スペース・バンパイア(笑)

制作:1985年
原題:LifeForce
監督:トビー・フーパー
製作:メナハム・ゴーラン、ヨーラン・グローバス
原作:コリン・ウィルソン
脚本:ダン・オバノン、ドン・ジャコビー
撮影:アラン・ヒューム
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:スティーヴ・レイルズバック、マチルダ・メイ、ピーター・ファース、フランク・フィンレイ、パトリック・スチュワート

一言:「パトリック・スチュワートのディープキッス♪」

PCが飛んだ腹立ちまぎれに今まで貯めた映画のビデオの整理をしていたら、「スペース・バンパイア」が出てきた(笑)
もともと俺は「メジャーな映画」にはあまり縁がなくて大体がB級と言われる映画を見る事が多い。
また、映画を見るスタンスも(自分で言うのもなんだが)かなり変である。
「これがあればこの映画は全部OK!(もしくはNG!)」という考え方である。

最近(つーても2年前くらい)期待せずにビデオを借りたら面白かったのは「ザ・グリード」というモンスターパニック&スプラッタ映画なんであるが、この映画のハイライトのシーンがすきなんである。
モンスターににらまれた主人公が臆する事無く「(俺に)ガンてけてんじゃねぇ!」と言って、モンスターにショットガンをぶっぱなすシーンがあった。
「ああ、この映画を作った人はこれがしたかったんだなぁ」と思ったら全てOKになってしまったのである。
(興味をもたれた方はレンタルビデオに走ろう。ただしこの映画は少々グロイので注意)

マチルダ・メイのおっぱいと淀川長治

さて、スペースバンパイア(笑)であるが、この映画もまごうことなきB級映画である。
「エロとグロとSFとホラーを混ぜ合わせたらこんなんなりました(笑)」
という映画である。
「宇宙人が自分の子孫を作る為、地球人の美男子、美女に変身してエッチしたり、精気をすってゾンビにしたりする映画」である。
実に1行で粗筋をかけてしまうミもフタも無い映画なんであるが、この映画を見た人は多分ストーリーを覚えてはいまい。
なんせ、宇宙人が美女に変身してスッポンポンのポン(スパーワールドではない)で歩きまわるのだから。
(そのため、日本で公開する時はモザイクをかけるかどうするかモメたらしい)
このスッポンポンの美女がマチルダ・メイというフランス人で、ルックスもスタイルもバッチグー(死語)なんである。
いや、バッチグー過ぎる為に大問題がある。
なんせこのマチルダ・メイがスッポンポンで歩き回るもんだからこの映画を見た奴(特に男)はそっちばっかりに夢中になってストーリーをまるで覚えていないのだから(笑)
(俺もその一人である事は正直に告白しよう。)
マチルダ・メイがどれだけバッチグー(死語)なのかはググって下され。
しかし今ではマチルダ・メイも妙齢であるし、最近は映画もご無沙汰である。

しかしこの映画、徹頭徹尾「スッポンポン」なんだが、豪気な事に淀川長治氏が解説をしていた頃の日曜洋画劇場で放映したらしい。
婦人団体から抗議はなかったのだろうか?
一説にはその時の淀川長治氏の解説もやっぱり「マチルダ・メイがスッポンポン」の話ばっかりだったそうなので、
「少々ホモの気があるあの方もスッポンポンには負けたのか」と親近感を持ったのは内緒の話だ。

ピカード艦長とディープキス

しかし、この映画には俺は衝撃的なシーンがある。
この映画ではパトリック・スチュワートが脇役で出演している。

パトリック・スチュワートと書いても誰もピーンと来ないだろうが、「スタートレックのピカード艦長」と言えば「ああ、あの人」と思い出す人も多いだろう。
今ではX-MENにも出演して有名どころのベテラン俳優というポジションであるが、その彼も映画に出始めた頃は脇役が殆どだった。
これは彼がイギリス出身の為、映画産業の中心であるハリウッドでは知名度が低かった事、また元々は舞台を主にこなしている俳優の為、映画産業の中ではネームバリューがあまり無かった事があると思われる。
(ちなみに、スタートレックの収録が完了した今は舞台に戻っているとの事である。)

さて、実は俺はパトリック・スチュワートを「スタートレック」以前から知っている。
この人の映画デビューは俺が映画を名画座とかでむさぼる様に観ていた時期に重なるのだ。
「エクスカリバー」「ウィンディー」「砂の惑星」いずれも舞台俳優出身らしい、そしてイギリス人らしい、詩的な台詞回しや演技で「気持ち良い演技をする俳優」という印象が強かった。

「ウィンディー」は映画としては駄目だった。
監督の原田真人、そして主演の渡辺裕之には「無かった映画」とされている。
が、オートバイが関る映画としては割と良かった。何よりも日本人スタッフが本気でレース映画を作ったのはこれが最初(そして最後)ではなかろうかと思う。
「汚れた英雄」はあくまでも邦画であるし、あのようなレースの演出は現実には有り得無さ過ぎる。
まだ500cc、250cc、128ccが混在していても本当のレースを入れようと努力していた「ウィンディー」の方が好感が持てるし、
本当のレースを知っている人(特にヨーロッパ圏に「汚れた英雄」を観せようものならば袋だたきだ。)

この映画でのパトリック・スチュワートの役柄は主人公を陰ながら応援する年配のバイク好きという役柄だった。
そのセリフの端々に詩的な語り方があり、とても観ていて気持ちが良かったのだ。

で、スペースバンパイア(笑)でのパトリック・スチュワートの役回りは医者である。
しかも、主人公が国家の秘密(ちゅーてもたいした事では無かったと思う・・・・まぁその程度のストーリーと思って、ダン・オバノンの脚本だし)を暴く為に

彼を薬物で拷問するわけなんだが、その時に、「スッポンポンさん」に精神を乗っ取られて、スッポンポンさんのセリフを語るのである。(笑)
「愛しているわ」とかね(笑)最後の極めつけが主人公とキスをしてしまうのである。
あの時に(俳優って大変なんやなぁ・・・・)と思いましたよ、ええ(笑)

スペース・バンパイア(笑)
この映画のタイトルを観た奴は反射的に「顔もスタイルもバッチグー(死語)のマチルダ・メイがスッポンポン」とか
「オチを付けてくれなかったエンディングで観た奴みんながポカーン」を思い出すだろう。
しかし俺はその二つを思い出す前に
「ピカード艦長が男とディープキス」
という事を思い出すのである。

※でもスペースバンパイアってB級映画としてはものすごく手本になる映画だと思う。
多くの映画がこの映画と同じ手法で構成されているのは事実なのだから。