無題1-11


昨夜の事が小さな棘となって和樹の心に刺さっていた。



棘の痛みがいつの間にか消えてしまうように



この痛みも知らぬ間に忘れてしまうのだろうと和樹は思った。



昨日とは打って変わって、少し沈んだ心でバイクを走らせた。



待ち合わせの時間に少しだけ遅れて和樹は着いた。



裕子は既に車で来ていた。



裕子の車はワインレッドのワゴンだった。



「珍しいわね。和樹が遅れるなんて」



シールドを上げた和樹に、車を降りて来た裕子がいつもの笑顔で言った。



「まあ。たまには遅れるさ。道路事情もあるしね」



「なんか、機嫌悪そうね。どうしたの?」



「いや。別に大した事じゃあないよ。裕子と話してれば機嫌も戻るさ」



「そう?ならいいけど。ねー今日は夕食どうする?やっぱり牛丼?(笑)」



「いや。今日は裕子の食べたいものでいいよ。何がいい?」



「和樹元気なさそうだしなあ。。。

元気だしてもらいたいからステーキ!」



「元気出すのにステーキかよ。こてこてだな。おい」



和樹は苦笑しながら言った。



「だめ?」



「いいんだけどさ。今日の俺にスタミナつけるとやばいぞ?」



「え?どうやばいの?」



「お前を壊しちゃうかもしれないぞ?」



「あ。そういう事ね(笑)いいわよ♪こわして♪」



「よおおし壊してやる(笑)」



「あ!機嫌直ったあ」



「まあね(笑)」



「じゃあ。私の後に付いて来て」



「わかった」



二人は走り出した。



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