森林破壊 文明に影響

 

【あらすじ】

半身(はんしん)半獣(はんじゅう)の森の神フンババは(こずえ)をそびえさせるレバノン杉を、数千年の間守ってきた。だがある日、強力な青銅(せいどう)の手オノを持ったウルクの王ギルガメッシュがやってきて、神々が宿る(やどる)聖なるレバノン杉を切り始めた。怒り狂ったフンババは、(あらし)のようなうなり声をあげて、口から火を吹きながらギルガメッシュにおそいかかります。しかし、フンババはとうとうその頭を切られ、殺されてしまう。この時から人類による森の破壊が始まったのです。 

 人類は、その歴史の大部分において燃料・食料・木材・肥料など生存に必要な資源を森林から得ていました。現在でも森林の恵みなしには人間は生きていけず、“文明の前に森があり、文明の後に砂漠(さばく)残る”といわれています。

まえに、東京・横浜で「(よん)大文明展(だいぶんめいてん)」が開かれましたが、いずれも森を利用して栄え、森の消滅とともに亡びました。いま、1秒でテニスコートの20面分、1日で種子島の総面積分の森林が地球上から消えています。歴史は繰り返されるのでしょうか。

 森林破壊の現状

8000年前、人間が初めて本格的な開墾(かいこん)を始めたとき、地球の陸地面積の約40%に当たる60億ヘクタール以上が森林でおおわれていました。ところがいまでは、地球のところどころにのこっている自然林の総面積は、36億ヘクタールていどに過ぎません。

現在、森林消失の90%以上が熱帯で起きています。1990年から2000年までの10年間に、熱帯地域の天然(てんねん)(りん)は年平均1420万ヘクタール減少(日本の本州面積の約3分の2)したと推測(すいそく)されています。減少の主な原因はつぎの3つに分けられます。

一は、焼畑(やきはた)耕作(こうさく)や燃料消費です。世界で約30億の人々が、暖房や調理用の燃料をマキやスミに頼っています。

二は、森林以外の用途、とくに、放牧地(ほうぼくち)・農地への転用です。たとえば輸出用牛肉生産のために中南米では、森林が牧場に変えられ、途上国では飼料用トウモロコシやキャッサバ、あるいはコーヒー・ココア・茶など商品作物の栽培のために、森林がつぶされてきました。

3は、つぎに見られるような 不適切な商業伐採です 

 

ロシア極東(きょくとう)地方(ちほう)  この地域はロシアの面積の40パーセントを占め、その45パーセント(この面積だけで日本の7倍を超えます)が森林におおわれています。この地域での伐採方法は区域の木をすべて切るクリアカット(皆伐(かいばつ))です。クリアカットは、最も簡単、しかも効率のよい方法であり、利用しない樹種や若い木・細い木をすべてなぎ倒します。このやり方は、資源を無駄にしているほか、生態(せいたい)(けい)をこわしているので「森を殺す」といわれています。日本はその木を輸入しています。

グレートベア温帯(おんたい)雨林(うりん)  温帯に属しながら熱帯林並みに降雨量が多い地域を、グレートベア温帯雨林地域と呼びます。ここは哺乳類(ほにゅうるい)や鳥類の宝庫で、地球上に残る温帯雨林の4分の1を占めています。渓谷(けいこく)には、樹齢(じゅれい)1500年を超すベイスギや高さ100メートル、直径6メートルのベイマツなどの原生林があります。そのグレートベアの木がカナダで切られ、約半分が米国へ、25パーセントが日本へ輸出されています。

パプアニューギニア  パプアニューギニアには世界で3番目に広大な熱帯(ねったい)雨林(うりん)の原生林が広がり、そこには美しいゴクラク鳥など、およそ1600種類の鳥類や3000種の植物が存在するといわれています。しかしその原生林では、現在、違法(いほう)伐採(ばっさい)破壊的(はかいてき)伐採(ばっさい)による深刻な破壊が進んでいます。そのため最初にあった雨林うちの60%が失われました。違法で破壊的な伐採を行う企業は、主にマレーシアなどから進出する多国籍(たこくせき)企業(きぎょう)(複数の国で活動をおこなう大規模企業)です。日本は世界で2番目に多くこの木を輸入しています。

