無題1-07


”やっぱり、週末に長距離移動した後ってのは翌週きついなあ。”

精神的にはとても充実して高揚していた和樹だったが、

肉体的には疲れを感じながら、彼は自分の部屋へ帰って来た。

1ヶ月続いた出張が、今回のプロジェクトの締め括りだったので

しばらくは残業の必要もなかった。

定時で仕事を終えた和樹は帰る途中で夕食を済ませていた。

”みんながONになるまでまだ時間があるな。少し寝るか。。。”

軽い眠気を覚えていた和樹は少しだけのつもりで眠った。


目覚めると21:30を過ぎていた。

”ちょっと寝すぎたけど、まあ。いいか”

PCの電源を入れながら、和樹はコーヒーを淹れる準備をした。

和樹は普段自分の部屋ではネルを使ってコーヒーを淹れていた。

淹れる人の腕の差が一番はっきりと現れるこの淹れ方を

和樹は好んでいた。

ミルも電動ではなく、手で挽くタイプのものを使っていた。

近所に注文してから生豆を焙煎してくれる店があり、

和樹は自分だけの比率のブレンドを頼んで焙煎してもらっていた。

酸味、中性、苦味と全ての傾向の豆をブレンドしていたが、

比率的に10%だけ酸味よりも苦味の豆を多くしていた。


コーヒーを飲みながら、和樹はメッセンジャーをONにした。

今日は裕子とだけ話すつもりで、誰にも話しかけずに和樹はそのままにしていた。


『こん♪』

sakiからだった。

『コンバンワァッ ヾ(≧∇≦)〃』

和樹は顔文字で返した。

『ちょっと、久しぶりよねえ。元気だった?』

『うん。元気だったよ。sakiは?』

『うん(^O^)元気♪ ねーねー。聞いてくれる?』

『ん?どうした?』

『あのねー。彼が離婚するかも♪』

『(^_^;)そういう話しに♪つけるなよ。。。』

『あ。そっかあ。(笑)』

『で?どうして離婚する事に?ばれたのか?』

『あはは。まさか。そうだったらこんなに明るくないわよ。』

『そりゃ。そうだな。じゃあどうして?』

『前から、うまくいってなかったのは知ってるでしょ?』

『うん』

『で。とうとう離婚する事になったみたい』

『そっかあ。。。なんか多いな』

『何が?』

『ん?チャットしてる人達ってさ。離婚したとか、するとか、そういう話がさ』

『そういえばそうねえ。なんでかなあ?』

『(^_^;)多分、今回のは原因の一部はsakiにもあるぞ』

『うん。。。それは否定できないけど』

『多分さ。チャットやってる人達っていうのは、
どっかに傷持ってる人達だと思う。』

『うん』

『みんな寂しいからチャットにはまるんだと思うよ』

『そっかあ』

『だから元々、ちょっとしたきっかけで離婚しちゃうような
人達が多いんだよ』

『(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウンたしかにそうかも。。』

『で?どうするんだ?』

『どうするって?』

『彼が離婚するわけだから、もう障害はないわけだろ?』

『あ。そういう事ね。その先はまだ考えてないんだ。』

『全然?』

『彼と結婚したいって思う事はあったけど、いざ結婚できる状況になると
やっぱりちょっと考えちゃうしね』

『そっか。まあ急ぐ事はないんだから、ゆっくりちゃんと考えなよ』

『そうね(^O^)今日はありがと♪またねー!』

『うん。またね(^O^)』

”うまく幸せになれればいいんだけどな。。。”

和樹はsakiの幸せを少しの間祈った。





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