平和主義 日本人の心に住みついている

 

【あらすじ】

(1)憲法(けんぽう)を改正するなら、環境・環境権(かんきょうけん)を新設する。

(2)こらからの日本の経済(けいざい)成長率(せいちょうりつ)23%が望ましい。

(3)今後、日本がモデルとすべき国は、イギリス・スェーデン・ドイツ。

選挙向けでなく、党のしめつけもないアンケートへの若手国会議員たちの回答ですから、ホンネだと思われます。新聞社の一般向けアンケートにも、このような傾向が表れています。

 これは本サイトで訴え続けてきた考えに非常に近く、どうやら私の「ひとりよがり」のみではないようです。

希望の光!日本人の考え

20028月、(若手が変える「101人の改革案」)が朝日新聞に掲載されました。この101人は衆院当選3回以下、参院同2回以下で50歳未満の国会議員が対象。党派別では自民24人、民主45人、公明9人、自由7人、共産8人、社民5人、その他3人でした。

以下、日本の未来を背負っていく若き国会議員たちの、意識と感性(かんせい)ならびに、希望や苦悩(くのう)を回答の中から探り、その延長(えんちょう)(せん)に立って日本の進むべき道を考えていきます。

 

  憲法を改正するとしたら、どういう点ですか。(自由回答)

特筆すべきことは、環境・環境権等と答えた人の比率が23%に上ることです。鋭い感性で歴史の潮流(ちょうりゅう)すばやく確実に捉えています。彼らの意識や感性は、明らかに進取的(しんしゅてき)(進んだ考え)です。

 

将来、日本が目標とすべき経済成長率はどの程度がよいと思いますか。(「01%」「23%」「5%以上」「政治家が経済成長率の目標を定めるべきでない」から選択)

23%」の安定成長という答えが64%、「01%」の低成長が14%、「5%以上」は2人だけでした。2人を除く全員がマネー中心のあり方を否定しています。そのなかでも「01%」と答えた人々は、そのような現文明に「否」を突きつけているとさえ考えられます。若い国会議員たちは、決してマネー中心主義一辺倒(いっぺんとう)ではありません。

いま、事業の失敗や失業などを苦にして、4050代男性の自殺者が急増しています。この人たちは、「カネ中心」の社会のなかで常に出世(しゅっせ)競争(きょうそう)を強いられたばかりか、他人より1円でも多くかせげば評価され、少なければ家族を含む世間一般から、劣等者(れっとうしゃ)烙印(らくいん)を押されてきました。

さらに彼らは、マネーこそ人生の宝だと教えられ、それを反芻(はんすう)する余裕すらないままに、ただ一途に追っかけてきました。やがて彼らは敗者であることを知ります。そして、自分の意思でした初めての決断が、人生のまく引き自殺でした。

この人たちは、たしかに弱者であり、脱落者(だつらくしゃ)です。しかし、「弱肉強食」のモノサシそのものが間違っていたなら、彼らは弱者でもなければ脱落者でもありません。とかく命より「カネ」を大事にする考え方、このような狂った社会を見なおしましょう。というのが、議員たちの感性、新しい考え方です。 

というより、命を大事にする考え方はもともと日本人の細胞のひだに眠っていた「(たましい)」ではないでしょうか。啓蟄(けいちつ)とは冬ごもりしていた虫が穴から出てくることで、俳句の季語は春。意識の上とはいえ、地中にひそんでいた日本人の魂が、いよいよ地表に姿を現し始めたのではと、かすかな期待が持てます。

  

本が今後、モデルとすべき国はどこだと思いますか。(自由回答)

イギリス13%、スウェーデン11%、ドイツ9%とヨーロッパ各国が上位に並び、米国を挙げたのはたったの2人でした。スウェーデンはよく知られている福祉(ふくし)国家であって、人類のユートピア=理想郷に近い国です。また、ドイツは官民あげて環境対策に取り組んでおり、マネー中心の考え方を捨て、安全でやさしい共生(きょうせい)への道を歩み始めています。

したがって、米国流の過酷(かこく)な競争社会よりも、ヨーロッパ諸国が模索(もさく)する「成熟と共生」の文明に、わが議員たちは共感を覚えていることを、この回答は明らかにしています。

 テレビアニメ『ルパン三世』のなかで、「いよいよ自由の国アメリカだ」と仲間の1人が興奮(こうふん)したくちょうで語りかけるのに答えて、「カネがあればね」とルパン。このルパンの短いことばのなかに、競争社会の問題点が凝縮(ぎょうしゅく)されています。

私たち夫婦は、ニューヨーク五番街(ごばんがい)の専門店でショッピングを楽しみました。まず、大きくて重たいガラス戸を押して中に入ります。またガラス戸があり、今度は軽く押すだけで店内に入れます。すると、そこには天を突く大男の黒人ガードマンが2人、銃を腰にこちらに向き無表情に立っていました。客はみんな白人ばかりでした。

これだけの事実からでも、アメリカの治安の悪さと人種(じんしゅ)差別(さべつ)の存在が浮かび上がります。たしかに、法制上の人種差別はないかもしれません。しかし、「万能の神マネー」を持っていないために、実質上、貧乏人は高級店で買い物ができません。この点に、結果としての不平等・人種差別が現実に存在しているのです。あふれるほど自由があっても、マネーがなければ、そんな自由は意味がなく、ルパンの短いぶっきらぼうな返事、「カネがあればね」はこのことを指しているのです。 

