「で、瀋陽の事件はどう見る?」
少しからかいの混じったメールが「」から来る。
また俺を試すのかね・・・?
頭を掻きながらメールを送る。
「日本はハマったね。」
「それは誰かにだまされたという事?それとか中国や北朝鮮、韓国の陰謀?(笑)」
こう書いてみるとチャットでやり取りしているみたいだろうけれど、
実際には何日もかかっている。
「いや、そもそも罠とかは無かった・・・と思う。自信無いけれど(笑)
 日本は自分からハマったんだと思うよ。
 このままいったら、日本は外務省だけではなくて、政治家、マスコミ、国民、
 皆、世界で恥をかく事になるね。」
阿南中国大使の発言の事?」
「いや、というよりも国としての姿勢の問題ね。
 例えば、亡命希望者は今回はアメリカ合衆国への亡命を希望していたという事なんだけれども、
 もしも、彼等が日本への亡命を希望していた時に、受け入れる事が出来るのか?という事。
 日本は今まで亡命者の受け入れをした事がないのね。
 本当の所、他国への亡命を経由する事も殆ど無かった筈。
 数少ない例外はベレンコ中尉くらいじゃないでしょ〜か。」
「亡命者を受け入れると大問題になるという事?」
「うん、少なくとも国内的にはね。
 亡命者を受け入れれば、次は難民受け入れの話が出てくる。
 ただでさえ失業率が上がってきている所に次は難民だ。
 そういう事象を受け入れる覚悟が皆あるの?と問いたい。
 多分、あのような騒動は今回が初めてではないと思う。
 今回は映像として流れたのだが、いまさらになって
 『亡命希望者がかわいそうだ。外務省は何をしている』というのは、
 あまりにも政治家もマスコミも国民も一時の感情に流されすぎ。
 そもそもの問題はずっと前から存在している筈なのにね。
 国としての方向性があいまいだから、
 領事館でもこのような時にはどのように対処するべきか、
 という覚悟(つまりマニュアル以前の話)が無いのでは?と思う。
 それを考えたら『阿南中国大使の発言』は実は暴言でもなんでも無い可能性がある
 外務省の問題ではなくて、国の姿勢の問題なのに、
 やれ領事を更迭しろだの、中国に抗議しろだのは、恥ずかしい事この上ない。
 俺も一時はその流れに流されそうになったんだけれどね、
 阿南大使の発言(の噂)を聞いて思い出しました。
 彼には感謝しなきゃね(爆笑)
 ・・・・こんなんいうてますけど(笑)」
「面白い意見、ありがとうございます(笑)」
 

」と知り合いになって何年にもなる。
ただ、一度として顔を合わせた事は無い。
」について知っているのは、ハンドル名、メールアドレス、そして
」がため込んでいるテラバイトクラスの非公開のファイルサーバー。
」のファイルサーバーには10年程度前からのいろいろな情報が
収められている。
新聞の記事、官公庁の発表、いわゆる電波系の噂話まで・・・。
僕も何回かそのサーバーを使わせてもらったが、
その情報量には逆に困った覚えがある(苦笑)

」は自分ではあまり意見は言わない。
昔は「おしゃべり」な奴だったのだが、今ではあまり自分からはしゃべらない。
なんでも「おれよりもいかがわしい意見を言う奴が多くなった(笑)」という事だ(笑)
自分で何も書かないのであれば、特にニュースを集める必要も無いと思うのだが(笑)
それでも情報の収集癖は直らないのだそうだ。
丁度俺がウハウハな画像を集めるのと一緒なんだろうと思う。
全然違うぞ。

奴が言うには、その時には原因が分からなかった事件も、
後で沢山の情報を参照してみると原因(遠因)が判明する事もあるし、
その逆でその時は誰も疑問に思わなかった事が、後になってみると謎だらけというのも
沢山有るのだそうだ。
但し、その時にはどうしてもわからない。
だから、一度、俯瞰に立って周りから眺めるのだそうだ。

