受講生へのメッセージ  

 2011(平成23)年41日付で愛知大学法科大学院に移籍してきました。専門は民法の財産法です。

従来,執行・倒産を含めた金融担保法を専門としてきましたが,現在は、広く財産法全般を研究しています。

民法全分野の体系書執筆を志しており,さしあたり,物権法から執筆を終わり(201212月初校完了),

引き続き,担保物権法の執筆に取り掛かっています。

私は,研究者教員ですから,実務に疎いところは否めません。実務のことは実務家の先生にお任せし,私は,事実の分析,法の適用・解釈,

事案に対する適切な解決方法の発見,将来の裁判の予見,という観点からの研究を授業に活かしていきます。一緒に勉強しましょう。

 

 20114月赴任初年度から法学部の専門演習(ゼミナール)も担当しています。

 愛知大学法学部生のモチベーションの高さに驚くとともに,自分自身も元気をもらっています。

愛大生は,鍛えれば鍛える程,その実力を伸ばしてきます。指導のやり甲斐、鍛え甲斐があります。

 これまで,4年間、学部生と一緒に百選T・U掲載の判例を2年間で一通り勉強してきました。

5年目の今年も、判例分析を中心とした判例研究を行っています。

 徐々に報告内容を進歩させ,卒業間近には一人前の判例研究を書く能力を育てるという目標を立てて日々努力しています。

 卒業論文の成果は以下のとおりです。

 

〔石口ゼミナール卒業論文〕

 20133月卒業生(愛大1期生)

  吉田涼「共同抵当建物の再築と法定地上権―最高裁平成9214日判決を中心として―」

 20143月卒業生(愛大2期生)

  間瀬理恵子「流動集合動産の譲渡担保における諸問題」(法学会努力賞)

  白谷誠一「抵当権に基づく動産の返還請求―最高裁昭和57312日判決―」(法学会努力賞)

  栢原大佳「民法175条の物権法定主義と慣習法上の物権」(法学会努力賞)

 20153月卒業生(愛大3期生)

  山本駿介「差押えと相殺―最大判昭和45624日の再検討―」(法学会賞)

新井公章「独禁法違反行為に基づく民法709条訴訟の損害論」(法学会努力賞)

  森部雄大「企業損害(間接損害)―最判昭和431115日を中心として―」(法学会努力賞)

 

 2期生までは物権法・担保物権法ばかりでしたが、3期生は債権法を選択しました。

厳しい指導の下、優れた成果を発表させることができて満足しています。

 4期生以降の学生も先輩に続いてほしいものです。

 

 法科大学院に入学した皆さんは新司法試験に合格することが当面の目標になりますが,法科大学院の目標は「良き法曹の育成・養成」です。

 「良き法曹」とは,(1)法曹としての使命と責任を自覚することができ、(2)職務遂行にあたって遵守すべき真実・誠実・守秘という

3大義務を始めとする法曹としての倫理を理解することのできるものです。これが法曹としての2つのマインドの養成というものです。のみならず、

法律専門家としての能力を備える必要があります。その能力とは,@問題解決,A法の知識,B事実調査ないし認定,C法による分析ないし推論,

D創造ないし批判による検討,E法による議論・表現・説得,Fコミュニケーション,です。最後のEとFは,実務に就いてから更に発展する

ものですが,@からDまでの能力は,法科大学院に在籍中に磨いておくべきものです。これが法曹としての7つのスキルの養成というものです。

 

 法科大学院では,このような目標の下で授業や演習が行われています。学生の皆さんは,この法科大学院の目標を念頭に置きつつ,更に自身の

最初の目標である新司法試験の合格を目指して,自身を磨いてください。私はそのお手伝いをするに過ぎません。そのお手伝いもときには厳しい

ものかも知れませんが,ともに研鑽に励みましょう。

 質問にはいつでも応じます。メールでもOKです。

 故郷の上州・群馬県を離れ,家族とともに福岡で11年間生活し,名古屋では単身赴任で4年間(と4か月)を過ごしています(名古屋は週の半分だけですが……)。

名古屋の環境は、夏は福岡と同じか、それ以上に暑いですね(故郷の群馬県を思い出します)。冬は意外と寒いですね(岐阜と長野の山間部に近い)。

まあ、徐々に慣れ親しんでいきたいと思っています。

今後も,落ち着いて研究・教育に頑張りたいと思います。

                                              2015719日 石口 修 記す