タスマニア  世界一背が高くなる広葉樹(こうようじゅ)、セイタカユーカリの成熟(せいじゅく)した森がオーストラリア大陸の東南に浮かぶタスマニア島にあります。樹齢400年に達する古木の場合、高さ80mを超えるものも多く、林床はコケにおおわれています。この森がクリアカットの対象になっており、元の面積の13%程度しか残っていません。伐採された木材は、主に木材チップに加工され、その9.が日本に輸出されています。

 

江戸時代に幕府(ばくふ)直轄(ちょっかつ)天領(てんりょう)では伐採が禁止されたほか、里山が「鎮守(ちんじゅ)の森」として庶民(しょみん)によって守られてきたこともあって、日本は世界第2の森林国です。 

ところがいま、わが国は世界一の木材輸入国であり、結果として世界の森林破壊を促進しています。たとえば、タスマニアの場合「原生林を破壊しないで生産したチップを購入したい」と、伐採企業に要求することで問題の大部分は解決するといわれています。フカンの思想および有限性への深い認識が求められます。

森林の効用

人の(のう)心臓(しんぞう)は、植物がつくる炭水化物(たんすいかぶつ)をエネルギー源にしています。植物がつくる炭水化物とビタミンを食べて、動物はみな生きています。森林は、二酸化炭素を吸収・貯蔵し、生物(せいぶつ)多様性(たようせい)と国土の保全・水源の涵養(かんよう)・水質の浄化(じょうか)等人間の生存に不可欠なさまざまなはたらきをします。世界の野生生物の約半数が熱帯林には生息するといわれ、そこは遺伝子(いでんし)資源(しげん)の宝庫でもあります。森林面積の消失により、熱帯雨林の多くの野生生物種が絶滅の危機に(ひん)しています。

以下、森の働きのうち、重要な一部を簡単に見ていきましょう。

 二酸化炭素の吸収  木の重量の半分は二酸化炭素、したがって木は二酸化炭素のカンズメといわれています。木が吸収する二酸化炭素の量は木の(みき)や枝葉の質量にほぼ等しく、熱帯雨林は1年間に1へクタールで100トン、温帯(おんたい)(りん)は同60トン、寒帯(かんたい)(りん)は同21トン吸収します。

薬用  私たちが買う薬の4分の1以上は、植物から得たものです。たとえば、多くの抗生物質(こうせいぶっしつ)、鎮痛剤・利尿剤(りにょうざい)・鎮静剤などさまざまな薬があります。さらに心臓病や小児血病・リンパ系のガン・緑内障(りょくないしょう)の病気にも使われています。

保水  森林には水をたくわえる働きがあります。森林土壌には大小さまざまなすき間があり、地表にとどいた水のほとんどを一時貯留(ちょりゅう)します。多目的ダムのダム湖の容量とその流域の自然の容量とを比較した試みがありますが、それによると自然の容量はダム湖の実に19倍の量でした。森林を破壊することは、この緑のダムを破壊するに等しいおろかな行為です。

気候の安定  森林の植物は水を出し、林地面も水を出すことによって地表付近の気温や地温の異常な上昇を防いでいます。森林が伐採されるとその地域の気候が変わり、対流(たいりゅう)・風のパターン・降雨量等のかく乱が生じます。

海の幸  山に木を植えると腐葉土(ふようど)培養(ばいよう)され、それはプランクトンを増やし、海を豊かにします。

水の浄化  林床に到着した土壌(どじょう)(すい)はカビやバクテリアなどの土壌(どじょう)微生物(びせいぶつ)やミミズ・ヤスデなどによって様々な物質が取り去られ水は浄化されます。

災害の防止  森林は土石流(どせきりゅう)災害をやわらげるほか、地すべり・なだれの防止にも役に立っています。

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