その為には周辺の情報が必要になる事が多い
過去にはどういう事が起こっていたか?
当事者はどのような経歴を持っているか?
その前後で何が変ったのか?
一番参考になるのは利権の流れだそうである。
資本主義が基本であるならば、物事の事象として参考にしやすいのは
やはり「カネ」なのだそうだ。

所で「奴」のサーバーは非公開である。
無論、新聞や官公庁の発表、海外の情報、電波(笑)など
著作権の世界で言えばかなりヤバい情報なので、パブリックで公開する訳には行かない。
でも「見る者のいない情報」をため込んでどうするんだ、とも思うのだが・・・。
それに対しては、明確な返事を貰った。
「なぜ見る者がいないと言い切れるんだい?
 俺はあんたにサーバーを公開した事がある。
 あんただけじゃない、
 調べ物をしていて行き詰まった奴が俺の所に来た時には
 サーバーの存在を秘密にする条件で公開している。
 あのような『混沌』と化しているサーバーは
 本当に必要としない人間にとっては混乱の元だ。」

これをいわれると、確かにそうだ、と思う。
俺が生まれる以前の情報源はラジオと新聞だけだった。
それが情報源としてテレビが加わる。
そしてニッチではあるがPC通信が加わり。
現在ではインターネットが情報源の主体に置き換わりつつある。

所がインターネットというのはいくつか厄介な話がある。
一つ目は、情報を信用する「担保」が存在しない事。
TVの場合は系列の新聞社がその情報の信用性を担保する形になっていた。
例えばABCには朝日新聞が、TBSには毎日新聞が、という風に。
所がインターネットの情報というのは、出所がはっきりしないものが多く、
その情報の信憑性については自分で確認するしかない。
だから、情報を入手したとしても、それに対する検証が確実に必要になる。
個人的にはこれはメディアがもたらす情報を必ず検証する事になるので、
むしろ望ましい事ではないかと思うのだが。

二つ目は、情報が視聴率によって左右されるという事。
今でも年に一回程度「xxのウィルスが流行っています」というメールが来る事がある。
実はこのメールは95年くらいから回っているのだが、未だに消える事が無い。
事の信憑性を確認する手段はいくらでもあるのだが、それよりも興味を引くタイトルで
メールを受け取った人はすぐに転送してしまうのだろうと思う。

その他にも、はるか以前に「アウシュビッツの嘘」という記事が話題になった事がある。
これは言ってしまえば「ホロコーストは実際には起こっていなかった」とする歴史解釈である。
この記事は検証としては非常に興味深いのだが、事の信憑性は謎のままである。
というよりも「それを問題にする事自体は無意味である。」と僕は考える。
例えば「10万人のユダヤ人が虐殺されたのは実は嘘で、5千人くらいであった。」
といわれたとして、それが事実であったとしよう。
では「5千人のユダヤ人が殺された」という事実は軽視しても良いのか?
やはり「人が人種によって差別され、殺された」という意味では重要な問題である。
そう考えれば、「アウシュビッツの嘘」は検証しても意味があまり無いと考える。
同列の問題で「南京大虐殺」もよく引き合いに出される。

所が「アウシュビッツの嘘」は情報としては非常に刺激的である。
だから「その事実の有無に関わらず、ホロコーストは存在する」と考える者は
少なくないのにも関わらず、すぐに浮上してくるのである。
 

インターネットの情報は個人が検証するにはあまりにも膨大である。
だから慣れている奴はある所で情報を遮断する(フィルタをかける)
でも殆どに人はそれが出来ない。
ただただ情報に飲み込まれるだけである。
」がサーバーを公開するのは情報をある程度自分で処置できる人物に対してだけなのだ。
そういう意味では俺は彼のサーバーにアクセスする権利をもらえたという事で非常に光栄だね(笑)

」は別にオピニオンを掲げる訳では無い。
でも黙々と情報を集めつづける。
」曰く
「情報をYahoo!のニュースで流れているままで眺めていても、多分何もわからない。
 情報を時系列でならべて、特定の人物の発言の表現が変ったらそれに注視し、
 そして事件の背景を眺めないと、問題の本質は見えてこない。」
その為に情報を集めるのだ。
誰の為に?

