国民所得 病気が福の神

【あらすじ】

たとえば建物に火をつけ、消火(しょうか)活動(かつどう)を行えば国民(こくみん)所得(しょとく)は増加します。このような国民所得を私たちは最高の「(ぜん)として(まつ)り上げ、その増加を希っ(こいねが)います。どこかに宇宙人(うちゅうじん)がいて、この不思議な行動を(なが)めれば、きっと腰を()かすでしょう。宇宙(うちゅう)飛行士(ひこうし)エド・ミッチェルのように。

『消費』=『資源の枯渇(こかつ)』=『国民所得』が成り立ちます。ですから、国民所得を増やすことは、地球をいじめて人間の生きる基盤(きばん)を弱くする行いです。宇宙人ではないあなたも、変だと思いませんか。

 

国民所得とは何か

所得を求める基本(きほん)方程式(ほうていしき)は、「国民所得」=「消 費」+「投 資」です。 

したがって、式の右辺(うへん)消費(しょうひ)投資(とうし)が国民所得を決めます。消費は、食料品など使えば消えてなくなる物や電話料などのサービス料金を指します。

投資は、建物(たてもの)機械(きかい)などのように繰り返し使える物です。しかし、それらも年月が()てば使えなくなり、捨てられます。つまり、時間をかけて消費されるものを投資と呼んでいるのです。このように考えれば、投資は消費にいたるまでの(かり)姿(すがた)に過ぎないので上の式は

国民所得』=『消 費』 

書き換(かか)えることができます(区別するため二重カッコで示した)。

資本(しほん)主義(しゅぎ)経済(けいざい)は、(とみ)は多いほどよいと考える経済(けいざい)制度(せいど)ですが、それを達成するためには、私たちはせっせと『消費』にはげむ必要があるのです。『消費』は、基本的には限りある資源の()いつぶしです。この貴重(きちょう)な資源を食いつぶさないかぎり、私たちは富を手にすることができません。式はそのように教えてくれます。

 

〔国民所得の中身〕 国民所得は1国の1定期間の富の総量(そうりょう)『消費』の大きさを表す指標(しひょう)です。したがって、@猛毒(もうどく)ダイオキシンや農薬(のうやく)の消費は国民所得を増やします。A貧富の差が広がれば、犯罪(はんざい)が増えます。すると行政側(ぎょうせいがわ)はその手当てのための予算を増やし、富裕層は民間(みんかん)警備(けいび)会社(がいしゃ)に身の安全をゆだね、その対価を支払います。 

B弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)の文明が深まれば、トラブルが多発して弁護士(べんごし)の仕事も増えるでしょう。Cこのようにして国民所得が増えれば、ゴミの量も増えます。D国民所得の増加はまた豊かさ症候群(しょうこうぐん)1つ、肥満(ひまん)高血圧(こうけつあつ)糖尿病(とうにょうびょう)の増加を招き、その結果財政(ざいせい)支出(ししゅつ)と個人の医療費(いりょうひ)がふくらみます。

これらの医療費・安全対策費・弁護士費用・ごみ処理費用・行政支出の増加は、いずれも国民所得を増やします。

一方、ボランティア活動や家事(かじ)労働(ろうどう)は国民所得に含まれないが、家政婦(かせいふ)労働やボランティア活動と同じ仕事を業者が請け負(うお)えば国民所得に加えられます。このように見てくると、支払いをともなうもののみが国民所得に加算され、内+容の良い・悪いは問われません。

したがって、単に国民所得を増やすという立場に立てば、病気・ゴミ・犯罪などの増加ならびに温暖化(おんだんか)砂漠化(さばくか)森林(しんりん)破壊(はかい)大気(たいき)汚染(おせん)などの環境破壊はよろこばしい(ふく)(かみ)にあたります。 

これが国民所得の正体です。私たちが求めているものは幸せであって、けっして数量の大きさではないはずですが―。

 

〔狂った豚〕 「エコジカル・フットプリント」とは、「自然に対する人間の影響(えいきょう)総量(そうりょう)」(『成長の限界人類の選択』)であり、もうすでに2000年時点で、それは地球の限界(げんかい)20%超えています。にもかかわらず、私たちは官も民も国民所得の増加(=『消費』の増加)を希っていますが、それは後の式で見たように、限りある地球資源を食いつぶす行為であり、宇宙(うちゅう)(せん)地球号(ちきゅうごう)沈没(ちんぼつ)をはやめます。

アポロ14号の飛行士エド・ミッチェルは宇宙船から地球を見て、エゴ・欲望・憎しみ(にくしみ)・恐怖などにとらわれて生きている現実の人間の浅ましさを知りました。そして、欲望にとりつかれている摩訶不思議(まかふしぎ)な人間の行為を――それは(くる)ったブタの群れが暴走してがけの上から海に飛び込んでいくような行動。集団(しゅうだん)自殺(じさつ)しつつあることすら人間は気が付かない狂気(きょうき)――と、語っています。人間はきっと甘美(かんび)な「悪魔のささやき」のトリコになっているのか、国民所得教祖(きょうそ)のジュジュツにかかっているのです。

 

借金大国、日本誕生

いま、私たちは自己の利益を優先(ゆうせん)する「個人(こじん)主義(しゅぎ)」、他者をけおとすことが  得意(とくい)者のみを成功者とみなす「弱肉強食(じゃくにくきょうしょく)」の社会の下にいます。この世界では、人はみな、勝者も敗者も欲望がみたされることをねがい、自身の欲得(よくとく)をモノサシにして投票します。 

西村貞二はギリシャの歴史(れきし)政治(せいじ)について、「アテネが王政(おうせい)にはじまり、貴族(きぞく)政治(せいじ)金権(きんけん)政治(せいじ)僭主(せんしゅ)政治(せいじ)非合法の手段で政権を獲得した独裁政治)・民主政治をへて衆愚(しゅうぐ)政治(せいじ)(自覚のない国民による政治)に落ちていく経路(けいろ)は、まるで政治のひな型を見るようでありませんか」と記しています。

の一文は民主主義が最善(さいぜん)でないことはもとより、そのもろさや衆愚性(しゅうぐせい)・不安定な立場を暗示(あんじ)しています。その国民の声を尊重(そんちょう)した結果、わが国はサラリーマン家計にたとえると年収のうち45%をサラキンに頼っている借金大国になっています。

親が欲望(よくぼう)丸出(まるだ)しの(かい)(らく)に走り、前後の見境(みさかい)もなく浪費したため、(=国民所得の増大を国民が希望し、政府・与党がそれにそった政治を行ったため)この東洋(とうよう)島国(しまぐに)には多額の借金が残りました。あわれ!塗炭(とたん)の苦しみを、君たちは背負(せお)って行くことになります。

質のよいのもあったけれども、どちらかというと中身のうすい国民所得をこれでもか、これでもかと食べちらかした結果、日本は地球を荒らしまわったばかりでなく、借金大国・自殺大国・ガン大国になったのです。

トップページへ戻る