KOUDELKA(クーデルカ)

発売元:SNK
開発元:サクノス
機種 :PlayStation

◎ 現在においても決して色褪せないイベントシーン
◎ 高品質のイベントムービー
× 偶然性が高すぎる武器システムが選択肢を少なくしている現実
× RPGのシステムとしては未完成とさえ評価できないバトルシステム

◎ あまりに「口惜しい」ゲーム
 

開発元のサクノスは最近では「シャドウハーツ」が売れている。
インターネット上で事ある毎に語られるのは
「シャドウハーツには前作があった。」
これは事実である。
「クーデルカ」は「シャドウハーツ」の前作に当たるゲームである。
但し、「シャドウハーツ」が純粋に「クーデルカ」の続編であるか?
と問われれば「NO」というべきだろう。

「クーデルカ」はスクエアで聖剣伝説の音楽を手がけた菊田裕樹氏が作り上げた作品
(敢えて作品と表現する)のに対し、
「シャドウハーツ」は現在のサクノスの若手社員がその若さを武器に作り上げたゲーム
(こっちは敬意を込めてゲームと表現させてもらう。彼らはゲームを作ったのだ。)
と考えて良いと思う。
実際の所、菊田氏は全然違うストーリーで「クーデルカ」の続編を構想していたらしい。
 

さて、「シャドウハーツ」についてはそのうち書く事もあろうから、
「クーデルカ」の事に集中して書く事にしよう。

物語は主人公のクーデルカ=イアサントが「ある者の導き」により、ネメトン修道院に来る事から始まる。
彼女は最終的には「ある者」の依頼を受け成就し、この修道院から脱出しないといけない・・・。

わかりやすく言えば「(初代)バイオハザードのRPG版」である。
バイオハザードが「脱出劇」を前面に押し出しているのに対し、
クーデルカの全編を通して感じる事は「ドラマ」である。

クーデルカ=イアサントが得るパートナーは二人である。
一人は自称冒険家、もう一人は敬謙なカソリックの神父である。
彼らは(自分はどう思っているかはともかく)決して「善良な人物」ではない。
クーデルカは平気な顔をして、毒を盛られてしまった「自称冒険家」を見下す。
「自称冒険家」は命乞いをする賊を撃ち殺す。
「神父」はカソリックが今まで行ってきた(暗部)を認めようとしない。
彼等は事ある毎に対立し、口論し、そして次々と襲ってくる化け物達と戦う。
そして、・・・・最後の戦いを前に和解をする。

彼等は強い人間でもあり、弱い人間でもある。
クーデルカは自分が持った(霊媒師としての)能力の呪い、その生い立ちを「汚れている」と言い、泣く。
「自称冒険家」は自分が開拓者時代に生まれなかった事を悔しがり、嘆息する。
「神父」は自らの過去を断ち切る為に神父になった事を暴露する。
それを互いに知り、和解するのである。

クーデルカが自分の生い立ちを「自称冒険家」に語るシーンは圧巻であり、
このゲームのハイライトというべきである。
このシーンはモーションキャプチャを駆使しているのだが。
これだけの長丁場のモーションキャプチャーは現在でもそれほどないのではなかろうか。
視点は一つだけ、モデルはあまり動かない。ポリゴンは貧弱だ。
今のモーションキャプチャーに比べるとビジュアル的には太刀打ちできない。

それでも「圧巻」である。
少なくとも僕はモニターから離れる事が出来なかった。
ここで見たのは「CG」ではなくて「劇」であったからである。
クーデルカと「自称冒険家」を演じる二人の俳優が長丁場で劇をする。
無論、舞台に比べればそれは短い時間ではあろうが、それは出来のすばらしい寸劇である。
クーデルカと「自称冒険家」は酔いどれ、互いの身の上話しをする。
最後にクーデルカは自分の立場を嘆く。そこには霊媒師としての気丈な女の姿は無い。

「私には帰る所が無い。」

クーデルカと「自称冒険家」に限らず、「クーデルカ」においてモーションキャプチャーで
出演している俳優達はハリウッドの俳優ではあるが無名である。
しかし、その層の厚さを思い知らされる。
#実際に菊田氏のWEBでもクーデルカと「自称冒険家」を演じた俳優に対する賛辞の言葉が述べられている。

また、悪霊となってしまった少女、単なる殺戮者となってしまった老夫婦、
そして幽閉されたおっさん(笑)など、サブストーリーも魅力的である。
またイベントシーンでその端々に出る、
シェークスピアの劇の一節、やバイロンの詩が効果的に場を盛り上げる。
今風に言えば「クール」という奴か(笑)

