無題1-02
長い出張生活での最後の仕事を終えて、
和樹は今夜宿泊するホテルヘ向った。
フロントロビーからすぐに入れるラウンジを
横目に見ながら彼は部屋へ上がった。
sakiとの約束の時間までにはまだ1時間程あった。
夏の一日をオフィスの中で過ごしたとはいえ、
やはり身体に不快感を感じていた彼は熱いシャワーを浴びた。
すっきりと爽快感に包まれて彼はバスルームを出た。
下着だけを身に着けた彼はそのままの姿でしばらくの間
ベッドの上に横になっていた。
約束の時間になって、彼はラウンジへ降りて行った。
sakiは既に来ていた。
sakiはジーンズに白いTシャツ1枚という気楽な服を着ていた。
和樹も同じようにジーンズにシャツ1枚だった。
チャット友達という、
元々気取らなければいけないような関係ではないし、
何より二人とも気取った服装など好きではなかった。
近づいていく和樹に気づいた彼女の顔が笑顔に変わった。
それまでの落ち着いた雰囲気から、明るい華やかさのようなものが
彼女の周りに広がった。
写真でしか見ていなかったsakiと現実の彼女とに
少しだけ違和感を感じながら彼は席へ座った。
「時間通りね。」
彼女は笑顔を消さないままに話した。
「まあね。」
「それにしても写真で見た和樹とはちょっと違うね」
「どう違う?」
「なんかね。写真だとちょっと神経質そうな感じだけど
実際はもっと優しい感じ」
「そうかあ?」
「うんうん。ほんと。ねえ。私はどう?」
「写真よりかわいいよ。笑顔がいいね」
「ありがと♪」
コーヒー1杯分の時間だけ話して
「私、用事あるから帰るね」
「彼とメッセンジャー?」
「ふふ。まあね。今日は楽しかったわよ」
「うん。俺も楽しかったよ。じゃあ。元気で」
「和樹も元気でねー!」
sakiは振り返って手を振りながら帰って行った。
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