温暖化 3−2氷床、氷河、エドマの崩壊
【あらすじ】
1991年秋、アルプス南西部で男性のミイラが発見されました。およそ5000年前に氷に閉ざされたのが、溶けたことで姿を現したものと考えられています。このアイスマンは、地球温暖化の“死証人”といえるでしょう。
富士山には永久凍土がありますが、このまま温暖化が進むとそれは消え、富士山は“緑の山”に変容するでしょう。
わずか4人でテント生活を送りながら、南極の氷の調査を進めるBASの科学者たちは、ヤジロベーみたいな安定を保っているに過ぎない地球の現状に、危機感を持っています。
ニューヨークの大雪、ロシアの寒波、新潟の豪雪など06年は、異常気象が続きました。今後、「温暖化」ということばは「温寒化」と呼んでいくべきです。
大崩壊、南極棚氷
地球上の氷の99%は氷床と氷河で占められていて、南極には2403立方キロ、グリーンランドには260立方キロの氷があり、うち90%が南極にあります。南極大陸の面積は、日本の約34倍1248平方メートルで、97%以上が氷におおわれており、厚さの平均は1900メートル、高いところでは3500メートルもあります。
南極の氷は陸の上にある「氷床」、氷床が海上に突き出した棚氷、氷床や棚氷が壊れて海に流れだした「氷山」の状態で存在します。一般に四国と九州を合わせた広さに相当する5万平方メートル以上の氷体を、氷床と呼びます。氷床の表面には雪が2mくらい、その下にはフィルンと呼ばれるザラメ状の雪が50〜100m積もっており、それ以下がかたい固まった氷になっています。氷雪の圧力で氷床はゆっくり海へ移動しますが、海まで移動した厚さ200m以上のものを棚氷と呼びます。代表的なロス棚氷はフランスほどの広さ53万平方キロメートルもあります。
「ランセルB」と呼ばれる棚氷が驚くような速さで崩壊したと英国南極観測隊(BAS)は発表しました。この「ランセルB」は厚さ約200メートル、面積約3250平方キロメートル、体積5000億トンでした。BASによると、過去半世紀の間に、南極半島は地球温暖化の平均値よりかなり速いペースで約2.5 ℃暖かくなっています。
南極の氷は南極低層水と呼ばれる冷たい海流を生み出し、世界の海を冷やしてしています。ところが、最近の調査で南極大陸の西側の氷床は、必ずしも安定したものではないことが分かってきました。もし西南極の氷床が全部崩壊すると、世界の海面は5メートルも上昇することになります。
また氷雪は大量の太陽エネルギーを宇宙へ反射し、地球の温度上昇をおさえるのに役立っているのですが、もし溶けだすと、熱を反射しない地表ならびに水面が太陽エネルギーにさらされるので、さらに温暖化が進み、溶ける速度も加速されます。
後退する氷河
★ ヒマラヤ―
ヒマラヤ最大の氷河湖ツォロルパは、地球温暖化が仕掛けた「ヒマラヤの時限爆弾」と呼ばれ、現地では決壊の恐怖におののいています。世界最高峰の登山ルートにあるクンブ氷河の厚さが平均して1978―95年には、年間約0.7m、1995―99年には年約2mの速さで薄くなっており、最近になって縮小幅は加速しています
国際氷雪委員会は、現在のペースで氷が溶け続ければ、2035年にはヒマラヤの氷河は溶けてなくなってしまう可能性もあると予測しています。
★ アルプス―
スイスのモルテラチュ氷河は、1900年から50年間で約700m、60〜70年の10年間では約300m後退しました。記録によると、1850年から約2キロ、最近の3年間では年平均で約20m短くなっています。アルプス氷河の全体は1850年以降、氷河面積で35〜40%、体積で50%が消えていますが、そのうち、1970年から80年までの10年間だけで10〜20%少なくなっています。
チューリッヒ大学のハーバリー教授は「最近の融解速度は人間活動による温暖化が地表に与えるエネルギーの量に等しい。つまり人間が起こした温暖化の分だけ、減っており、それは加速されている」と述べました。
★ 南米―
南米の南端パタゴニア地方にある世界有数の氷河が急速に後退していることが、北海道大学低温科学研究所の調査で分かりました。うち、ウプサラ氷河の末端は20年で5キロ後退し、氷の厚さは最近3年間だけで30mも薄くなっていました。この後退速度は、アルプス氷河の後退速度の約10倍にあたり、世界最速のペースで縮小しています。なお、北大低温科学研究所によって得られた資料は、地球温暖化による海面上昇を予測する重要なデータだといわれています。
★ グリーンランド ―
毎年510億立方メートルの氷河が溶けています。この量はビワコの容積の1.9倍に相当する莫大な量です。
★ 永久凍土の溶解―
地球温暖化が今のペースで進めば、2100年には、北極圏に広がる永久凍土(夏をはさんで二冬以上、凍結している地表土壌)の面積が10分の1程度に減少し、生態系や人間生活に大きな影響が出るとのシミュレーション結果を、米大気研究センター(NCAR)などのグループが06年2月6日までにまとめました。「凍土が溶けると土の中に固定されていた二酸化炭素が大気中に放出されるなどして、温暖化をさらに悪化させるという悪循環を招く危険がある」と警告しています。
北極海の氷におおわれている面積はアメリカとほぼ同じ広さがあり、1978年以降は、溶けたために毎年、平均3万4300平方キロ失われています。問題はしかし、面積が減る以上に速く氷が薄くなっている点にあります。つまり1958年から76年にかけて、平均の氷厚は3.1mだったのが、1990年代半ばには約40%減って1.8mになっているからです。