浮遊粒子状物質等)・…工場等の事業活動や自動車の走行に伴い発生する浮遊(ふゆう)粉塵(ふんじん)、エアロゾルのうち粒径が10ミクロン以下のもの。

5硫黄(いおう)酸化物(さんかぶつ)等……工場や火力発電所で石炭・重油を燃焼する際、その燃料中の硫黄分。二酸化硫黄・三酸化硫黄・硫酸ミストを含む硫黄酸化物の呼び名。 

6一酸化炭素(いっさんかたんそ)-------炭素化合物の不完全燃焼等により発生し、温室効果ガスである大気中のメタンの寿命を長くする。

7有害(ゆうがい)大気(たいき)汚染(おせん)物質(ぶっしつ)・…大気中に微量に存在する気体状のエアロゾルまたは粒子状の有害な汚染物質

 健康被害 

地球のすみずみに拡散(かくさん)し、人間を含む動物の体内や植物にも大気汚染物質は居場所(いばしょ)を作っています。成人は1日およそ20立方メートル、ドラム缶にして百本分もの空気を吸っています。その空気に毒が入っていたら!あるいはその濃度が限界を超えたら?間違いなく健康に害を及ぼします。いま、いん頭がんなどの循環器(じゅんかんき)(けい)がんはもとより、ぜんそく・アトピー性皮膚炎・花粉症などが増加していますが、大気の汚れと無縁ではないでしょう。

このような状況を「われわれは化学物質のスープの中で暮らし、息をしている」と見事にいいあてた人がいますが、このたとえは大気や水・土壌を含む全地球が汚染されている現状を、よく語りつくしています。

2001年初頭、国連人権委員会は「汚染から解放された生活は基本的人権である」と宣言(せんげん)しました。この宣言に当てはめれば、われわれ日本の人権は制約されていることになります。

つぎにその化学物質のスープが、人体に及ぼす健康被害の一端を見ていきましょう。

 

光化学オキシダント: 高濃度では眼やのどへのしげきや呼吸器へ影響を及ぼし、農作物などへも影響を与える。

ディーゼル排気粒子: 発がん性・気管支ぜんそく・花粉症などの影響。

一酸化炭素: 血液中のヘモグロビンと結合して酸素(さんそ)運搬(うんぱん)機能に害を与える。

二酸化窒素: 低い濃度の場合、せきやたんが出やすくなる。高い濃度の場合、数時間のうちに鼻やのど、さらに胸が痛み、呼吸困難になることもある。

浮遊粒子状物質: 人の気道や(はい)(ちん)(ちゃく)し、呼吸疾患の増加を引き起こす恐れがある。

浮遊粉(じん): 10ミクロン以下のものは肺の奥まで吸収される。体への影響は、じん肺・気管支炎・肺水腫・ぜんそくなど直接的なものと、くる病がある。

化学物質(POPs): がん・循環器疾患・内分泌かくらん・精神系疾患・知覚障害・骨粗しよう症・生殖機能障害。

ダイオキシン: 皮膚障害・内臓障害・発がん性・(さい)奇形性(きけいせい)など多様かつ強力なものである。

 大気中微小粒子状物質、ディーゼル排気粒子: ディーゼル粒子(DPE)の中で直径が2.5ミクロン以下の微粒子(PM2.5)が死亡率の増加や呼吸器疾患などに関連することが指摘され、健康への影響が新たな問題となってきている。

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