環境税 世界を救う小さな一歩

 

【あらすじ】

票とマネーにのみ関心を示し、()りかかる火の粉を払うことにいそがしく、夢を持てない政治家があまりにも多すぎます。その中にあって、環境税(かんきょうぜい)の導入を目指す政治家は宝石(ほうせき)。フカンの思想を持ち(おのれ)犠牲(ぎせい)をかえりみず、人類の未来に一期一会(いちごいちえ)の人生をささげているからです。

国や市町村は財政支出を減らし、市民は使える収入が増えるという2重の配当に、かすかな希望を(たく)しましょう。

 

雇用と環境破壊を解決する2重の配当 

だれが課税するのかで税は、国税(こくぜい)地方税(ちほうぜい)に分類されるほか、たとえば給与所得に課税する所得税(しょとくぜい)と、たとえば土地に課税する資産税(しさんぜい)も分けられます物品代やサービス料金を払うとき、私たちは必ず消費(しょうひぜい)を払わされますが、実際に消費税を納めるのは業者(ぎょうしゃ)です。このように税の負担者以外のものによって納税される税を間接税(かんせつぜい)と呼び、負担者が直接納める税は直接(ちょくせつぜい)と呼ばれます。

一般に税の目的は、国や市町村の財政(ざいせい)収入(しゅうにゅう)確保することにあり、その収入はあらゆる政府支出――学校・道路・警察など――に当てられるので、一般(いっぱん)(ぜい)と呼ばれます。これに対し、特定目的のために作られる税を目的(もくてき)(ぜい)といいます。本稿の主役「環境税」は、負担者以外のものによって納められるので間接税に当たると同時に、環境保全のためにのみに支出されるので目的税にも当たります。

環境税はまた、環境保全目的のために設けられた税すべての呼び方ですから、たとえば、ゴミ袋税や炭素(たんそ)(ぜい)農薬(のうやく)(ぜい)・ガソリン税なども、名前がどうであれ環境税に含まれます。ヨーロッパ諸国の主な環境税の名称は、スェーデンは炭素税、オランダは 一般燃料税、イギリスは気候変動税、ドイツは 鉱油-電気税、イタリアは物品税など多様です。

今後環境税の種類・数は環境(かんきょう)保全(ほぜん)に対する認識の深まりとともに、ますます増えていくものと期待を込めて、予想しておきます。

 

さて、先進国に温室(おんしつ)効果(こうか)ガスの削減(さくげん)義務(ぎむ)を課した「京都(きょうと)議定書(ぎていしょ)」を、わが国は批准(ひじゅん) 国同士の取り決めを国家機関が承認すること)しました。そのために、20082012年の1年当りの温室効果ガスの排出量(はいしゅつりょう)1990年に比べて6%減らさなければならない義務を、日本は負っています。

その対策として、排出抑制(よくせい)の有力手段と考えられる環境税を、2006年にも導入する方向で環境省は検討を始めています。検討の原案によると、石油や石炭など化石(かせき)燃料(ねんりょう)の精製・流通・消費の段階で課税し、税額は炭素(たんそ)換算(かんさん)1トン当たり2400円(一般家庭一世帯平均で年間約3千円)です。

 環境税導入のメリットは、

@ 価格が上昇するので、化石燃料の使用が節約される。

A 石油などの価格上昇は省エネ投資の促進など、効果が期待される。

B 税収を省エネ技術の開発など温暖化防止対策に使用することができる。

C 汚染費用を汚染者(おせんしゃ)に負担させることができる。---------などが考えられます。もちろん、これらの相乗(そうじょう)効果(こうか)環境問題に対する社会的認識の高まりも期待できます。

近年、ヨーロッパを中心に環境税による税収を、直接税の減税に当てる動きが広まっています。このように環境の視点に立って税制を見直すことを、「税制のグリーン化」と呼びます。環境税の増税と直接税の減税を同時・同額行うので、税制のグリーン化による環境税の導入は、増税ではなく「(ぜい)移動(いどう)」です。

税の移動は、雇用を生み出すといわれています。たとえば、ドイツは19994月、温暖化対策として環境税を導入し、84億マルクと見込まれる税収を年金など社会保険料の引き下げに当てました。保険料負担が減った分企業には雇用を増やす余裕が生まれるので、失業率が約10%改善できると期待されています。

このようにグリーン税制は、「環境破壊の抑止(よくし)」と、「雇用の拡大」を同時に達成することが可能です。この効果は「2(じゅう)配当(はいとう)」と呼ばれます。

「夢」を夢見る

2重の配当」をなぜ日本は採用しないのでしょうか。導入に反対するのは主に、経済界と経済産業省です。

反対の理由の1 、環境税(炭素税)を導入してもガソリンはもはや生活(せいかつ)必需品(ひつじゅひん)買い控えをしないので効果は限られる。

2 環境税(炭素税)を導入すれば、すべての値段が上がるので、経済(けいざい)成長(せいちょう)の足を引っ張る。

3 日本だけ導入すれば、価格が上昇するため輸出(ゆしゅつ)競争力(きょうそうりょく)の低下を招き、経済が減速する―。というものです。

アメリカも日本の財界と同じ理由で、導入に反対しています。

経済より環境重視へとヨーロッパが考えをかえているなか、アメリカと日本はマネーのしばりから抜け出せずに、どっぷりそれに首までつかっています。特に、アメリカは京都議定書を脱退するなど環境後進国。このように見てくると、導入反対の(みなもと)あるものが浮かび上がってきます。

その1は、すべての価値観(かちかん)をマネーにおく、資本主義制度。

2は、古い世界(せかい)(かん)地球(ちきゅう)無限説(むげんせつ)ののろいから抜け出せない後進性。

3は、そのため共生(きょうせい)」の思想が真に理解できず、人類を大量死へ向かわせていることに気がつかない狂気――。などです。

 

ところで、「愛」や「慈悲(じひ)」あるいは「共生」をとなえるのみでは、環境問題は解決しません。行動を起こす必要があり、その行動の1つが環境税の導入です。そこで、環境税の導入が文明に及ぼすと思われる変化を、例題を設けて、希望を込めて考えていきます。

市は環境税(ゴミ税)を導入した。市民Aが新たに負担する環境税は5万円である。しかし他の税も同時・同額減税されたので、環境税の導入による負担増は一切ない。だが、これを機会にAはゴミの減量に取り組んだため、ゴミ税が2万円に減り、導入前に比べて使えるカネは3万円増加した。

一方、他の市民もAと同じようにゴミを減らしたため、O市全体のゴミの量は激減し、当然、ゴミ処理費用も減少した。加えて、焼却などで生じる温暖化(おんだんか)ガスや環境ホルモン・猛毒(もうどく)ダイオキシン・微粒子(びりゅうし)酸性(さんせい)()なども半減し、ぜんそく・アトピー性皮膚炎などの循環器(じゅんかんき)(けい)の病気も劇的(げきてき)に減少した。この効果により健康保健赤字問題も解決、あわせてゴミ処理費用の支出減により、O市の財政支出も好転した。

以上はゴミ税の導入に(から)んだ、A一家のお(とぎ)話でしたが、もし世界規模で炭素税の導入がなされ、数十億の家庭でA一家のような行動が起こされれば、地球(ちきゅう)環境(かんきょう)は確実に改善されます。しかも、このような(しお)(なが)は、次世代へと引き継がれ、マネー中心の考え方を否定(ひてい)する文明の夜明(よあ)けが、訪れるでありましょう。

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