アレルギー疾患 3人に1

 【あらすじ】

冷暖房(れいだんぼう)のよくきいた近代マンションに住み、パソコンやケイタイを使いながら私たちは(よご)れた空気・水・食料を()っています。そして、精神的にはいつも追いかけられ、いらいらしています。この生活(せいかつ)慣習(かんしゅう)がアトピー性皮膚炎(ひふえん)やぜんそく・花粉症(かふんしょう)・じんましんなどの「アレルギー疾患」やガンなどを増やしているのです。

また、「健康のためなら死んでもいい」という超清潔(ちょうせいけつ)志向(しこう)も、アレルギー疾患を増やしているようです。  

 

国民病、アレルギー疾患

厚生労働省が19921996年に行った「アレルギー疾患(しっかん)疫学(えきがく)に関する研究」によると、何らかのアレルギー疾患を持っている人は乳幼児28.3%、小中学生32.6%、成人30.6%と、およそ国民3人に1人がアレルギー疾患を持っていることが判明(はんめい)しています。今や、アレルギー疾患は国民病(こくみんびょう)といえるでしょう。

このうちアトピー性皮膚炎の症状の特徴を要約するとかゆみを伴う発疹(はっしん)がカオやクビ、ヒジやヒザのくぼみに繰り返し現れ、ひどくなると全身に広がります。この症状に悩む患者(かんじゃ)1人、大手メーカー営業マンBさんは、「放っておくと、かゆみは背中にまで広がり、ひっかき傷から血がにじむほどになります。その痛みとかゆみで、あおむけに寝られなくなり、123時間しか眠れないという日々が2年間も続いて-----------。」とつらい日々を語りました。

また、24歳のOL、Kさんも「----かくと、(うす)い皮がボロボロはがれ落ち、ジクジク液が()み出して、えりやそでが黄色くなるため、外出するのも()ずかしく、会社はやむなく長期(ちょうき)欠勤(けっきん)しました。」と絶望的な状況を記しています。

ネツ・セキ・ハナ・カユミ・イタミみなどの症状は、たとえ軽くても大変不愉快(ふゆかい)です。ましてや、その症状は持続するので、患者は失意(しつい)(ふち)に立たされ、つらく、暗い希望の持てない生涯(しょうがい)を背負っていくことになります。しつこい疾患に悩むある青年は、「死を覚悟した」と語りました。死に至らないまでも、彼らにとってアトピー性皮膚炎(アレルギー疾患)は、悪魔(あくま)の使者なのです。

 アトピー性皮膚炎の原因  

()学会(がくかい)など主流、あるいは多数説による原因は次のようなものです。

@ アトピー体質および肌の性質 A 悪化因子――食物発汗、環境因子(ダニ・ハウスダストなど)、細菌(さいきん)(しん)(きん)接触(せっしょく)抗原(こうげん)(化粧品・装身具・ゴム・布など)、ストレスなど。

このうち@ 先天的(せんてんてき)なもので、遺伝子(いでんし)(体質)原因説です。A は広義の環境因子です。しがって治療は当然ながら、これらの緩和(かんわ)または除去(じょきょ)に注がれます。日本皮膚学会によれば「アトピー性皮膚炎とは(ぞう)()寛解(かんかい)、を繰り返す、掻痒(そうよう)のあるしっしんを主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因(そいん)を持つ」と定義し、「アトピー素因とは家族暦・既往歴(きおうれき)に気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、あるいは複数の疾患がある(省略)---」とされています。

ところが、この説に異議を(とな)える人達が現れました。彼らの考えを次に見ていきましょう。遺伝子は両親から正しく引き継がれるが、Aの家族は全員がアトピー性素因を持っていないのに、下の子どもだけがアトピー性皮膚炎にかかっています。このように、どんな病気にも「原因体質説」は通用しますから、たとえば「カゼを引くのは体質が原因だ」ということにもなります。

 実は30歳代までの私は、「カゼひき」でした。毎年秋風とともにそれは訪れ、春先には一時去り、梅雨(つゆ)(ざむ)でぶり返し、夏は夏カゼに見舞われていました。でも、いまは1冬に1回、風邪気味(かぜぎみ)になる程度です。この私の経験に照らしても「原因体質説」は単なる犯人探しであって、真因(しんいん)を説明していません。

また、昔の方が環境ははるかに悪かったにもかかわらず、アトピー性患者はいませんでした。多数説があげるアトピー性皮膚炎の原因、ダニやハウスダストはその引き金に過ぎません。人体は環境変化に対応し、臨戦(りんせん)体制(たいせい)(いつでも戦える状態)(ととの)え異物がいつ来るかと待ちかまえます。そして、肌の弱い部分がダニやハウスダストなどアレルゲンに()れると、ヒスタミンを放出して戦います。そのヒスタミンの放出が、しっしんを起こすのです。本当の原因は、すでに取り込んでしまった異物にあります。

 

普通の大人は、1日およそ20立方メートル、ドラム缶100本分もの空気を吸い、112.5リットルの水を必要としています。人体の65%は水です。生物は食物網(しょくもつもう)を通して環境(かんきょう)汚染(おせん)(空気や水・土壌)由来(ゆらい)の食物を取り込みます。そして当然、生態(せいたい)(けい)の上位にある人間はその食料を食べています。その食料が人体に影響しないはずはありません。

ですから、真因は悪い生活環境にあり、その真因の先には汚染された食物・水・空気の摂取(せっしゅ)があります。アレルギー性疾患はもとより、ガンなどが増えている根底(こんてい)には、この環境汚染が横たわっているのです。 

真犯人、真因

たとえば、冷暖房のよく利く機密性(きみつせい)の高いマンションは、ダニやカビにとってもきわめて快適で繁殖(はんしょく)しやすい場所です。そのダニのシガイやカビなどに囲まれる生活環境に加えて、大気(たいき)汚染(おせん)・環境ホルモンなどにさらされる生活を長く続ければ、大人がアレルギー性疾患を発症(はっしょう)してもなんら不思議ではありません。というより、必然であるとさえいえるのではないでしょうか。

 

また東京医科歯科大学教授藤田紘一郎は著書『清潔は病気だ』に、「アトピー性皮膚炎、気管支(きかんし)ぜんそく、アレルギー性鼻炎(びえん)といった、いわゆるアレルギー性疾患が日本に出現したのは、たかだか30年前のことだ。一方、日本人が現在のような『超清潔』な環境の中で生活しだしたのも、最近30年というわずかな期間に過ぎない」。と書き、この超清潔志向がアレルギー性疾患増加の原因に違いないと述べています。

人体には2兆個以上の細菌が常住(じょうじゅう)し、彼らと共に人は生を(まっと)うしているにもかかわらず、現代化学を過信してしまい、とどのつまりには、その共生菌を異物とみなす奇妙(きみょう)な考えにまで、私たちの超清潔志向は高まりました。そして「健康のためなら死んでもいい」という不思議の世界を私たちの文明は作り出してしまいました。

主役(しゅやく)「悪しき生活環境」と脇役(わきやく)「超清潔志向」の絡み(からみ)生み、アトピー性皮膚炎をもたらした真犯人は、ズバリ「現代文明」でした。

アトピーとはギリシャ語で「奇妙」という意味ですが、「奇妙」なのは皮膚炎を生み出した「現代文明」の方ではないでしょうか。


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