石油物語

 【あらすじ】

石油は質も量もつまり、文明のすべてを決めます。しかもその石油が、わずか約40年で枯渇します。一方、その使用(特に燃焼)は温暖化を招き、地球環境をいちじるしく弱めます。価格が上がったとか下がったなどとさわぐのは、たかだか40年の短期的視点にすぎません。「イラク」や「美しい国」は短期的視点にすぎず、重要度は『石油』にくらべれば低いはずです。俯瞰(ふかん)の思想を持つべきです。

 
石油ができるまで

使用可能な石油は地球上に存在するだけでなく、実際に採掘できる状態にあることが必要です。これを確認可採(かくにんかさい)埋蔵量(まいぞうりょう)と呼びます。その量は約1兆3千億バレルで、年間消費量(約3百億バレル)の約40年分と予測されています。

@石油は、大昔の動物・植物・微生物などの有機物(ゆうきぶつ)が積み重なって堆積岩(たいせきがん)となりそれが地熱やバクテリアによって分解され、長い時間をかけて油になった。というのが定説であり、これは有機(ゆうき)起源説(きげんせつ)と呼ばれています。A地殻の底で岩石が水と反応しメタンガスができ、そのメタンが反応を重ねて石油や天然ガスに変化したのであって、生物の死骸ばかりでなく、岩石からも石油はできるとする考える無機(むき)起源説(きげんせつ)もあります。

認知されていないこの無機起源説によっても、いずれ石油不足はやってきます。

石油不足説

石油不足の原因は、大きく二つに分けられます。一つは埋蔵量の限界です。有機起源説によれば、石油は有機物が堆積した地層分しか存在しないため、埋蔵量に限りがあり近い将来必ずなくなるからです。

他の一つは消費量の急増です。ブラジル・ロシア・インド・中国の頭文字をとって「BRICs」と呼ばれている経済発展が著しい地域で消費量が増えているからです。特に中国の経済成長は著しく、石油の使用量が激増していて東シナ海でわが国と争っているガス田開発もこの流れの中に地位付けされます。

中国の石油需要の急増が04年からの世界の原油価格の上昇を招きました。その矢先の058月、台風の別名ハリケーン・カトリーナが米国、アラバマ州などに襲いかかったため、さらなる原油価格の高騰を招きました。

「需要供給の原理」 (買いたい人が多ければ価格は高く、売りたい人が多くなれば価格は低くなる)にそって石油価格は決まりますから、需要に応じて供給が十分になされるのであれば、価格は高止まりしません。石油価格の上昇は供給不足、つまり原油の枯渇を物語っているのです。2050年には人口は約91億に増えると予想され、同時に日本やアメリカ・BRICsなど世界の経済成長も持続する.と考えられています。したがって石油需要はますます高まり、枯渇も確実に進んでいきます。

環境破壊と生活様式の崩壊

057月末には1バレル当たり約60ドルだった原油価格は、前述ハリケーン・カトリーナの影響を受けて830日には一時70ドル超を記録しました。この高騰で、燃料効率の悪い アメ車が苦戦しています。私たちの日常生活はほとんどガソリン・電力・・石油・建材・家具など石油に依存しています。その石油価格が510倍に高まり、あるいは不足した状況を予想してください。アメ車の苦戦などは単なる「嵐の前のしずかさ」にすぎず、消費生活そのものの崩壊を招くでしょう。

文頭に記したように、石油の確認可採埋蔵量は約40年、枯渇までの時間は秒読みの段階にあるといえます。1972年ローマクラブから地球の有限性を初めて明らかにした『成長の限界』が刊行され、当時大騒ぎをしました。当時の主要メンバーにより、前掲書の刊行から30年後を節目にして2005年3月、『成長の限界人類の選択』が刊行されました。そこでは1972以来一貫して「成長に関するデータや理論を統合」するために構築したコンピューターモデル【ワールド3】が使われています。同書では【ワールド3】を若干バージョンアップしたものを用いて、10のシナリオを示しています。そしてその中の実際的シナリオのすべてが、化石燃料など資源の枯渇と汚染を浄化する能力がいちじるしく低くなるという理由で「地球の持続可能性の劣化または文明の崩壊」の傾向を示しています。その時点は2050年ごろです。

さて、たとえばガソリンには、石油が創られた当時の二酸化炭素(にさんかたんそ)が含まれています。したがって、燃やすとその太古の二酸化炭素が大気中に放出され温暖化を招きます。このように石油は使用によって地球環境を悪化させます。と同時に、その枯渇は私たちの大量消費型文明を根こそぎ破壊します。



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