◆Hazlitt◆
ワンピースはやっぱり白だよなぁ
*13.Aug.2003*

◆2003年の残暑見舞いイラスト。ちょっと「お人形さん」風を狙って無表情に。
◆今回は「調整グラデ」を使って色味の調整をしなかったので、塗り色そのまま。主線も服の部分は目立たせたくなかったので、カラーバランスを弄って肌部分と変えてみる。花がちょっぴりイイ加減かも……(汗)
◆そして、なんと! このイラストを元に、桜木りんこ様がショートショートを書いてくださいました♪ ツボにハマった《グレムリン》や《森の精》の面々のやりとりをご覧ください〜。また、りんこ様のサイトには、少年少女たちが元気に飛び回るハートウォーミングなお話でいっぱいです♪ お勧めなので、ぜひご覧になってください。

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《夏のフォトグラフ》by桜木りんこ
「はーい、ニッコリ笑ってね〜。自然な感じでいいから」
 《森の精》ヴァルトガイスト基地にある広報部の撮影室で、カメラ担当の広報官がにわかモデルに声をかける。
 普段、将兵たちが登録写真を撮影する白いスクリーンの前には、サマードレス姿の少女が座っていた。
 ガチガチに強ばった頬、引きつった口元。『自然な笑顔』からほど遠い表情で、ハズリットはカメラのレンズを睨みつける。
 その周囲では、野次馬たちがそれぞれ勝手なことを口にしていた。

「いや〜ん、カワイイ! やっぱり女の子にはふんわりしたドレスよねぇ」
 夫イザークを従えたミルフィーユの母コリーンが、うっとりとした様子でハズリットを見つめる。ハズリットの髪型は、コリーンの手によるアレンジだ。
「コリーンたちのところも俺のところも、みんな男だからな」
 その横でウィルが苦笑すると、イザークはボソリと「…三人目か」などと呟いていた。
 そんな大人たちの会話を聞き流しながら、《グレムリン》たちも後ろに控えている。ミルフィーユは母親に聞こえないよう気をつけながら、隣に立つヴァルトラントにささやいた。
「でもさ、母さんには悪いけど。なんか、すっごく不機嫌そうじゃない? ハズ」
「そりゃそうだろ。こんなことになるなんて、呼び出したときは言わなかったもの。……ああ、どうしよう。またハズに怒られる」
 どんどんと機嫌を悪化させていく少女に、ヴァルトラントは頭を抱えた。

 そもそもの原因は、今日がミルフィーユの両親、ディスクリート夫妻の結婚記念日だったことである。
 ディスクリート夫妻は、毎年の結婚記念日に家族写真を撮ることを習慣にしていた。これに巻き込まれ続けているのが、ヴァルトラントとその父ウィルである。
「なんで俺たちが、お前らの結婚記念日に家族写真を撮らなきゃならないんだ!」
 毎年同じ文句をたれながらも、ウィルはコリーンに押し切られ、ヴァルトラントと二人で写真を撮っていた。こんな機会でもなければ父子一緒の写真を撮ることなど無いので、父親が口ほどには迷惑がってないことをヴァルトラントは知っている。
 ちなみに、基地の広報室で写真を撮るのは、コネで料金が安く済むからだ。
 そして今回、その記念撮影に、たまたま基地へ来ていたハズリットが巻き込まれたのである。

 ――私、いったい何をしてるんだろう?
 ドレスを着せられたハズリットは、もやもやした気持ちで自分自身に問いかけた。
 「天才少女」と持ち上げられ、「《旧市街》出身」と蔑まれても、ハズリットは“まだ”8歳なのである。――彼女自身は、“もう”8歳だと思っていたが。
 世間のしがらみだとか、流れに身を任すといったことは、潔癖な少女には受け入れがたいことだった。
 今回のアクシデントは、《緑の館》へ向かう途中、エビネ准尉に出会ったことから始まった。
 どういうわけか、エビネ准尉はハズリットの来訪をヴァルトラントに伝え、たまたまその場にいたコリーンが、例のインタビュー放送の原因になった少女に会いたいと、ハズリットを食事会に招待したのだ。
 ヴァルトラントは「無理しなくていいよ」と言ったのだが、ハズリットはついムキになって招待を受けてしまった。
 ――どうしてヴァルのことになると、私ってムキになるんだろう。
 それもまた、ハズリットが抱えるもやもやした気持ちの一つだ。
 意地になってやってきた食事会だったが、それがまさか写真撮影付きの『結婚記念』行事だとは、ハズリットも思いもしなかった。
 始めのうちは、撮影室で双方の家族が写真を撮るのを見ていた。そのうち誰かが、ハズリットも写真を撮ったらと言い出し、スタッフが撮影室に隣接する衣装ルームから少女にぴったり合うサマードレスを探し出してきたのである。
「なぁ、ミルフィー。どうして基地の広報部に、女の子のドレスがあるんだ?」
「さあ……。あれ? ヴァル、衣装ルームの扉に落書きがしてあるよ」
 二人の少年が見つけたのは、『仮装、変装、なんでもござれ。アニメのコスプレもご用意してます♪』と書かれた走り書きだった。

 もともと人前で笑うのが得意でないハズリットは、カメラを前にしてますます仏頂面になってしまった。
 周りの野次馬が笑顔を期待しているのがわかるので、それがよけいにプレッシャーになってしまう。
 ――どうせ、私には自然な笑顔なんて無理なのよ。
 少しいじけた気分になったとき、黄色い大きな花がハズリットの前に差し出された。
「お姉ちゃん、これと一緒に撮ったら?」
 そう言ったのは、ミルフィーユの弟で、この場で唯一ハズリットより年下であるバルケットだった。
 幼い少年がニッコリ笑って差し出すのは、撮影室の隅にある応接セットに飾られていた大輪のヒマワリ。鮮やかな黄色で夏を彩る花である。
 もちろん、この星で地球と同じ『夏』を体験できるわけではない。しかし、『太陽』に向かって懸命に伸びていくというその花は、ハズリットに元気を与えてくれた。
「――うん、ありがとう」
 自然に言葉が口からこぼれた。そして、口元はそのまま笑みを形づくる。
「いいねぇ〜。今の感じ」
 プロが抜け目なく撮った次の写真には、『自然に笑う』少女の姿が映し出されていた。

 そんな様子を見ながら、
「……いいなぁ、バルケットは。ハズに笑ってもらえて」
 などと、ヴァルトラントが羨ましげに呟いたことを、少女はまったく気づいていなかった。

[おしまい♪](C)2003- Rinko Sakuragi