温暖化 3-3サンゴ生態系が消える日
【あらすじ】
5億年の歴史を持つサンゴ礁は、海岸を波からも守ってくれる自然の恵みです。サンゴ礁はまた、生物種の宝庫であって魚などの食品、貴重な薬品を提供します。そのサンゴ礁が絶滅の危機にさらされています。
温暖化・森林破壊・開発・科学肥料の使用・乱獲などがその元凶でした。このように私たちは、自分で自分の生きる基盤をこわし続けているのです。
サンゴとサンゴ礁
樹木のように枝分かれしているものがあり、一見、サンゴは植物にみえます。しかし、イソギンチャクやクラゲの仲間で、サンゴは刺胞動物に分類され、口が1つだけ開いた袋状の体を持ち、刺胞という他の動物を捕らえる毒針が口の周りの触手に入っています。その触手でサンゴは動物プランクトンを捕らえ、口から体内に取り込み、消化して栄養をとります。
サンゴはまた、小さな褐虫藻(単細胞藻類)をたくさん体内に住まわせて共生
(異種の生物が助け合って生きていくこと)し、サンゴ生態系を作っています。
動物の1匹1匹、または群体の1つ1つを「サンゴ」といい、その「サンゴ」と「石灰分を分泌する生物」の遺骸が、厚く堆積してできたものを「サンゴ礁」呼びます。ですから「サンゴ」は生物を、「サンゴ礁」は地形を指します。郡体の骨格の形は、枝状・塊状・テーブル状など、生息場所の環境に応じてさまざまです。
サンゴ礁の地形は、陸地とサンゴ礁とが接した裾礁、陸地とサンゴ礁の間に浅い海を持つ堡礁、サンゴ礁だけがリンク状につながった環礁の3つのタイプに分けられます。サンゴ礁の浜辺には板状の岩石が海岸線と平行に列を作っていますが、これらはビーチロックという海岸砂岩で、沖縄では板千瀬と呼んでいます。ビーチロックは、海岸を波から守ってくれる自然の防波堤であり、世界の沿岸のおよそ6分の1はサンゴ礁に守られています。したがって、もし礁が崩壊し、それに海面上昇が加わると、熱帯と温帯の多くの沿岸における暴風雨の被害はいちじるしく増大し、マングローブ林の生態系の崩壊も加速的に進むと考えられています。
礁の生命群系は海岸のわずか0.3%を占めるに過ぎません。しかしそこは地球上で熱帯雨林に次いで2番目に豊かな生物種の宝庫であり、これまでに確認された海洋生物種の4種に1種、海洋魚類の少なくても65%が生息しています。サンゴ礁に生息する魚類は世界の漁獲量の約10%を占め、途上国にあっては25%にのぼると推定されていて、そこからはまた、独特の薬品が大量に生まれる可能性があると期待されています。
白化現象とはなにか
白い砂浜に、“金銀サンゴ”と呼ばれる美しいサンゴの群生、魚類やエビ・貝・繁茂する海藻類、そのなかを出入りする原色の小魚たち。このファンタジーの世界こそ、日本人が抱くサンゴの海です。しかし、記録映像『無言の番人〜サンゴ礁と温暖化〜』の海は、雪景色とも見まがう白一色の世界でした。
実は、サンゴの色は「共生藻類の色」なのです。ストレスに対してサンゴは非常に弱く、異変があるとその組織内に共生する藻類を追い出します。すると、サンゴ本来の色にもどりますが、これが白化と呼ばれる現象です。白化が長引き、共生藻が戻らなければ、共生藻から栄養分が得られなくなりサンゴは死滅します。住家を失った生物も去り、光あふれるサンゴ礁はガレキの海に変わります。この光景こそが、映像で見た白一色の世界でした。
白化はおおよそつぎの原因により引き起こされます。
@ 海水温の上昇および低水温・強い光・紫外線・低い塩分などに反応してサンゴはストレスを起こします。特に、夏場の海水温度がおよそ28度を超えると、サンゴは藻類を追い出します。
Aサンゴ礁がいま突然ひよわになった原因は、気温の変化の大きさではなく、気温の変化の「速さ」にあると考えられています。その速度にサンゴ礁は、すぐには反応できません。
B 石垣島では、20年以上にわたり、土地改良事業や大規模な土地改変が続き、丘は削られ、谷は埋められ、主に畑地が増やされました。その結果、降雨のたびに大量の化学肥料が表土とともにサンゴ礁に流れ込み、サンゴを傷めています。
また農業廃水に含まれる窒素とリンは藻類に栄養分を与えるため、それを起因にいま、世界中の沿岸水域で藻類の大量増殖がひんぱんに起きるようになっています。増殖した藻類は水中の酸素を減少させ「死の海域」を作り出し、さらにサンゴ礁の上をただよって日光をさえぎり、サンゴを直接追い出します。
C 森林の伐採による磯焼けやダム建設による海への栄養供給のストップ、食物連鎖上位種の魚の乱獲など。
地球システムに異変
非常に複雑な生態系の中に生命体が密集する場所、そこがサンゴ礁です。サンゴ礁は、世界最古の生態系で約5億年の歴史を持っていますが、すでに見てきたようにサンゴはストレスに弱く、サンゴ礁の自然は簡単に壊れてしまうガラスの城なのです。
1990年代後半には、サンゴ生息域の大部分で海面温度が過去最高を記録しました。そのため、アフリカ東岸からインド南部にいたるインド洋の広大な海域では、サンゴの70%が死滅したと推定されています。地球の平均気温は、1950年の13.8℃から98年の14.6℃に上昇し、少なくとも過去1200年間でもっとも高い水準に達しています。
今後もさらに温暖化は進み、地球の気温は2100年までに1℃から3.5℃に上昇すると多数の気象学者は予想しています。すると非常に限られた温度域の中でしか生きられないサンゴにとって、これはきびしい状態です。
アメリカ・フロリダ州にミニ地球「バイオスフィアU」があります。そこでのシミュレーションによると、50年後、ほとんどのサンゴは死滅します。サンゴの消滅は海中の生態系、海岸の生態系にただならぬ変化をもたらしますから、この変化が引き金となって悪循環におちいるようなことがあれば、地球システムそのものが崩壊の危険性に直面します。
白化現象は、実は人類の未来を暗示しているかもしれません。