よく言われるのが、「体で覚えた事は忘れない」という話ですね。何かを体で覚えた場合、それを長いブランクを経てもまた出来るわけで、一度自転車の乗り方を憶えたら忘れないように、合気道の受け身を憶えた人が、長期間稽古を休んでもまた自然に受け身が出来ます。
しかし困るのは一度間違った事や、個人的な癖を憶えてしまった場合、その事が直そうと思っても正に体で覚えた事なので直せない事態です。合気道は試合が無ければ演武でも採点される事も無いので、有る程度の地位になると、間違いを指摘される機会も減ってしまいます。本人が「私はこれでいいんだ」と思ってしまえば、一生そのままでしょう。
また、有る程度の地位でもなくて間違いを指摘されても、相当本人が自覚しない限り変わらないという実例を、私も道場長として指導する立場で見てきました。
そういう私も昔自分で稽古の様子をビデオに撮った時期が有りましたが、その私の稽古を見て、自分の癖を発見しました。そして「これを直そう」と考えたのですが、その後また稽古のビデをを撮って見ると、やはりそれが直っていないんです。そこでもう徹底的にその事を考えて直そう直そうとして、それを直す為の方法まで研究し、その後のビデオでそういった癖を行わなくなったのを確認するまでに数年を要しました。
このように自覚をしても癖を直すのは難しいわけです。ましてや道場で私に注意された時だけ気を付ける程度のやり方では、絶対に直りません。その時意識的にやり方を変えても無意識行動に戻るとまた癖が出ます。直すには、まず本人の意識を変える事、そして日常の中で工夫する事だと思います。
「俺は(私は)ここが間違っている。本当はこうやらなければいけない。なかなか直らないが、直そう。」と心に誓って、その事を四六時中意識しないといけません。稽古以外の時でも癖を直す為の個人的工夫を考える事です。もはや無意識行動になると体がそう動いてしまうので、最初にそれを憶えた時のように意識行動に戻って癖の出ない状態でゆっくりゆっくり動いてみる事です。そうして意識行動から無意識行動への変換をやり直さない限り、合気道で付いた癖は直らないという事を肝に銘じて修行してほしい。これが私が当道場で稽古する中で、道場生のみなさんに対する要望です。
|