イブ生まれの人
(7)
(まじ話です。ノンフィクションですが、登場人物は全て仮名です。)
3月24日
田村の家へ行った。
初めのうち、田村はねこが死んだ事で泣いていた。
俺は毒気を抜かれてしまった気分だった。
田村の気持ちはわからないでもない。
だが、それをねたになつみの気を引こうとしているのは許せない。
田村はなつみの優しさを利用しようとしているのだから。
俺は、なつみに一生をかける気でいると言った。
それを理解した田村は、なつみの家族に会ったら
身を引くと言った。
(田村はなつみの母親に会っていて、母親は田村と付き合っていると思っていた)
なつみを好きになったと言った舌の根も乾かぬうちに、
ひろ子に待っててもいいかどうか聞いてくれと言った、
そんな田村が俺は許せない。
なつみに電話をした。
今日、田村としゃべった事を話した。
なつみはひろ子の代わりは嫌だと言った。
田村に電話して文句を言うと言った。
俺はそれを止めはしなかった。
3月25日
やはり、なつみに、田村へ電話をさせたのは間違いだったのか?
なにか、言い知れぬ不安が胸をよぎっていく。
3月26日
なつみに会った。
なつみはサンドイッチを作ってきてくれた。
うまかった。
なつみが作ってきてくれたというだけで俺には充分だった。
今の俺の気持ちを話した。
なつみのために、俺は一生をかける決心をした事を話した。
なつみは海を見てくると言って車を出て行った。
俺は後を追った。
追ったけれど、何故か追いつけなかった。
どんどん、どんどん遠くへ行ってしまった。
俺は走り出した。
膝まで水に浸かりながら、追いついた時には、
なつみは俺の手の届かない遠くへ行ってしまっていた。
どうしようもなくて、ただ叫びたくて、叫んだ。
駐車場へ戻って、なつみは帰りたいと言った。
田村に会いたいと言った。
2人で田村の家に行こうと言った。
田村の家に行って、しばらくは何も話さなかった。
なつみがトイレに行くと出て行った時、
田村は、俺たちが今日どんな事をしていたか、聞いた。
田村は、昨日かなり離れた半島まで行ったと言った。
俺は田村が一人で行ったと思っていた。
その後俺がトイレに行った。
その間になつみは、昨日田村と出かけた事を、
まだ俺に話していないと、田村に言っていた。
田村はずっと腕を組んで、手を繋いでいたと言った。
俺はそんな事を一所懸命言っている田村に、
同情に似た気持ちを覚えていた。
確かにショックには違いなかった。
なつみが俺に黙っていた事は。
田村は自分のなつみに対する気持ちを話した。
今度はお前の番だと言った。
俺は同じ事を2度言うかもしれないがと前置きして、話した。
後は、笑いながら、バイトの話しなんかしていた。
なつみの家に送る間もほとんど話さなかった。
帰り道、一人車を運転しながら、なつみにふられるかもなと思った。
ふとんのなかにうずくまり、なつみに電話をした。
話しの中で、なつみは田村を誉めていた。
俺と田村と、どちらにも傾いていないと言った。
天秤が平行になったという事は、それだけで今現在のベクトルが
田村に向いてるって事じゃないかと俺は思った。
”愛する方もつらいけど愛される方も辛いんだよ”
”なつみは俺の愛に応える事はできないんだろう?”
俺はそう言った。
そこから先はもう止まらなかった。
”友達に戻ろう”
”俺の愛は変わらない”
”いつか、俺の愛に応えられる程大きくなったら、帰ってこい”
”俺は未来を信じる。だから今なつみを苦しめるのは辛いから友達になる”
”あきれてふろうとしてるわけじゃない。お前が大きくなるのを待つだけだ”
”新しい旅立ちだ。いろんな旅をして、そして大きくなって帰ってこい”
”俺はお前のふるさとになろうと思ってる”
と俺は言った。
”ありがとう”
”やさしいんだね”
”今まで楽しかったね”
”これからも会えるよね”
”いっぱい遊ぼうね”
となつみは言った。
最後に
”今から、友達だ。これからもよろしく”
と言って、切った。
それから数年間は何度か会っていた。
けれど、なつみが俺のところに戻って来る事はなかった。
なつみはいくつもの恋をした。
会う度に俺はぐちともつかない”こいばな”を聞いていた。
俺は俺で、付き合ったりもしていたし。
俺が連絡を取らなくなった時点で、2度と会うことはなかった。
俺が、この”こいばな”で、未だに引きずっている事が一つだけある。
なつみが田村の家で寝ていた時、
俺はなつみをたたきもせず、許した。
なつみは、
”叩いて欲しかった”
”優しすぎるよ”
と言った。
俺は未だに本当の優しさを探している。
優しいって
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なんだ?
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