追悼リチャード・ウィドマーク


<追悼リチャード・ウィドマーク>
「映画の部屋」の「刑事マディガン」作成中、インターネットサーフィンで何処かの映画関係のサイトを閲覧中に私の大好きな俳優のリチャード・ウィドマークさんが今年の3月24日に死去したことを知りました。 かなりの高齢だったので既に亡くなっているのでは?との疑問が湧いたのがつい最近のことで、ゲーリー・クーパーと共演した西部劇「悪の花園」(1955年)をDVDで見物した時 だった。虫の知らせという理由ではないが、この数ヶ月ずっとウィドマークの作品を見たくて、「刑事マディガン」・「ワーロック」・「ノックは無用」と自宅で見られる彼の作品を見続けていたのでした。 1914年12月26日生まれで、1947年にヘンリー・ハサウェイ監督の「死の接吻」(Kiss of Death)の冷酷な殺し屋役でデビューしたウィドマークは、痩せた体型に不適な面 構えで、デビュー当初はギャング役が多かったようですが、50年代からは悪役も善玉も演じられるスターとして人気を博しました。私は中学生の時にTVで見た「襲われた幌馬車」 (1956年)という西部劇を見てファンになりました。その直後に見た「街の野獣」(1950年)も印象深い作品で、1920年代の名レスラー、スタニスラウス・ズビスコが老いたレスラー役 で出演していました。しかし何と言っても私が、彼の作品で最初に好きになった作品は、1958年度のジョン・スタージェス監督作品「ゴーストタウンの決闘」でした。主演は二枚目の ロバート・テイラーでしたが、敵役のウィドマークが完全に画面を支配していた作品で、その憎いまでのニヒルで不適なワル振りにシビレたものです。1960年代に入ると、ジョン・ウ ェインの監督・主演映画「アラモ」でのジム・ボウイ役や「ニュールンベルグ裁判」(1961年)のアメリカ側の検事役、「駆逐艦ベッドフォード作戦」(1965年)の冷徹な艦長役などが忘 れられません。西部劇から軍人・刑事とどんな人物を演じてもその役にハマッた演技の出来る役者さんでしたが、前述の「刑事マディガン」のマディガン刑事はまさに彼ならではの 味が出ている大好きな作品でした。私は彼の殆どの作品をTVで見た世代です。TVで見たというと、当然吹き替えで見たワケですが、ウィドマークの吹き替えといえば大塚周夫さん です。ウィドマーク独特のしゃがれた声や不適に笑うときの「クックックックック!」というのも大塚周夫さんに勝る声優さんはいなかったです。 共演したゲーリー・クーパー(1961年没)、ジョン・ウェイン(1979年没)、ヘンリー・フォンダ(1982年没)らよりも長生きで、93歳で亡くなったとのことですので大往生だったと思います。天国で もあの不適で素敵な笑いをうかべているのでしょうか・・・ウィドマークさん安らかにお眠り下さい!


ウィドマーク2 <ウィドマーク作品の想い出>
大好きなリチャード・ウィドマークですが、劇場で見た作品は左写真の2冊のパンフレット「ジェット・ローラー・コースター」(1977年)と「合衆国最後の日」(1977年)の2作品だけでした。 彼の全盛期が50年代〜60年代だったので、その時ガキ大将だった私が映画館通いをするハズもなく、「ゴーストタウンの決闘」や「ワーロック」・「アラモ」・「シャイアン」 ・「アルバレスケリー」・「大西部への道」といったウェスタンの名作は全てTV放映で見たものです。余談ですが、この当時、映画館とTVで見学した作品の感想を大学ノートに書 きつけていたのですが、それによると「大西部への道」(1967年)は昭和48年(1973年)11月4日(日)の「日曜洋画劇場」で放映されています。解説はかの淀川長治さんです。共演 にカーク・ダグラスとロバート・ミッチャム、監督アンドリュー・V・マクラグレンという豪華版ウェスタンです。実はこの年に我が家に初めてカラーTV受像機(古い言い方!)が来 たので、この作品はカラーで見物出来たワケです。自分で書いた感想を読んでみると、ミズーリからオレゴンを目指して行く幌馬車隊の行く先々の風景の美しさを記述しているので、 カラーTVの有難味がよく判る文章になっていて我ながら可笑しいです。それ程、当時の私にとってカラーの劇場用映画をTVで見られるのはとても贅沢なことだったのです。
さて、数少ない彼の劇場見学2作品の一つ「ジェット・ローラー・コースター」はテモシー・ボトムズ扮する犯人が、全米各地の遊園地のジェット・コースター(英語ではRollerCoaster)に爆弾を仕掛けて、脅迫する 話しで、追う側の人間にジョージ・シーガルやハリー・ガーディノがいて、ウィドマークはFBIの捜査官役でした。パンフを見るとヘンリー・フォンダも出演していますが、 その後TVでもビデオでも見ていないので、その内容はすっかり忘れてしまいました。当時流行ったパニック映画の超大作「大地震」で開発された“センサラウンドシステム 方式”での上映だったようで、ジェット・コースターが爆発したときにボンボンと重低音で迫力を出したのでしょうが、それも憶えていません。「合衆国最後の日」はバート・ラ ンカスター主演のポリティカル・アクション映画で、脱獄した元軍人のランカスターが国の「機密文書」を公表することを要求して、何と大統領を人質にする話しでした。 ウィドマークはそのランカスターとの交渉役の将軍役でしたが、「ベラクルス」のロバート・アルドリッチ監督の演出によりかなり面白く出来上がっていました。国を守るためなら 大統領の命さえも犠牲にする。というストーリー展開が当時話題になったと記憶しています。ウィドマークはそんな究極な決断をする将軍役をすっごく冷徹に演じていたもので す。左写真(下)は「襲われた幌馬車」(1956年)の1シーン。右側(上)は、この作品が初主演のマリリン・モンローと共演した「ノックは無用」(1952年)です。 写真右(下)のはポートレート写真ですが、文句なく粋でカッコイイです。現在、彼のような素敵なスターは見当たりません。1995年にバーベッド・シュローダー監督、デビッド・カルーソ ニコラス・ケイジ主演でリメイクされていて、作品的には中々よかったですがリチャード・ウィドマークの演じたトミー・ユードーは別格です。さて、今夜は彼の主演作品の中でもとびっきり の社会派サスペンス「駆逐艦ベッドフォード作戦」(1965年)でも見学して、在りし日の彼を偲ぶことにしよう!