現在、パソコンを使っている人のほとんどは「パソコン通信=インターネットエクスプローラを使ったりアウトルックを使ってネットに繋ぐ物」と考えているだろう。しかし、Windows95以降からパソコンを使っている人ならばそうなのだろうが、「TTY手順、2400bps」とう言葉を知る人は多分「TTY手順でホストBBSに接続してデータ(テキスト)のやり取りを行う。」事こそが「パソコン通信」であり、今のそれは「インターネットサービスを使っている」と明確に区別する。

今でこそ通信速度を8Mbps、24Mbps、そして100Mbpsが当たり前だが、僕が始めてパソコン通信で「外界」を知った時、その通信速度は300bpsだった。(どの程度の速度かと言うと送信されてくるテキストを目で追っかける事が出来る程度である。) 今、このリンク先の様に「@NiftyがTTY手順を廃止」に関するコラムを書く人のほとんどがNifty-Serve(現@Nifty)やP-VAN(現BIGLOBE)等の商用BBSでのみTTY手順でのパソコン通信を利用していた人達だと思う。
僕やここの「2nd-BBS掲示板」にたまに書き込みをする人達は「草の根BBS」と言う、個人が主催しているBBSでTTY手順のパソコン通信(以後「パソコン通信」とのみ表記します)を行っていた・・・今の人達からみれば最古参、悪くいえば「化石」である。
草の根BBSは個人(法人)がBBS用のPCとダイヤルアップ用の回線(多くは通話用の回線だった)を用意し、その回線にユーザーがコンピュータで電話をかけて(ダイヤルアップ)ホストBBSに直接接続してデータのやり取り(その多くは掲示板やメールのテキストであったり、画像やフリーウェアのバイナリデータだった)をする様になっていた。

個人がBBSを開設する場合、接続する回線が一つしか無い場合もある。その場合は一度に一人のユーザーしかアクセス出来ない事になる。
だから昔は画像やフリーウェアばかりダウンロードする人は「回線を長時間占有する人」として嫌われていた。
また、例えば、僕が大阪から東京の草の根BBSに接続する場合は当然その間の通話料金がかかる。
当時・・・パソコン通信が華やかだった1985年〜1985年で最大の規模を誇っていた草の根BBSは「東京BBS」だった。
僕はそこの特定の掲示板の常連だったから。一日に最低でも30分は接続していた。
・・・・電話料金は推して知るべしである。
東京BBSだけでは無い、他にも京都、岐阜、新潟、秋田、九州、無論地元の大阪と沢山の草の根BBSを歩き回っていた。
確かピーク時は1ヶ月の電話料金が10万を越えていた。
色々な工夫をしても月に2万から3万はかかっていたと思う。
だから、できるだけ通信時間を減らす為の努力をしていた。

通信をしている時は自動運転に任せて、できるだけログ(掲示板の書き込みやメール)の収集に徹して、回線を切断した後にそのログを見て返信を書き、そして一気に自分の掲示板への書き込みやメールの返信を自動運転で書き込む。
その為に、沢山のフリーウェアを駆使し、それでも不便さがある部分については自分でプログラムを書いた。
草の根BBSに長時間接続しても他人に迷惑をかけない時間帯を選んでバイナリデータをアップロードしたり、ダウンロードする為の自動運転のバッチファイルを作ったりもした。
自動運転を高速に行う為にPCをより高速な物に買い替えたり、改造したりもした。
商用BBSに接続する時は混んでない時間帯を選んで(混んでいない時はホストBBSも応答が速いのでその分通信時間が減る)繋いだりした。
 

しかしこのような努力をして削減した通話料金は、チャットとかできっちりと消費した(笑)
 

丁度このコラムを書いていた人は商用BBSでの他人とのやり取りを書いていたので、「相手を罵倒せずに如何にして議論で打ち勝つか」というような話をしていたのが、草の根BBSの場合はそこまで「御上品」ではない。
無論、「商用BBS」よりも「御上品」な草の根BBSは沢山有った。
しかし、「御上品」ではない草の根BBSの方がはるかに多かったと思うし、今思うとちょっと問題があったBBSばっかり歩きまわっていた事の方が多かった様に思う。

丁度いいからここで僕が昔運営していた「2nd-BBS」という草の根BBSの事を書いておこう。
2nd-BBSに集まっていた人達はその昔CCS-NETという半商用のBBSに集まっていた人達の残党(笑)である。
書いておくが、くれぐれも現在のGoogleで検索できるCCS-NETの殆どとは全く関係が無い。