富の93%を上位(じょうい)2割層(わりそう)が占めるなど、アメリカでは貧富(ひんぷ)()が大きいため、希望を失った人たちには、暴力(ぼうりょく)に訴えあるいは無気力におちいります。そして殺人・強盗・レイプは日常化し、その他にも家庭内暴力や幼児ぎゃくたい、さらには子どもの誘拐(ゆうかい)が多発しています。 

まったくのぐうぜんでしたが、当日の記事の一つに「子どもの誘拐 58000人」が掲載されていました。それによると、子どもが誘拐殺害される事件が相次いでいること。昨年、子ども58000人余りが誘拐され、うち約100人が殺害されたことなどを、ブッシュ大統領は明らかにしました。そして「テロとの戦いで子どもたちの安全に努めているが、我々の社会自体にも恐ろしい暴力性が存在する」と、述べました。

この事実は他人事ではありません。アメリカで起こった犯罪、たとえば家庭内暴力などは、必ず数年遅れで日本に伝わってくるし、またピンクで示したように、暴力を生起(せいき)させる因子(いんし)を含んでいる社会で多発する新しい犯罪は、一種の決まりを持っているからです。

考えてもみてください。人間の「こころ」を切り捨て、一切の価値観を「カネ」に託す文明に、混乱(こんらん)が生じるのは当然ですよね。合理(ごうり)主義(しゅぎ)一辺倒(いっぺんとう)の文明は、一見進歩的に見えますが、その実は底の浅い文明です。日本の若き議員たちは、このようなマネー中心文明の()の部分をするどく意識していて、あのような回答をしたのだと思います。

夢は実現するか

縄文(じょうもん)時代(じだい)貝塚(かいづか)には(よう)(じゅう)の骨が少なく、幼獣を保護したことがうかがわれ、また人殺しの武器はなかったと佐原 真は指摘しています。縄文時代は、森の文化ともいわれています。その森の文化を特色づけるキーワードは、共生(きょうせい)循環(じゅんかん)、そして平等(びょうどう)主義(しゅぎ)です。縄文人が平和で安定した社会を1万年以上にわたって維持しえたのは、この社会システムを持っていたことによります。

特に西欧文化と比較したとき、この文化は光り輝きます。有限の地球の中、現文明はいずれ崩壊(ほうかい)の危機を迎えますが、そのとき、森の文化への回帰(かいき)が人類を救います。日本の若い議員たちは、このことを意識し始めているのではないでしょうか。

この「101人の改革像」に現われた若き選良(せんりょう)たちの理想や思想こそ、これまで筆者が訴えつづけてきた「夢」でした。したがって、筆者の夢想(むそう)は全くの的外れではない(かも知れない)と思え、歓喜(かんき)と満足感に私はいま包まれています。それはたとえば、村八分(むらはちぶ)から解放された村人、笑いの輪にいる転校生、暗く長いトンネルの先のまばゆい青空、このような気持ちです。

歴史は社会の底の方で歴史をおし進める力がゆっくりとたまって進展します。まだ少数ですが、日本人は歴史のかすかな声を心のひだで捉えつつあるのではないかと、私の夢物語はこりずにさらに続いていきます。

 

20024月の朝日新聞世論調査によると、 地球(ちきゅう)環境(かんきょう)問題(もんだい)に大いに関心がある、ある程度関心があるが84%、 地球環境の状態を病気、重病と答えた割合は67%、環境保全のために、制限された生活を受け入れるが67%でした。 

この数字には、たぶんに日本文化の全員(ぜんいん)参加(さんか)気風(きふう)が現れていると思われますが、それにしても危機感の高さは相当なものです。

今後、人類が戦っていくべき難敵(なんてき)は環境破壊です。そこでやわらかい考えと変わり身の速さを持つ一番打者として、経済力・技術力が高い上に、「みんないっしょ」の国民性および環境問題に対する意識の高さを(あわ)せ持つ四番打者として日本はその難敵に(いど)みます。そして、戦費の一部は国連(こくれん)通常(つうじょう)分担(ぶんたん)(きん)とPKO分担金をふり向けると宣言(せんげん)します。反対があれば、「沈み行く『宇宙船地球号』の甲板上で、分け前争いと主導権争いにのみ明け暮れるのはナンセンスではないか」と、世界に向かって問を発します。

銃こそ向けないものの、この戦いは熾烈(しれつ)なものになります。だが、日本の挑戦は必ず世界の同調(どうちょう)を呼び、世界の良心と共鳴(きょうめい)し合います。このつながりの輪が大きくなって世界中に広がれば、文明の転換(てんかん)が正夢になるかもしれません。----そこまで大法螺(ほら)を吹かなくても、希望を失い、目的を持てず、生きる喜びを見つけられない無気力な日本の若者たちに、この挑戦は目覚(めざ)をうながし、日本を再生させます。

 以上は多分単なる「夢物語」です。しかし真の敵を見失い、その場の利益のみを追い求める20世紀型(せいきがた)文明(ぶんめい)はもう過去のもの。すでに終末に向かって秒読みが始まっているその文明にすがりつく人たちこそ、「叶わぬ夢」を見つづけているのです。

世界の良心、ならびに各種世論調査に示される意見の最大(さいだい)公約数(こうやくすう)は、マネー中心の考えを否定し、新文明への移行です。

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