無題1-05
「で?どこにあるかな?」
和樹が聞いた。
「う〜〜ん。街中の店だと駐車場ないし。どうしよ。」
「じゃあ。ここに来る途中のバイパスで見かけたからそこに行こう。」
「うん!いいよ。」
二人は国道バイパスにある店へ入った。
和樹と裕子はそれぞれに注文した。
「大盛とお新香。つゆ抜きで」
「並と卵と味噌汁」
店員が去った後、裕子は笑いをこらえながら
「何それ?つゆだくなら聞いた事あるけどつゆ抜きって」
「ん?最近は何も言わなくてもつゆが多い時があってさ
あれは俺好きじゃないんだよ。そういう裕子だって
卵なんかかけたらすき焼き丼食ってるようなもんじゃん」
「いいじゃない。好きなんだから〜〜」
「俺もだよ」
「そっかあ。そうだよね。」
チェックインを済ませた和樹は振り返った。
「さ。行こうか。」
「うん。何階なの?」
「12階だよ。」
「一番上の階なんだあ。眺めいいかもね♪」
「きれいだといいね。」
和樹はロックを外し、ドアを開きながら振り返って、
「さ。どうぞ」
「なんかまだ緊張しちゃうね」裕子は少し照れながら言った。
「そっかあ。あ。コーヒー飲む?」
「あ。うん♪飲みたい!あるの?」
「カップに載せて入れるタイプのやつだけどね。一応ドリップだし。
元プロの腕を見せてあげるよ」
「うん♪楽しみー」
和樹はコーヒーのパックを取り出して淹れ始めた。
「あれ?どうしたの?」
少しだけお湯を注いで手を止めた和樹に裕子は言った。
「1分くらいは蒸らさないとね」
「へええ。そうなんだあ。じゃあ。コーヒーメーカーとかで
淹れてるのはほんとのやり方じゃないんだね」
「ははは。あれはとりあえず飲めればいいって人用だよ」
「おいしい♪」
「そっか。持って来た甲斐があったかな」
「でもさー」
「ん?」
「部屋入ったらすぐにするのかと思ってた(笑)」
「その方がよかった?」
「ううん。こっちの方がいいな。落ち着けたし♪」
「そっかあ。落ち着けたんならよかった」
言いながら和樹は裕子の肩を抱いてキスをした。
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