なんせこのBBSはだなぁ・・・・
俺達がつどっていたCCS-NETは「マッチメーカー(ネットゲーム、と言っても今の人達が見れば呆然とするかもしれないゲームだが)のサポートBBS」と・・・・
「エッチな画像を販売するQ2のパソコン通信のサポートBBS」として機能していたのだ(爆笑)
そこに僕は来た。「マッチメーカー」をする訳でもなく。「エッチな画像収集」をするわけでもなく、他所でCCS-NETの存在を聞いて、俺はなんとなく繋いでしまった。

ちなみにここで書いているCCS-NETは「CCS-NET東京」と「CCS-NET大阪」の二つがあり、それぞれ「CCS東京」「CCS大阪」と自分達が居着いたBBSを呼んでいた。
CCS東京とCCS大阪はそれぞれで独自のコミュニティを築いていた。無論、両方に繋いでいた猛者もいたが。基本的には相互のやり取りは無かった。
二つのCCSのユーザーの仲が悪かったのではない。その当時のパソコン通信では大阪と東京という距離は絶望的な隔たりがあったのだ。

最初は本当につまらないBBSだった。
マッチメーカーが目的で来た人はともかく「エッチ画像の収集」が目的の人が相互にやり取りをするだろうか?
それでも徐々に掲示板の書き込みが増えて行った。
何人かの人達は「このBBSはつまらない。ならば面白くしていこう。」と掲示板に積極的に書き込み。チャットをし。オフラインミーティングをして盛り上げていったからだ。
このBBSの本来の目的の一つを考えると、不思議なコミュニティが出来上がっていった。
何回も掲示板上で喧嘩があり、荒らしが来て、荒れた時もあったが、なぜかうまく収まっていた。
実際には管理人は不在である。(というよりもBBSのトラブルに管理人は一再タッチする事が無かった。)そんな「打ち捨てられたBBS」でありながら、ユーザーはお互いにうまくやっていた。

不思議である。
本来はたいした目的が無いのに集まって、他愛のない話に打ち興じるのである。

チャットでこんな事があった。

A「飲まずにやってられるかー!!」
B「なにがあった?>A」
C「なんでも彼女に『パソコン通信仲間を悪く言われた』らしい>B」
B「ああ、面と向かって言われりゃ腹がたつわなぁ>C」
A「がっでーむ!、びーっち!>○子」
B「ちったあ落ち着けって>A」
A「ぐびぐびぐび・・・・」
C「飲んでる飲んでる」
A「ぶはー」
 

アホである(笑)
ちなみにこの「A」と言う奴は俺である事はここだけの秘密だ(笑)
「ヤケ酒の実況中継」を実際に飲みながらしていたのもここだけの秘密だ。
(不思議だよなぁ、その時は特に誤字も脱字もしていないもんなぁ・・・)
まさしくアホである。
しかし、このアホ状態がCCS大阪では毎晩続いたのである。
 

無論、そのような場所は長くは続かない。
CCS-NETはその母体が無くなると同時に閉鎖される事になる。
#実は管理人が「締めさせてもらう」という事を掲示板で通知してくれた事、つまり「仁義を通してくれた」事は未だに感謝している。
#草の根BBSの多くはいきなり閉鎖する事が少なくなかったのだ。

CCS大阪から多くの残党のBBSが生まれたが、どれも長続きしなかった。
僕の2nd-BBSはその中の残党BBSを引き継いだ形でスタートしたのだが、基本方針は「知り合いが集まる場所がいきなりなくなったらイヤだろ?」だったのでには開店休業状態で有りながらも何年も動かしていた。
そしてWEBサイトを開設するにあたって、僕の最後の草の根BBSも閉鎖する事にした。

不思議な話である。
最初に提示したリンクはあくまで商用BBSの話だから、書いている事は納得できる。
でも僕が一番面白かったのは草の根BBSであった。
罵倒はたまにあり、喧嘩もたまにある、論客は殆どいない。
その状況でユーザーで安定した活動が行われていたのは今でも不思議である。
実際に、このCCS大阪が縁で未だに付き合いのある人は何人も居る。
もともと目的が無いのに集まってきた人間達なので、主義も主張も職業も生活態度も全く違うのに、なぜか一般の付き合いの人達以上に信頼している部分が有る。

もともと無目的な人間達が集まった。集まってから目的が与えられ、それを全う出来た人達だから信頼しているのかもしれない。
会社や家族という理由があって集まった人間達の繋がりとは微妙に違う、なかなかわかってもらえない微妙な繋がり。

「このBBSはつまらない。ならば俺達が面白くしよう。」
面白くしてもらうのではなく、面白くなったのではなく「面白くしよう」という言葉。
僕はこのCCS大阪で僕をチャットで呼び止めたあの人の言葉を未だに覚えている。
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2005/02/25