そしてエンディングに流れ込むのだが・・・・
エンディングはバッドエンド、ハッピーエンド(ではないのだが・・・)に別れているのだが
何回ゲームをしていても、菊田氏は「バッドエンド」を主眼にしてシナリオを組み上げたのではないか
と思えるのだが・・・。イヤホント(苦笑)
しかし、どちらのエンディングもあまり後味が良くない(苦笑)
ハッピーエンディングでは、結局誰一人「救う」事が出来ない。
バッドエンディングではさらに救われない(いや、「救われた」というべきか)
巷では「エンディングあっさりしすぎ」という話しもあったのだが、
こんなヘビーなエンディングをこってりされたら、さらに後味が悪い。
だからあっさりとしていても良いのではないかと思う。
「エンディングを迎える」=「修道院の悪夢の一夜が終わる」
だけの事、としているのかもしれない。

さて、このゲームの美点として
「現在においても色褪せない高品質のイベントムービー」を挙げたのだが、
実際の所、現在ではこのレベルのイベントムービーは珍しくない。
だが「この時期にこれだけのムービーを製作してみせた」というのは対した物では無いか?
と思う。

ただし、僕のムービーの品位に対する評価はここまで。(苦笑)
僕個人としてはこのゲームの美点は「シナリオ」と「劇」にあると今でも思う。
一般的にはキャラクターのポリゴンの荒さとムービーの品質の落差を欠点に挙げる人が多いが、
これについては、「それは贅沢の言いすぎとちゃう?」と言っておく。
今でも「どうするよ、これ?」って言いたくなるゲームは沢山あるのだ。
「クーデルカ」は素晴らしさはポリゴンのキャラクターの美しさではなくて、
イベントの素晴らしさである、考え様によってはあんな荒いポリゴンキャラが
ちゃんと劇を演じ、見る側を感動させている事の方がすごいと思うのだが・・・・。
 

さて、ここまで褒め上げておいて、欠点をあげつらうのは少し悲しいのだが・・。
ここまで、シナリオも劇も出来ていながら、RPGの部分はまるでなっていない。
というよりも「クソゲーそのもの」である。
ダンジョン(修道院)の探索においては特に問題はないのだが、
バトルシステムだけでもどうにかならなかったのか、と本気で思った。

まぁ、この出した時期が時期だから、ビジュアル的に凝ったバトルシーンの場合
効果を出すだけでCDからロードするのは仕方が無いので、それは私も了解できる。
また、システムを構築した側が考えていたよりも早く進行している場合、
ボスクラスのバトルが非常に長くなる、というのもそれは仕方が無いだろう

でも、バトルシステムでも致命的だな、と思うのは
「仕様上の不具合」というのが存在するのである。

キャラクターの育て方はレベルアップ毎にポイントを入手し、
それを体力や魔法力といったキャラクターの個性に対し、
振り分けていって強化する事になる。
いや、これはそんなに問題ではない。
問題点は、「バトル中でも魔法により各パラメーターを一時的に強化する事が出来る」事である。

例えば、「一時的に物理防御力を上げる(=最大HPが上がる)魔法」が存在するとして、
これを掛け続けるとしよう。
たいていのRPGには上限の物理防御力やHPの値が定められている筈である。
んで、大抵のRPGはその上限に達したら幾ら魔法を掛けても強化する事が出来ない筈である。
・・・・「クーデルカ」はどうも出来るらしいのである。(しかもよりによってバトル中に)
で、上限を超えてしまうとどうなるか?
HPのカウンターがオーバーフローしちゃって「最大HPがマイナス値」になるのである(笑)

「最大HPがマイナス」になると、システム上、
そのキャラクターは「死んでいる状態」として扱われるのである。(爆笑)
 

「最大HPがマイナス」→その場で倒れてしまうキャラクター
焦ってヒーリング(笑)どうも効いているみたい、でも倒れたままである。
「最大HPがマイナス」だから(笑)
復活魔法も効く、でも倒れたままである。
「最大HPがマイナス」だから(爆笑)
また、クーデルカのバトルシステムでは前衛と後衛の概念があり、
前衛がいる場合、後衛は飛び道具以外の物理攻撃を受けないというルールがある。
で、前衛がコケたら、後衛が物理攻撃を受けまくって、パーティ全滅、なんて事にもなるのである。
 

実は昔のPCのゲームではキャラクターのパラメーターがオーバーフローするゲームはたまにあったのだ。
しかしPSでそんなゲームに出会うとは思わなかったなぁ(笑)
実際に「どないする気や」状態というのはこれだけである。
だから、この状態に出くわさなければ、取敢えずクリアーできない事は無い・・・と思うのだが。