「なぁ、中国の歴史の中で、常に尊敬されている職業があるんだが、知っているかい?」
「?」
「歴史の書記なんだよ。
 はるか昔、中国のとある国で王が不正を働いた。
 それを歴史の書記は記録した。
 王はその記録の削除を要求したが、その書記はそれを拒絶し、王に殺されてしまった。
 他の書記が記録の任についたが、その者も記録の削除を断り、殺されてしまった。
 隣国の書記がそれを聞き、その国で書記を行うためにその国に旅立った。
 王はその事を聞いて、記録の削除を諦めた。」

「中国では大国が次から次へと移り変わる。新しい国は、自分を正当化する為に
 自分が倒した旧国がどんなに悪い国であったかを書こうとする。
 でもその時々に正確な記録があって、それが大事に守られていればれば、
 次の国がどんなに歪曲しても必ず事実は伝わる。
 どんな悪事があって、その時に追求できなかったとしても、
 記録として残っているのならば、その悪事は永遠に語り継がれるんだ。」

彼の集めている情報は公開される可能性は低い。
でも、役に立つ時は来るかもしれない。
個人的には来て欲しくないのだが・・・。
 

「で、その考え、自分で思い至ったの?」
「いや(笑)」
「ほう、誰があんたに伝えたんだい(微笑)」
「へへ
 ヤン=ウェンリーさ(爆笑)
 俺って軽いだろ?」
 

ああ、ものすごく軽薄だ(爆笑)
 

※追記
今回のリンクはGoogleの検索結果に対してリンクしておきました。
今回の話は肯定派、否定派の話を自分で見ていただきたい、というのがあります。
それにこれらの問題を掲載したサイトって移動が激しくて(苦笑)
実際の所、Googleのキャッシュで確認するしか手が無いサイトもあります。

「南京大虐殺」について。
事実の有無については未だに肯定派否定派が係争しています。
お互いがお互いの論拠を真っ向から否定しているので議論が成り立ちにくいのですね。
それと日本国内では「南京大虐殺」をタブー視する傾向があり、
それが議論が進まない理由にもなっています。
それと否定派も「虐殺は無かった」というよりも「大量虐殺は無かった」という論評の人が多くで、
「じゃあ、(直接・間接に)殺した事に変りはないんじゃないか」という事(嫌笑)で
今の日本では表立って論議されないのかもしれないですね。

南京大虐殺はインターネット上では「事実無根、または誇張ではないか」というのが支配的意見です。
でも「」も僕も気にしているのは、「事実無根」としている人が多いにも関わらず、
「南京大虐殺が事実無根として、なぜそのような話が流布されたか」を語っている人が少ない事。
「朝日のキャンペーン」とか「ODAをせしめるためだ」という言い方をする人は多いのですけれどね。

海外で南京大虐殺を扱ってセンセーショナルを起こした小説(作者の論評が入っているので小説とすべきでしょう)
で「The Rape of Nanking(ザ・レイプ・オブ・ナンキン)by Iris Chan」という小説があります。
実はこの著作は僕が知る限りは日本語訳は刊行が中止され、現在も刊行しないままです。
その上、日本語訳が無いのに、批判本が出てくるありさまです。批判対象が刊行されていないのに(笑)
南京大虐殺の肯定派も否定派も「The Rape of Nankingはあまりに事実誤認が多い」としているので、
それが日本語訳が刊行しない理由でしょう。
でも、それならば批判本を海外で刊行しろよな(爆笑)

それに偽書と言えども、海外ではこれが読まれ、その内容を信用している人が多いのです。
その内容を知り、検分する事は肯定派にも否定派にもプラスになると思うのですけれどね。
どうしても読みたい、そして体力には自信がある、誤訳を我慢するって人は
ボランティアで翻訳された方がいらっしゃいますので、こちらへどうぞ。
(ただ、ネスケでは文字化けが直りませんMSIEで閲覧した方が良いかも。)
但し、未完訳となっている(途中でドキュメントが消失している)ので
全文が欲しい人は、「」に頼まないとね。

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2002/05/18