あと、「消化しきれなかったシステム」としては、武器の概念がある。
武器にはいくつかの種類がある、ナイフ、剣、槍、こん棒、等など。
所が、それぞれの武器には「習熟度」という概念があって、その種類の武器を使えば使うほど
習熟度が上がり、相手に与えるダメージが増えるのである。
所がクーデルカの世界では「武器は使えば壊れる物」なのである。
だから一生懸命習熟しようとすれば、その分武器を壊すのだ。
さあボス戦だ、って時に、その系列の武器が手元に無い(爆笑)
つうのが何回かあった。
また、武器や魔法には(火とか水とかの)属性がある。
魔法の場合はまぁ良い
「あっ、火の属性の魔法が効かない、じゃあ水の属性の魔法を使おう」
武器の場合は大変だ
「火の属性の武器じゃ効かない、水の属性の武器は・・・・
 無いやんか(滝涙)
また、強力な武器の場合、入手できる所は決まっているし、属性も決まっている事が多いのだけれども。
敵キャラから入手する武器や、普通に落ちている武器は付いている属性がランダムだったりするので、
余計に使いにくい。

だから、僕の場合、武器を持つのは基本的に後衛でそれも、
実際の物理攻撃力は一切考慮しなくて、
武器が持っている追加パラメータ(例えば魔法防御力+10とか)を期待して装備するのだった。
前衛?
前衛は「肉弾戦」に決まっているでしょ(笑)
素手で怪物どもに立ち向う、我が前衛(=「自称冒険家」)(笑)
どんなボスにも素手で立ち向かう「自称冒険家」
どんな気持ち悪い敵キャラでも素手で立ち向かう「自称冒険家」
あ、一応、素手にも習熟度があります(爆笑)

そうそう、他にも泣けちゃう武器があった。

「ダニエルクロス」って武器があってね。
一応「聖ダニエル」っていう人のお墓の裏側で見つけるらしいのだけれども、
魔法系のパラメーター修正が非常に高い武器なんです。
多分これはクーデルカか「神父」が装備する武器だと思うんだけれども
「こん棒系」なんです。(笑)
取敢えず装備してみて、バトルに突入する。

どう見ても
「あんた、聖ダニエルさんの墓石の十字架ちゃうの!」
って言いたくなるような巨大な十字架(汗)
使った時に
「これは(狙っているとしか)思えない」
と思いましたよ、ええ。
 

とても気に入っているゲームの評価とは思えない文章なんですが、気に入っているんですよ。本当に(汗)
イベントだけでも見て欲しいというのが正直な気持ちなんですが。
今更PSのゲームを買う人も少ないよなぁ、って思います。

で、攻略本も少ないでしょうから、「この文章を見てプレイしてみたくなった(いないって)」
と言う人にアドバイス、

1、一番最初の戦いが終わったらすぐに1階に降りろ!
  このゲームは修道院の2階にクーデルカが進入し、「自称冒険家」と出会うイベントの後で
  いきなりバトルが始まります。
  このバトルは「本気でやらないと死にます」ホント。
  クーデルカは拳銃を持っていますが、弾をケチらない様に。
  で、このバトルが終わったら、普通の人は2階の探索に入ると思うんですが。
  「しないで下さい、必ず死にます。」
  前半ステージは、1階よりも上の階に行くほど敵が強くなっています。
  だから、一番最初の戦いを制したら一目散に1階に降りて下さい。
  まぁそこから3階に上がったらマップが手に入るので、博打で3階に上がるのも手ではありますが。

2、ある程度実力が付いたら最初のボス戦だ!
  実は最初の小ボス戦を終わらせないと、「神父」さんをパーティに加えられないし、
  小ボス戦の地点が一番最初のセーブポイントなんです。
  私がクリアしたレベルは忘れてしまいましたが、最初の小ボス戦は
  ある程度慎重にするべきだと思います。
  序盤ですから、回復アイテムも武器もあまりありませんし。
  逆に「自称冒険家」をこの時点で素手での戦いを習熟させれば後は楽かもしれません。

まぁ、上の二つ以外はRPGに手慣れている人ならば問題はないと思います。
難しいなぞ解きもそんなにありませんし。

それと「クーデルカ」とプレイした後で「シャドウハーツ」をプレイすると
「あ、このザコキャラは(笑)」という事もあります。
 

★ 各リンク

サクノス公式WEBサイト
http://www.sacnoth.co.jp/
「クーデルカ」の公式WEBサイトがあります。

「クーデルカ」の総監督、菊田裕樹氏のWEBサイト
http://www.zephyr.dti.ne.jp/~deadtech/
「クーデルカ」のページも用意されています。

コミックの作者、岩原裕二氏のホームページ
http://www2.tky.3web.ne.jp/~lobo/

「クーデルカ」のインターナショナルWEBサイト
http://www.koudelka-game.com/

あと、ファンサイト、ゲームレビューサイト、コスプレサイト(笑)
なんかがあるんですが、上記のサイトから巡回できますので、割愛します。